じじぃの「カオス・地球_450_哺乳類の興隆史・第5章・恐竜の絶滅」

The Evolution Of The Paleocene Era

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KsjsVmIpdoE

Dinosaurs mass extinction


Extinction Asteroid That Killed the Dinosaurs

Feb 24, 2023 newsweek
Sharks have roamed the Earth's oceans for more than 400 million years. In the process, the animals have survived five mass extinction events, including the one that wiped out the dinosaurs.

This latter extinction event occurred around 66 million years ago, marking the end of the Cretaceous period. It has been linked to the impact of a giant asteroid that smashed into the Earth.

The Cretaceous-Paleogene (K-Pg) mass extinction event, as it is known, sparked drastic ecological changes around the world. This eventually led to the extinction of approximately 55-76 percent of the planet's species.
https://www.newsweek.com/how-sharks-survived-mass-extinction-asteroid-killed-dinosaurs-1783743

『哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで』

ティーブ・ブルサッテ/著、黒川耕大/訳、土屋健/監修 みすず書房 2024年発行

約3億年前に爬虫類の祖先と分かれたグループが、幾多の絶滅事件を乗り越えて私たちに至るまでの、途方もない歴史を描く書。

第2章 哺乳類が出来上がるまで より

ペルム紀末、現在のロシアに当たる地域には多くの獣弓類が生息し、火山地帯からそう遠くない場所で暮らしていた。ゴルゴノプス類がディキノドン類に犬歯を突き立て、キノドン類がシダ種子植物の森に身を潜めていた。それらの動物が噴火の直接の被害者となったにちがいなく。多くは低俗な災害映画よろしく文字どおり溶岩に飲み込まれただろう。
しかし被害はこれに留まらず、溶岩よりずっと恐ろしい火山の潜在的な脅威が露わになった。「サイレントキラー」と呼ばれる二酸化炭素やメタンなどの有害なガスが溶岩とともに湧き上がり、大気に放出され世界に拡散したのだ。これらは温室効果ガスであり、赤外線を吸収して地表に送り出すことで熱を大気に留める。おかげで急激な温暖化が起き、気温が数万年で5~8度ほど上昇した。
いま起きていることに似ているが、実は現在の温暖化よりはペースが遅かった(現代人に現状の再考を迫る事実だ)。それでも海洋を酸性化・貧酸素化させるには十分で。殻を持つ無脊椎動物やその他の海棲生物が広範囲で死滅した。

第5章 恐竜は滅び、哺乳類は生き残る より

私たちがキンベトで採集したキンベトプサリスやエクトコヌスなどの哺乳類の化石は、暁新世(6500万年前~5500万年前までをいう。地質時代には長期的な海洋酸性化が起きたことが報告されている)のものだ。暁新世は白亜紀の直後の年代だが、両年代はまるで別世界かと思うほどに様相が異なる。小説に例えるなら2つの章が登場キャラクターを変えて(このケースでは恐竜から哺乳類の化石に)続くようなもので、すっきりと1つの物語にまとまることはない。なぜなら、白亜紀が終わり暁新世が始まるところで、筋書きが劇的に変わるからだ。両年代を隔てるのは地球史上最大の災厄であり、地球に訪れた文字どおりの史上最悪の1日である。

小惑星(彗星だった可能もあるが確かなことは分からない)は太陽系の遠方から飛来した。火星の軌道の外側、おそらくもっと遠方からだ。直径は約10キロで、エベレストの標高と同じくらい、あるいはマンハッタン島の幅の約3倍の大きさがあった。広大な宇宙と比べれば塵(ちり)にすぎないが、それでも少なくとも過去5億年間に太陽系のこの領域に飛来した天体の中では最大だった。車から放たれた銃弾のようにランダムな軌道を描き、銃弾の10倍以上の速度で飛んできた。

どの方角に飛び去ってもおかしくはなかったが、何の巡り合わせか、天体はまぅすぐ地球に向かってきた。それでも危機一髪で衝突を免れ、天体が大気の上層をかすめて漆黒の宇宙に消えていた可能性もあったはずだ。それが地球に接近したところで重力の影響で崩壊してもおかしくなかった。もしくは地表をかすめる程度で済んでいた可能性もあっただろう。でも、現実に起きたことはそのどれでもなかった。天体は現在のメキシコ・ユカタン半島の辺りに原子爆弾10億個分以上のエネルギーで衝突し、地殻に深さ40キロ、直径160キロ以上の穴を開けた。その痕跡はチチュルプ・クレーターとして現在でも確認でき、観光都カンクンから遠くない場所に、メキシコ湾岸をまたぐかたちで存在している。

