Cause & Impact of Largest Mass Extinction of All Time- End Permian Extinctions | GEO GIRL
Flow chart summarizing proposed cause-and-effect relationships during the end-Permian extinction
Ocean acidification and the end-Permian mass extinction
04/13/2015 Letters from Gondwana.
About one third of the carbon dioxide released by anthropogenic activity is absorbed by the oceans. But the CO2 uptake lowers the pH and alters the chemical balance of the oceans.
https://paleonerdish.wordpress.com/2015/04/13/ocean-acidification-and-the-end-permian-mass-extinction/
『大絶滅時代とパンゲア超大陸――絶滅と進化の8000万年』
ポール・B・ウィグナル/著、柴田譲治/訳 原書房 2016年発行
パンゲア超大陸の存在と生物多様性の関係が最大の原因とする、古生物史と地球環境史をかけあわせたサイエンス・ノンフィクション!
第3章 死の海 ペルム紀――三畳紀大絶滅 より
キャピタニアン期は生命にとって安寧の時代ではなかったが、2億5200万年前ペルム紀末を襲った大破局にくらべれば小さなしゃっくりのようなものだった。この次なる災害では無事にいられる生物はいなかったし、パンサラッサ海の深海部からパンゲアの内陸部まですべての環境で、膨大な種が失われた。地質学者はこの原因を解明しようと、20年以上かけて重要な研究領域としてこの空前の危機にとりくみ、その努力のかいあっていったい何が起こっていたのかがようやくわかってきた。ひとつの側面ははっきりしている。その原因はずっと私たちの目の前にあった。あのシベリア・トラップである。峨眉山(エイメシャン)トラップと同じように、やはり玄武岩洪水溶岩流が積み重なっているのだが、その規模はシベリア・トラップがずば抜けて巨大だった。
侵食されたこのトラップの名残はいまだにシベリア北西部の広大な面積にわたってみることができ。さらにずっと巨大な溶岩流がいまでは西シベリア堆積盆の新しい岩石の下に埋まっている。ちょっとわかりにくいがもっと重要なのは、シベリア噴火もやはり膨大なガスを放出し、他に類を見ない最悪の気候状況をもたらしていたということだ。
シベリア・トラップはシベリア北西部を広く覆い、何百もの洪水玄武岩流が次々に重なって広大な高原を形成し、針葉樹林帯に襞のように広がっている。峨眉山(エイメシャン)トラップの場合と同じように、2億5000万年の間に浸蝕された溶岩もあれば埋もれてしまった溶岩もあるため、もともとの噴出量を決めるのは難しい。とくに推定に重要になるのはおそらく埋もれた溶岩の分だろう。このトラップの西側には西シベリア堆積盆があり、堆積岩のほとんどはジュラ紀の岩石で重要な産油地帯となっている。一帯に掘られた深い試掘孔から、新しい堆積岩の下には三畳紀の玄武岩があることがわかっていて、おそらくはシベリア・トラップが延々と西側へ張り出しているのだろう。この埋もれた溶岩まで考慮すれば、このトラップのもともとの規模は500立方平方キロ以上あっただろう。決定的なのは、この膨大な量の溶岩はペルム紀末頃、極めて短い間に噴出したらしい点だ(100万年以下)。ガスが豊富で極めて激しい爆発的噴火によって発生する凝灰岩(ぎょうかいがん)がこの噴火の初期段階でよく見られることから、この事象が最初の絶滅パルスと強い相関があるようだ。第2の絶滅パルスつまり三畳紀の初頭には大規模な洪水玄武岩噴出がみられた。このようにシベリア・トラップはふたつの絶滅とまさにジャストタイムで噴煙を上げていた、極めて巨大な文字通りの決定的証拠(スモーキング・ガン)なのである。
海洋の脱酸素化
ペルム紀―三畳紀大絶滅については絶滅の甚大な規模の他に、この危機のもうひとつの異常な側面として、海洋無酸素化の規模と激しさがある。海洋無酸素化は過去数十億年の間に数回起きているが、2億5100万年前の事例はとてつもなく強烈で、おそらく海洋水柱のほぼ全層が脱酸素化した唯一の事例だろう。なぜそんなことが起きたのか? 急激な地球温暖化と同時に発生していることがその原因のひとつで、水温が高くなるといくつかの理由で無酸素化の状態が生じやすくなるのだ。
その他の協働作用
