じじぃの「カオス・地球_414_大絶滅時代とパンゲア・第3章・シベリア・トラップ(2)」

【ゆっくり解説】ペルム紀生物大絶滅の謎

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=RSnUgmSYE2I

Schematic showing the interaction of magma and coal seams in the Siberian Traps.


2024 SkS Weekly Climate Change & Global Warming News Roundup #30

19 March 2015 Skeptical Science
With more than 90% of all marine species and 75% of land species wiped out, the end Permian mass extinction was the worst biosphere crisis in the last 600 million years. The extinction was global in reach: almost all animals and plants in almost all environmental settings were affected. An idea of the severity can be visualised by considering that the time afterwards was marked by the beginning of a coal gap lasting for ten million years: coal-forming ecosystems - i.e. forests - simply did not exist for that time.

Evidence for major gas release associated with the Siberian Traps LIP is present in the form of thousands of hydrothermal vents - deep-seated pipe-like pathways to the surface taken by superheated mineral and gas-rich water - developed in the rocks situated above sills and other intrusions. Some of them are actively mined for the minerals that they contain. Each vent represents a degassing location with surface expressions at the time of the activity in the form of geysers and fumaroles. Hydrocarbon gases such as methane and halogen-bearing compounds like methyl chloride would have been the main products: methane would of course oxidise quickly to carbon dioxide once reaching the atmosphere. It has been estimated that these processes could have added as much as 100,000 billion tonnes of carbon dioxide to the atmosphere.
https://skepticalscience.com/pollution-part-2.html

大量絶滅を引き起こした巨大火山活動

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 12
非常に広い範囲にわたって火成岩が分布するシベリア・トラップの調査から、そのマグマ源に、リサイクルされた海洋地殻がかなりの割合で含まれていたことを示すデータが得られた。

シベリアのタイミル半島プトラナにある洪水玄武岩流。この岩山は、ペルム紀末期の大量絶滅が起きたのと同じ約2億5000万年前に噴出した巨大火成岩岩石区(LIP)の一部である。Sobolevらによる新しい研究1は、噴出したマグマに大量の海洋地殻物質が含まれており、そのために膨大な量の火山ガスが発生し、このような環境危機を引き起こしたと説明する。
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v8/n12/%E5%A4%A7%E9%87%8F%E7%B5%B6%E6%BB%85%E3%82%92%E5%BC%95%E3%81%8D%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%97%E3%81%9F%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E7%81%AB%E5%B1%B1%E6%B4%BB%E5%8B%95/36429

『大絶滅時代とパンゲア超大陸――絶滅と進化の8000万年』

ポール・B・ウィグナル/著、柴田譲治/訳 原書房 2016年発行

パンゲア超大陸の存在と生物多様性の関係が最大の原因とする、古生物史と地球環境史をかけあわせたサイエンス・ノンフィクション!

第3章 死の海 ペルム紀――三畳紀大絶滅 より

キャピタニアン期は生命にとって安寧の時代ではなかったが、2億5200万年前ペルム紀末を襲った大破局にくらべれば小さなしゃっくりのようなものだった。この次なる災害では無事にいられる生物はいなかったし、パンサラッサ海の深海部からパンゲアの内陸部まですべての環境で、膨大な種が失われた。地質学者はこの原因を解明しようと、20年以上かけて重要な研究領域としてこの空前の危機にとりくみ、その努力のかいあっていったい何が起こっていたのかがようやくわかってきた。ひとつの側面ははっきりしている。その原因はずっと私たちの目の前にあった。あのシベリア・トラップである。峨眉山(エイメシャン)トラップと同じように、やはり玄武岩洪水溶岩流が積み重なっているのだが、その規模はシベリア・トラップがずば抜けて巨大だった。
侵食されたこのトラップの名残はいまだにシベリア北西部の広大な面積にわたってみることができ。さらにずっと巨大な溶岩流がいまでは西シベリア堆積盆の新しい岩石の下に埋まっている。ちょっとわかりにくいがもっと重要なのは、シベリア噴火もやはり膨大なガスを放出し、他に類を見ない最悪の気候状況をもたらしていたということだ。