約6600万年前に地球に小惑星が衝突したことで、何もかもが永遠に変わった。
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この状況はヘルクリーク層を下位から順に調べていっても変わることがなく、白亜紀の最後の200万年間を通じて一定である。哺乳類の多様性が多少増減することはあった。おそらくはインドの火山の影響で気候が微妙に変化したり、近隣の海岸線が移動したりしたせいで、種の入れ替えがあったからだ。でも総じて言えば、白亜紀末の哺乳類は後獣類や多丘歯類を筆頭に反映していた。依然として小型の種類ばからだったが、多様性は高く、多くのニッチを占めていた。凋落の兆しなどどこにもなかった。

その後すべてが一変した。この時代の地層にはイリジウムが濃集する薄い層が見られる。イリジウムは地表では希少だが、宇宙には豊富に存在する元素で、要するに小惑星が残した化学的な指紋だ。ここで恐竜が忽然と姿を消す。地層がヘルクリーク層からフォートユニオン層に変わる。時代が白亜紀から暁新世に移る。
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暁新世の哺乳類の場合、体があまりにも急速に大型化し、脳の大型化がそれに追いつかなかった。それから1000万年以上後の始新世(およそ5600万年前~3390万年前までの時代をいう)になってようやく、現生の有胎盤類ならではの特大の脳と大脳の表面の大部分を覆う広大な新皮質が出現した。

哺乳類が暁新世に繁栄できた要因は脳ではなく体格だった。制約の時代が1億年以上続き、その間小型動物のニッチに押し込められ現生のクズリより大きくなれなかった哺乳類が、突然その束縛から解放された。
理由はいたって明快で、恐竜が絶滅したからだ。哺乳類を抑え込む存在が消えたことで、有胎盤類は文字どおり数十万(地球の歴史に照らせば一瞬)のうちに、かつてトリケラトプスやカモノハシ竜やラプトル類が占めていたニッチに進出した。キンベト産の種が出現した頃には(パントラムダが現れた頃には間違いなく)、恐竜は遠い過去の記憶と化し、初めから存在しなかったかのようになっていた。哺乳類が食物連鎖全体を構成し、鋭い歯を持つ肉食の種、巨大な木の葉食の種、ブタに似た植物食の種、がっしりして穴掘りが得意な種などがいた。他にも多くの種が地面を駆けたり木に登ったり枝から枝へ渡ったりしていた。すっかり哺乳類の世界になっていた。

いや、そう言い切ると少し語弊があるある種の恐竜、すなわち鳥類が生き残っていた。鳥類も独自の強力な持ち札を持っていた。小型で、繁殖が速く、危険な場所から飛び去れ、植物の種をついばむのに適したクチバシを備えていた。
種は栄養豊富な食料源であり、森林が崩壊したあとも長期間地中に埋もれて残っていたはずだ。ニューメキシコからは暁新世の鳥類の華奢で紙のように薄い骨が哺乳類の化石とともい見つかっている。この大量絶滅後の開拓者が独自に繁栄の道を切り拓いてきた結果、現生鳥類は1万種を超えるまでになった。現生哺乳類の種数の約2倍だ! でも数字は時に真実を歪めるもので、鳥類は確かに多様なグループだが、哺乳類と同じ意味で支配的とは言えない。史上最大の鳥類はかつてマダガスカル島に生息していた”象鳥”ことエピオルニス類で、その体重は500~730キロに達したが、それも体重6トンの体で地響きを立てながらアフリカのサバンナを歩く本物のゾウに比べれば可愛く思える。ほとんどの鳥は小型で、ヒトの手に難なく乗れるし窓枠にも容易に巣を作れる。これは鳥類が小型化という進化を長いあいだ続けてきた結果だ。小型化は大量絶滅以前に始まり以後に加速した。

かくして進化上の役割が入れ替わった。鳥類は小型化し、哺乳類は大型化しつつあった。哺乳類は恐竜に取って代わっただけでなく、ある意味、恐竜になったのだ。哺乳類の時代が始まっていた。