じじぃの「カオス・地球_416_大絶滅時代とパンゲア・第3章・海洋の脱酸素化(2)」

温暖化の果て…最高気温44度の未来か/格差と不平等と「気候正義」 先進国の責任は【8月8日(木)#報道1930】| TBS NEWS DIG

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=eCie4UdgolI

the warmer waters could not hold enough oxygen


End-Permian Marine Mass Extinction Caused by Increased Temperatures, Oxygen Loss: Study

Dec 12, 2018 Sci.News
Some 252 million years ago, intense volcanic activity belched massive volumes of greenhouse gasses into the atmosphere and triggered rapid changes to the climate, which resulted in the end-Permian mass extinction, the largest mass extinction event in Earth’s history. Nearly 96% of all marine species were wiped out during the extinction even, followed by millions of years when life had to multiply and diversify once more. According to a new study published in the journal Science, the extinction in the oceans was caused by global warming that left marine animals unable to breathe; as temperatures rose and the metabolism of the animals sped up, the warmer waters could not hold enough oxygen for them to survive.
https://www.sci.news/paleontology/end-permian-marine-mass-extinction-increased-temperatures-oxygen-loss-06712.html#google_vignette

『大絶滅時代とパンゲア超大陸――絶滅と進化の8000万年』

ポール・B・ウィグナル/著、柴田譲治/訳 原書房 2016年発行

パンゲア超大陸の存在と生物多様性の関係が最大の原因とする、古生物史と地球環境史をかけあわせたサイエンス・ノンフィクション!

第3章 死の海 ペルム紀――三畳紀大絶滅 より

キャピタニアン期は生命にとって安寧の時代ではなかったが、2億5200万年前ペルム紀末を襲った大破局にくらべれば小さなしゃっくりのようなものだった。この次なる災害では無事にいられる生物はいなかったし、パンサラッサ海の深海部からパンゲアの内陸部まですべての環境で、膨大な種が失われた。地質学者はこの原因を解明しようと、20年以上かけて重要な研究領域としてこの空前の危機にとりくみ、その努力のかいあっていったい何が起こっていたのかがようやくわかってきた。ひとつの側面ははっきりしている。その原因はずっと私たちの目の前にあった。あのシベリア・トラップである。峨眉山(エイメシャン)トラップと同じように、やはり玄武岩洪水溶岩流が積み重なっているのだが、その規模はシベリア・トラップがずば抜けて巨大だった。
侵食されたこのトラップの名残はいまだにシベリア北西部の広大な面積にわたってみることができ。さらにずっと巨大な溶岩流がいまでは西シベリア堆積盆の新しい岩石の下に埋まっている。ちょっとわかりにくいがもっと重要なのは、シベリア噴火もやはり膨大なガスを放出し、他に類を見ない最悪の気候状況をもたらしていたということだ。

シベリア・トラップ

シベリア・トラップはシベリア北西部を広く覆い、何百もの洪水玄武岩流が次々に重なって広大な高原を形成し、針葉樹林帯に襞のように広がっている。峨眉山(エイメシャン)トラップの場合と同じように、2億5000万年の間に浸蝕された溶岩もあれば埋もれてしまった溶岩もあるため、もともとの噴出量を決めるのは難しい。とくに推定に重要になるのはおそらく埋もれた溶岩の分だろう。このトラップの西側には西シベリア堆積盆があり、堆積岩のほとんどはジュラ紀の岩石で重要な産油地帯となっている。一帯に掘られた深い試掘孔から、新しい堆積岩の下には三畳紀玄武岩があることがわかっていて、おそらくはシベリア・トラップが延々と西側へ張り出しているのだろう。この埋もれた溶岩まで考慮すれば、このトラップのもともとの規模は500立方平方キロ以上あっただろう。決定的なのは、この膨大な量の溶岩はペルム紀末頃、極めて短い間に噴出したらしい点だ(100万年以下)。ガスが豊富で極めて激しい爆発的噴火によって発生する凝灰岩(ぎょうかいがん)がこの噴火の初期段階でよく見られることから、この事象が最初の絶滅パルスと強い相関があるようだ。第2の絶滅パルスつまり三畳紀の初頭には大規模な洪水玄武岩噴出がみられた。このようにシベリア・トラップはふたつの絶滅とまさにジャストタイムで噴煙を上げていた、極めて巨大な文字通りの決定的証拠(スモーキング・ガン)なのである。

