じじぃの「カオス・地球_420_大絶滅時代とパンゲア・第7章・本書の要点」

NASA: The Thermohaline Circulation (The Great Ocean Conveyor Belt) [720p]

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3niR_-Kv4SM

A simplified oceanic biological pump.


Oceans and the Carbon Cycle

July 7, 2011 EarthLabs
Oceans have a large capacity to absorb CO2, thus reducing the amount of CO2in the atmosphere and bringing carbon atoms into the ocean system. Many CO2 molecules that diffuse into sea surface waters diffuse back to the atmosphere on very short time scales. However, some of the carbon atoms from these original CO2 molecules stay in the ocean for time scales of hundreds to thousands of years. If some carbon atoms eventually make it to the bottom of the ocean sediment, they can be stored for time scales of millions of years.
https://serc.carleton.edu/eslabs/carbon/6a.html

パンゲア大陸

ウィキペディアWikipedia) より
パンゲア大陸とは、ペルム紀から三畳紀にかけて存在した超大陸である。
1912年にアルフレート・ヴェーゲナーは、自身の提唱する大陸移動説の中で、現在の諸大陸は分裂する前に一つであったとの仮説を考え、この大陸を「パンゲア大陸」と命名した。

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『大絶滅時代とパンゲア超大陸――絶滅と進化の8000万年』

ポール・B・ウィグナル/著、柴田譲治/訳 原書房 2016年発行

パンゲア超大陸の存在と生物多様性の関係が最大の原因とする、古生物史と地球環境史をかけあわせたサイエンス・ノンフィクション!

第3章 死の海 ペルム紀――三畳紀大絶滅 より

キャピタニアン期は生命にとって安寧の時代ではなかったが、2億5200万年前ペルム紀末を襲った大破局にくらべれば小さなしゃっくりのようなものだった。この次なる災害では無事にいられる生物はいなかったし、パンサラッサ海の深海部からパンゲアの内陸部まですべての環境で、膨大な種が失われた。地質学者はこの原因を解明しようと、20年以上かけて重要な研究領域としてこの空前の危機にとりくみ、その努力のかいあっていったい何が起こっていたのかがようやくわかってきた。ひとつの側面ははっきりしている。その原因はずっと私たちの目の前にあった。あのシベリア・トラップである。峨眉山(エイメシャン)トラップと同じように、やはり玄武岩洪水溶岩流が積み重なっているのだが、その規模はシベリア・トラップがずば抜けて巨大だった。
侵食されたこのトラップの名残はいまだにシベリア北西部の広大な面積にわたってみることができ。さらにずっと巨大な溶岩流がいまでは西シベリア堆積盆の新しい岩石の下に埋まっている。ちょっとわかりにくいがもっと重要なのは、シベリア噴火もやはり膨大なガスを放出し、他に類を見ない最悪の気候状況をもたらしていたということだ。

第7章 パンゲアの死とレジリアンスの出現 より

レジリエントな惑星

本書の要点は、パンゲアの時代になぜLIP s(シベリア・トラップなどの巨大火成岩岩石区)と大量絶滅が足並み揃えて生じたのか、一方パンゲアが分裂するとどうしてこの関係が壊れたのかを問うことだったはずだ。
パンゲア後もLIP sは依然として興味深く重要な地球規模の環境変動、とくに地球温暖化と海洋脱酸素化を引き起こせるように思えるのだが、絶滅は起きていない。実は、パンゲア後はどのLIP sも生命の危機を引き起こす能力がなかったのである。ではなぜLIP sと同時に起きる環境変動がその殺戮能力を失ったのだろうか?

この質問に答えるには、地球の海洋―気候システムの機能、とくに温室効果ガスが大気中から除去される仕組みの問題に戻らなければならない。この問題は気候科学研究所(LSCE Laboratoire des Sciences du Climat et de l'Environnement)のヤニック・ドナデューなど気候モデル研究者にとって生計手段のようなものだ。ドナデューはGEOCLIMモデルを駆使し、パンゲア世界は一般的に非常に熱く乾燥し、大気中の二酸化炭素はおおむね3000ppm程度だったことを明らかにした。前期白亜紀までに、世界はかなり効率的に二酸化炭素を除去できるようになり、大気中の二酸化炭素濃度はパンゲア時代のわずか10分の1というレベルで平衡を維持していた。その理由はパンゲアの大きさに関係する。巨大な大陸には広大な内陸部があり海から遠く離れているため、たいした降雨がない。逆にもっと細分化された小さい大陸であれば大半の地域に雨が降る。ここで重要なのは、降雨によって風化が生じることで、その過程で大気中の二酸化炭素を消費し、それが重炭酸イオン(HCO3-)となる。この重炭酸イオンが海洋に流出すると、海のアルカリ度が増加し石灰岩の形成が促される。大陸からの表面流出は海洋へ栄養素を供給することになり、プランクトンの成長を促しそれによってさらに二酸化炭素の除去が進み、有機炭素として海底堆積岩に埋め込まれる。
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パンゲアが存在した間、突然気候が温暖化した影響は極めて深刻で、過酷な正のフィードバック効果が作動し、温暖化の影響を大災害となるまでに増幅させた。何よりひどかったのは、ペルム紀三畳紀危機の間の温度上昇を食い止めることができず、有機物を埋め込めなくなるほどの温度に達したことだ(温度が高くなるほど有機物が急速に分解してしまうため)。その結果温度が上昇しすぎ陸上では光合成ができなくなり、それが今度は有機物の形成と岩石の風化を遅らせ、炭素循環の重要な部分が弱体化したのである。幸いなことに、海洋無酸素化の拡大によって有機物を埋没させる新たな場所、深くて寒冷な深海底が登場したことで、最終的には再び通常の状態に回復することができた。しかしこの回復も大部分の海洋生物にとっては遅すぎ、このころには無酸素化と高温という二重の災難に耐えなければならなくなった。

現代世界のフィードバック機構は、6気筒の自動車エンジンになぞらえてもいいだろう。ゆっくり走りながらたまにスピードアップすると二酸化炭素が余計に注入されるが決して不点火にはならない。逆にパンゲアのエンジンは4気筒で時々不点火を起こし3気筒で走ることになった。そして少なくとも一度は、陸上植物の生長と埋没という仮定が完全に中断してしまったのである。
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本書を究極的に要約すると、8000万年の間一連の巨大火山噴火があってそれによって度重なる危機が生じ、生物の一生を根本的に変化させ、それがなければ生き残れたであろう生物グループを絶滅させてきたということだ。パンゲアの動物たちは気の毒だった。パレイアサウルスやディノケファルス、クロルタルシなどの動物もみな順調に生きられることを期待していただろうが、予想外に短く終わってしまった。その代償として、私たちのお気に入りの動物、恐竜が非常に長期にわたってセンターステージに立つことができたわけだが、しかしそれも、彼らの闊歩していた時代がたまたま巨大超大陸の分裂のときと一致したという幸運に恵まれただけに過ぎない。最後には恐竜の幸運もつきるのだ。