じじぃの「カオス・地球_447_哺乳類の興隆史・第2章・初期の哺乳類の登場」

This creature, Morganucodon was unique. (Jenkins & Parrington)


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This creature, Morganucodon was unique. The teeth are deciduous like those of mammals, but only two types of teeth existed rather than the standard mammalian three. The jaw had the same shape as a mammal with great mechanical strength, but the ear bones were still attached to the jaw. Most significantly, the jaw was double articulated-with two joints, one in the reptilian fashion and another high one like that of a mammal. The jaw is the exact middle between the mammal shape and the reptile shape, a key feature of the transition.
http://davidsamateurpalaeo.blogspot.com/2016/11/top-ten-and-more-discoveries-since-last.html

『哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで』

ティーブ・ブルサッテ/著、黒川耕大/訳、土屋健/監修 みすず書房 2024年発行

約3億年前に爬虫類の祖先と分かれたグループが、幾多の絶滅事件を乗り越えて私たちに至るまでの、途方もない歴史を描く書。

第2章 哺乳類が出来上がるまで より

ペルム紀末、現在のロシアに当たる地域には多くの獣弓類が生息し、火山地帯からそう遠くない場所で暮らしていた。ゴルゴノプス類がディキノドン類に犬歯を突き立て、キノドン類がシダ種子植物の森に身を潜めていた。それらの動物が噴火の直接の被害者となったにちがいなく。多くは低俗な災害映画よろしく文字どおり溶岩に飲み込まれただろう。
しかし被害はこれに留まらず、溶岩よりずっと恐ろしい火山の潜在的な脅威が露わになった。「サイレントキラー」と呼ばれる二酸化炭素やメタンなどの有害なガスが溶岩とともに湧き上がり、大気に放出され世界に拡散したのだ。これらは温室効果ガスであり、赤外線を吸収して地表に送り出すことで熱を大気に留める。おかげで急激な温暖化が起き、気温が数万年で5~8度ほど上昇した。
いま起きていることに似ているが、実は現在の温暖化よりはペースが遅かった(現代人に現状の再考を迫る事実だ)。それでも海洋を酸性化・貧酸素化させるには十分で。殻を持つ無脊椎動物やその他の海棲生物が広範囲で死滅した。
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キノドン類が三畳紀に完全な温血性になりつつあったことを示す証拠は豊富にある。まず線維層板骨――複数の組織が乱雑に混じった骨。急成長を示唆しる――が哺乳類に至る継投で着実に増えていた。次に骨の細胞と骨内の血管がキノドン類の進化の過程で小型化した。これは赤血球も小型化しつつあったことを示唆する。赤血球の小型化もまた哺乳類の特徴であり、より多くの酸素をより迅速に取り込むことを可能にする。
ペルム紀三畳紀の多様な種の骨や歯をすり潰し、それらの酸素同位体比を測定した巧妙な研究もある。酸素の2種類の最安定同位体(軽くて多い16Oと重くて少ない18O。両者は中性子の数が異なる)の比率は、骨や歯が成長する際の体温に依存して変化する。酸素同位体比はいわば太古の体温計であり、その指し示すところは明確だった。三畳紀のキノドン類の体温は同じ時代にいた(大半の獣弓類を含む)どの動物よりも高くて一定だったのだ。

三畳紀のキノドン類はこの”暖房費”をどう支払ったのか? その方法は他の温血動物と同じで、大量の酸素と大量のカロリーを摂取するというものだった。哺乳類へと至る過程でキノドン類の体に多くの変化が起き、酸素とカロリーの摂取量を増やすことが可能になった。

決定的に重要だったのは、キノドン類が「キャリアの制約」と呼ばれる厄介な問題から解放されたことだった。これは体を左右にくねらせて這い歩く両生類につきものの問題だ。体をくねらせると常に肺のどちらかが収縮した状態になるため、歩きながら呼吸することが難しく、移動速度と敏捷性に大きな制限がかかる。一方キノドン類は、前述のとおり姿勢がもっと直立していたうえに、椎骨に骨の”歯止め”が発達し脊柱があまり左右にくねらないようになっていた。こうした骨格の変化を受け、歩き方が一変した。四肢が左右にではなく前後に動き、脊柱が(這いずるヘビのように)左右に屈曲するのではなく(跳ねるガゼルのように)上下に屈曲するようになった。こうして移動しながら難なく呼吸することが可能になった。
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ファリッシュ・ジェンキンスの代表作はメガゾストロドンのスケッチだ(図、画像参照)。アイオーネ・ルドナーが発見した骨格をその10年後の1976年に記載した際、骨格のスケッチをプロの手直しを受けたうえで初めて世にに出した。そのスケッチは古典的な科学イラストの1つとなり、多くの教科書で採用され、もちろん、今や主流となったパワーポイントによる講義にも使われている。それは、チュ・ゲバラの象徴的な写真と同じく、ただのいち個体以上のものを表している。いわば革命家の肖像であり、パンゲア各地に拡散し王朝を拓いた最初の哺乳類の肖像である。
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この骨格に肉付けをして現代に蘇らせたら、哺乳類だとすぐに分かるだろう。それは、明らかに紛れもなく、哺乳類だ。メガゾストロドンは、体毛に覆われ、垂直に伸びた四肢で胴体を前後に曲げて走り、哺乳歯をすべてそろえ、咀嚼し、それらの歯を一生に一度だけ生え替わらせていた。敏捷で、気に登ることも地上を駆けることもでき、内温性(か内温性になりかけ)、夜気にさらされながら昆虫を狩るあいだも体温を適度に保てた。頭部に大きな脳があり、おかげで知性があって嗅覚が鋭く、さらに聴覚も優れていた。

森を散策したり地下鉄に乗り遅れまいと急いだりしているときにこの小動物が目の前を横切ったら、きっとあなたはそれをネズミだと勘違いするだろう。

哺乳類は、祖先の盤竜類、獣弓類、キノドン類が1億年以上の進化を通じて蓄積したあまたの驚くべき適応の継承者として世に現れた。新参者の哺乳類は世界中に拡散し、パンゲアに覇を唱えるかに――祖先の獣弓類がペルム紀末の大規模噴火で失ったものを取り戻すかに――見えた。

本当にそうだろうか。
超大陸は分裂を始めていて、恐竜は大きく凶暴になりつつあった。新参者の哺乳竜には――進化を通じて得たあまたの革新的な特徴があったにもかかわらず――限られた選択肢しかなかった。

哺乳類はひっそり暮らす達人になることを余儀なくされるのだ。