シベリア・トラップ

シベリア・トラップはシベリア北西部を広く覆い、何百もの洪水玄武岩流が次々に重なって広大な高原を形成し、針葉樹林帯に襞のように広がっている。峨眉山(エイメシャン)トラップの場合と同じように、2億5000万年の間に浸蝕された溶岩もあれば埋もれてしまった溶岩もあるため、もともとの噴出量を決めるのは難しい。とくに推定に重要になるのはおそらく埋もれた溶岩の分だろう。このトラップの西側には西シベリア堆積盆があり、堆積岩のほとんどはジュラ紀の岩石で重要な産油地帯となっている。一帯に掘られた深い試掘孔から、新しい堆積岩の下には三畳紀玄武岩があることがわかっていて、おそらくはシベリア・トラップが延々と西側へ張り出しているのだろう。この埋もれた溶岩まで考慮すれば、このトラップのもともとの規模は500立方平方キロ以上あっただろう。決定的なのは、この膨大な量の溶岩はペルム紀末頃、極めて短い間に噴出したらしい点だ(100万年以下)。ガスが豊富で極めて激しい爆発的噴火によって発生する凝灰岩(ぎょうかいがん)がこの噴火の初期段階でよく見られることから、この事象が最初の絶滅パルスと強い相関があるようだ。第2の絶滅パルスつまり三畳紀の初頭には大規模な洪水玄武岩噴出がみられた。このようにシベリア・トラップはふたつの絶滅とまさにジャストタイムで噴煙を上げていた、極めて巨大な文字通りの決定的証拠(スモーキング・ガン)なのである。
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そんななかある研究で再び引き合いに出されたのが、スヴェンセンの仮説だ。
マグマの上昇により地殻の岩石を熱し(熱分解法)ガスが放出されるという説である(図、画像参照)。この「加熱調理で発生するガス」がもっともらしい説と考えられているのには、いくつかの理由がある。シベリアでの最初の噴火は凝灰岩が広範に広がっていることから、確かに非常に爆発的なものだったようだ。このガス噴火に関する直接的証拠は、ガス爆発パイプというかたちで存在する。これは激しく上方へ放出されるガスによって生じる破砕岩石でできた垂直方向のパイプだが、これが形成されるときにそばにはいたくないものだ。マグマも地殻岩石を貫通するときに大量のガス、とくに炭層ガス(主成分はメタン)を発生しやすい。
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したがってシベリアでの噴火は、マグマから直接放出されたガスの他にも、母岩が焼かれることでさらに大量のガスを放出していた有力な証拠が存在するということだ。シベリアの噴火によってもっと大量のガスが生成されたことを示す兆候は他にもある。その証拠にマグマ中に個体の塊として捕らえられた小さなマントル岩から得られ、噴火の時に溶岩とともに地表に噴出する。このような岩石は「マントル捕獲岩」(xenoliths)といい、地下のマントルの性質がわかる重要な岩石だ。

シベリア・トラップなどの巨大火成岩岩石区(LIPs)は、一般にマントルの深層部が源と考えられていて、そこで始原的マントル物質のプルームが形成され地殻の基底へと上昇しその後地表へ噴出する。この基本モデルは最近、スティーブン・ソブレフと弟のアレクサンダーの研究によって非常に洗練され、他の火成岩地質学者とともに、捕獲岩から収集された証拠に基づき、おそらくプルームは再利用された海洋地殻を豊富に含んでいるだろだろと述べている。前にも述べたように、海洋地殻は沈み込み帯を介して再び下降してマントルに戻るため、地表には(地質学的な意味で)短時間しか止まっていない。
したがってマントルはそれほど溶解していない始原的物質と、中古の再利用海洋地殻で構成されている。プルームはマントルの最も深い最も始原的な部分が源と考えられているが、プルームが上昇するとき、再処理された海洋地殻を取り込む可能性がある。再利用物質は加熱されると非常にガスを放出しやすくなるので(地質学業界用語で「揮発性成分に富む」という)、後者の方がガス発生源として重要になる。新たなガス発生源の証拠はシベリア・トラップマントル捕獲岩から得られた。捕獲岩の中にかつての海洋地殻の小片がプルームに取り込まれて地表に噴出したと思われるものがあるのだ。

プルームがゆっくりと地表に上昇してくると、圧力が減少するため大量の溶解ガスを含む多少融解したマグマが生成される。こうしてLIP噴火は、今日では匹敵するもののないものすごく大量のガスを含んだゲップで始まったのだろう。わたしたちにとっては幸運だが、現代世界にこれと匹敵する現象が存在しないため、噴火の規模を産出するのは難しくなる。ソボレフ兄弟らはある妙案に気が付いた。捕獲岩には微細な「メルト含有物」が含まれている。これは再び冷却される前にちょうど溶け始めた岩石小片で、大きさは普通1ミリ以下だ。このメルト含有物には岩石が溶け始めたときの成分が記録されていて、分析してみると、二酸化炭素と塩化水素(HCI)の濃度が非常に高いことがわかった。これらのガスが始原的マントル物質に由来するものとは考えにくいため、ソボレフはこのプルームにはガスを大量に含んだ海洋地殻成分が含まれていたと論じたのである。
微細なメルト含有物の分析結果をシベリア・トラップを形成したプルームの規模まで拡大外挿して、ソボレフはシベリア火山活動が始まったとき170x1012トン(17万ギガトン)もの大量の二酸化炭素(塩化水素はおそらくその10分の1くらいだろう)が噴出したと算出した。この途方もない量は従来火山ガス放出として見積もられていたより何倍も多く、熱分解に由来するガスも合わせれば、ペルム紀末には気が遠くなるような大量のガス噴出があったことを意味する。