海洋酸性化はどれほど致命的なのだろうか? 酸性化はペルム紀末の多くの苦境のひとつだったのだろうか、それともせいぜいたいして重要でない(あるいは無関係でさえある)ストレスにすぎなかったのだろうか? そして酸性化が絶滅因子になるといえるだけの十分な証拠はあるのだろうか? 厚い殻をもった生物が選択的に消失したことは、ほんとうに酸性化による絶滅を意味しているのだろうか? これらの生物群が実際に壊滅状態になったことは確かだが、これらの生物は温度上昇や溶存酸素の減少に対しても同様に敏感で、このふたつの現象が大量絶滅の間に実際に生じていたこともわかっている。ひとつの危機において、それと関係する海洋生物の運命を見るには、特定の仮説に都合のよい細切れの証拠を拾い上げるだけではなく、幅広い視野を持つことが重要になる。注目しなければいけないのは、ペルム紀―三畳紀大絶滅危機にはほとんどすべての生命が打ちのめされ、そこには酸性化で溶解しやすくなる炭酸塩の殻がないため酸性化ストレスを容易に凌(しの)げたはずの放散虫や蠕虫(ぜんちゅう)まで含まれていたことだ。同じように、膠着質殻有孔虫(周囲の堆積物などをくっつけて殻を形成する)もペルム紀の終わりにはかつてない最悪の危機に見舞われたが、これらの生物も現代の海ではとくに酸性化に強いグループだ。
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図(画像参照)に概要を示したペルム紀―三畳紀大量絶滅のシナリオは、シベリア・トラップの最初の巨大爆発によって引き金が引かれた因果関係の連鎖について、現在わかっている最も信頼できる知識をまとめたものだ。このシナリオには無酸素化や温暖化といった直接的な殺戮メカニズムが含まれているが、酸性化や高二酸化炭素血症など、その他に提唱されている有名なメカニズムは意図的に書いてある。ペルム紀―三畳紀絶滅研究は、生命を殺戮するさまざまな方法をできるだけ多く蓄積しようとそてきた。これほどの規模の絶滅であればあればこそ、多くの地質学者はできるだけ多くの殺戮メカニズムについて議論したかった。
1993年にダグ・アーウィンはこの分野の貴重な総説となるとなる著書を出版し、多種多様な絶滅仮説を評価する作業をアガサ・クリスティの有名な探偵エルキュール・ポアロによる『オリエント急行殺人事件』の解決と結びつけたことが印象深い。最後にポアロは、すべての乗客が列車内で殺人を犯したと結論する。なぜなら全員がそれぞれ互いに無関係な動機を持っていたからだ。要するにアーウィンは、ペルム紀―三畳紀大量絶滅とは不幸な偶然の一致(パーフェクトストーム)だと論じたのである。
「オリエント急行」の視点はかつてない評判となったが、仮設の提案を批判的に評価する試みを萎えさせた点では最も残念な見解である。それどころか新たな容疑者が次々と加えられ、そのリストは延々と長くなる一方だ。それゆえごく最近陸上での絶滅について評価したマイク・ベントンとアンドリュー・ニューウェルも次のような複雑かつ多重の要因による絶滅シナリオで締めくくっている。「四股動物は主に酸性雨や斜面崩壊、乾燥化によって死に、植物は熱と野火の突然の作用の影響を強く受けたのだろう」。アンディー・ノルが近年まとめた海洋絶滅に関する最近のサマリー論文も同じように複雑だ。「高二酸化炭素血症[や]低酸素症[など]複数の殺し屋が動いていることは間違いなく[一方で]硫化物の発生と温度上昇もPco2(二酸化炭素分圧)の上昇と相乗的に作用して選択的絶滅を引き起こしているだろう」。これではヨハネ黙示録の4騎手というより騎兵旅団の総動員だ。多くの偶然の一致を引き合いに出すのが気がかりだったのか、ノルは「新しく注目したのは、互いに無関係な悪事が偶然重なる『オリエント急行殺人事件』のシナリオの再現ではなく、物理的摂動の同調的作用である」と述べている。まあ、確かにこれら多重因子すべての影響度を評価できれば科学的な進歩といえるのかもしれない。
絶滅問題を過剰に多い原因で水浸しにして、ペルム紀―三畳紀危機を意味のある発見ができない期間にしてしまうより、わたしは刑事サラ・ルンドの戦略を選択したい。ルンドはデンマークのテレビ犯罪ドラマ『キリング』の主人公だ。第1シーズンでルンドに立ちはだかるのはひとつの殺人事件とエピソードのたびにどんどん増える容疑者リストだ。ありのままで、けだるい感じの「全員が犯人だった」というポアロ流の結論を回避し、ルンドは最終的に単独の殺人犯を突き止めるのだが、その犯人は早い段階から犯人とわかっていた人物だ。
これにならって、私は「キリング」アプローチでペルム紀―三畳紀絶滅の原因を突き止めるつもりだ。単独の巨大な証拠があるのだから、あとは時折超大規模な火山活動が生じた結果、とくに温暖化(そして補助的な海洋無酸素化)とオゾン層破壊が破局的な水準になり得ることを認めさえすればいいのだ。