海洋の脱酸素化

ペルム紀三畳紀大絶滅については絶滅の甚大な規模の他に、この危機のもうひとつの異常な側面として、海洋無酸素化の規模と激しさがある。海洋無酸素化は過去数十億年の間に数回起きているが、2億5100万年前の事例はとてつもなく強烈で、おそらく海洋水柱のほぼ全層が脱酸素化した唯一の事例だろう。なぜそんなことが起きたのか? 急激な地球温暖化と同時に発生していることがその原因のひとつで、水温が高くなるといくつかの理由で無酸素化の状態が生じやすくなるのだ。
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ペルム紀末近くにあったような海水面の上昇が起きた場合、現代の海洋であればどう変化が生じるだろうか? 第1に、バクテリアの活動が活発になり、酸素を消費する速度が上昇するだろう。これによって「酸素極小層」(OMZ Oxygen Minimum Zone)の層が厚くなり、根本的にもっと激しい無酸素状態が生じ、酸素欠乏の海域が拡大するだろう。
さらにもっと深刻な変化も生じるだろう。放散虫が絶滅するのだ。そのことは動物プランクトンなどプランクトンを食べる生物にとって危機的な状況となることを意味する。有機物の化石記録からわかるように、かつてプランクトンの優占種が緑藻からシアノバクテリアへと転換したことでも同じ危機的状況が起きていた可能性がある。この小さなシアノバクテリアの細胞を食べる動物プランクトンはもういなくなっていたのだ。動物プランクトンのいない海洋では、微細な動物プランクトンの糞塊も生じない。糞のない海洋なら、まずいこともないんじゃないかという気もするが、実はそれが大惨事につながる。死んだプランクトンの遺物を海底まで運んでくれていたのが、この糞だからだ。有機物を小さな塊に詰め込むこのメカニズムがなければ、死んだシアノバクテリア細胞は海中を漂い、水柱内で浮いたまま分解され、その結果酸素の消費速度が大幅に上昇して、無酸素状態の海になる。

全体としてみれば、ペルム紀末の温度上昇が放散虫(と動物プランクトン)を殺害し、それが引き金となって緑藻からシアノバクテリアへと転換し、プランクトンの食物連鎖を弱体化させ、有機物の沈殿が減速し、バクテリアによる分解速度が増大する。こうしてさまざまな因子が多重に作用して、水柱での酸素消費が激化した(図、画像参照)。

温暖化によって脱酸素化が起きると考える第2の理由は、海洋循環の特性に関する。ペルム紀三畳紀の海洋無酸素化の原因として1990年代にわたしが初めてこの温度化による脱酸素化を提唱したとき、当時定説と考えられていあ海洋循環の考え方を利用した。その考え方は温度の違う海水は密度が異なることと関係していた。極海域で冷やされた表層水は密度が高くなって沈降し深海流システムを形成すると、暖かく密度の小さい熱帯表層流が極方向へ流れて釣り合いが取れていると考えられていた。さて、この海洋の混合速度は、低温海水が生成される速度に依存すると考えるのは妥当だろう。そこで世界が温暖化すれば、極圏も温暖化し海洋循環が低下するはずだ、わたしはそう推論したのである。
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コンピュータモデルはトイレットペーパーのようなもので、今使いたいというときには非常ありがたいものだが、普通次の日にそれを再利用することはない。つまり、新しい理論や新しいパラメータが開発されるたびにコンピュータモデルは絶えず更新され、ますます洗練されたモデルで新しいアイデアが試されているのだ。物理的証拠から事実だとわかっていることをモデルで再現でいないなら、そのモデルはお払い箱なのである。2008年にケイチャ・マイヤー(当時ペンシルベニア州州立大学)と彼女の同僚はまだ大気中の二酸化炭素濃度が高い場合の影響をモデルで追跡していたが、今度は海洋への栄養素の流入が増大することの重要性も考慮していた。結果として、マイヤーらはペルム紀三畳紀の海洋のいくつかの海域でもっともらしい激しい無酸素化を生じさせることができた。ペルム紀末の実際の状況どおりというわけではないが、かなりいい結果が得られた。マイヤーらの結論は、栄養素の供給が重要な因子となっているということで、例の数千年前の地中海の振る舞いとも類似している。
マイヤーらは自らのモデルでは解明できない点を十分に認識したうえで、「この[大量絶滅]期における生物ポンプの働きを抑制するにはさらなる研究が必要」と結んでいる。「生物ポンプ」とは表層水中の有機物を深海へ輸送するメカニズムのことで、ここで先に述べた論点へ戻ることになるわけだが、動物プランクトンとその糞塊(ふんかい)が消失したことが、大量絶滅の間の無酸素化を激化させる協力なフィードバックメカニズムとなった可能性があるのだ。

コンピュータモデルは当然ながら、現在のような平時の海洋の現象を再現することが出発点となるが、異常な期間の解明という点では絶滅期に何が生じていたのかが前もってわからないため、モデルによる再現にはそもそも制約がある。ペルム紀三畳紀の海洋は今日の海洋とは根本的に異なっていた。そしてその大きな理由は、おそらくペルム紀三畳紀には糞の雨が消失していたこと。シアノバクテリアプランクトンに入れ替わっていたこと、そして海水温が上昇しバクテリアによる酸素消費が激増していたからだろう。既存のコンピュータモデルでは、これらの現象はまったく考慮されてこなかった。