じじぃの「カオス・地球_419_大絶滅時代とパンゲア・第6章・恐竜の時代」

ディロフォサウルスの進化1993-2022| ジュラシック・ワールドの支配、ジュラシック・エボリューション

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=8bsepqCOu4I

ジュラ紀前期の恐竜ディロフォサウルス


ジュラシック・パークの“ 毒吐き恐竜” ディロフォサウルスの本当の姿

日経サイエンス  2021年10月号
ジュラ紀前期の恐竜ディロフォサウルスは1993年公開の映画『ジュラシック・パーク』に“出演”,知名度が上がった。
だが,その本当の姿は映画に描かれたものとは異なることが近年の研究で明らかになった。ディロフォサウルスは強力な顎を持ち,当時としては大型の頂点捕食者で,他の恐竜も捕食していたようだ。ディロフォサウルスの進化のプロセスや生息環境も詳細にわかってきた。
https://www.nikkei-science.com/202110_034.html

『大絶滅時代とパンゲア超大陸――絶滅と進化の8000万年』

ポール・B・ウィグナル/著、柴田譲治/訳 原書房 2016年発行

パンゲア超大陸の存在と生物多様性の関係が最大の原因とする、古生物史と地球環境史をかけあわせたサイエンス・ノンフィクション!

第3章 死の海 ペルム紀――三畳紀大絶滅 より

キャピタニアン期は生命にとって安寧の時代ではなかったが、2億5200万年前ペルム紀末を襲った大破局にくらべれば小さなしゃっくりのようなものだった。この次なる災害では無事にいられる生物はいなかったし、パンサラッサ海の深海部からパンゲアの内陸部まですべての環境で、膨大な種が失われた。地質学者はこの原因を解明しようと、20年以上かけて重要な研究領域としてこの空前の危機にとりくみ、その努力のかいあっていったい何が起こっていたのかがようやくわかってきた。ひとつの側面ははっきりしている。その原因はずっと私たちの目の前にあった。あのシベリア・トラップである。峨眉山(エイメシャン)トラップと同じように、やはり玄武岩洪水溶岩流が積み重なっているのだが、その規模はシベリア・トラップがずば抜けて巨大だった。
侵食されたこのトラップの名残はいまだにシベリア北西部の広大な面積にわたってみることができ。さらにずっと巨大な溶岩流がいまでは西シベリア堆積盆の新しい岩石の下に埋まっている。ちょっとわかりにくいがもっと重要なのは、シベリア噴火もやはり膨大なガスを放出し、他に類を見ない最悪の気候状況をもたらしていたということだ。

第6章 パンゲア最後の一撃――ジュラ紀ゴルゴタ より

三畳紀(今から2億5100万年から1億9960万年前までの期間を指し、恐竜が最初に地球上にあらわれた時代)の大災害からの回復は、ペルム紀末の大崩壊の後とくらべると多くの意味で非常に急速かつ順調だった。ジュラ紀が始まってから100万年後、海洋の底生生物は豊富でしかも多様だった。これとは対照的に三畳紀の場合、始まりから100万年たっても依然として生命は停滞状態で、一握りの腹足類と二枚貝が、熱くて酸素の少ない海をなんとか生き延びていた。しかしジュラ紀の回復にも見掛けだけではなからない部分があった。危機を乗りのりきった生物でもその多くは、かつての栄光を取り戻せなかったのである。たとえばイクチオサウルスの場合、多くのタイプが絶滅しわずかに生き延びた種は、かつてほどの多様なタイプを再び進化させることができず、イルカに似た「魚のような爬虫類」だけがジュラ紀の海を賑わすことになった。海洋の頂点捕食者の多様性を支えることになるのは、プレシオサウルスやプリオサウルス、そして海生クロコダイルなどの新たに進化した多種多様な海生爬虫類だった。アンモノイド類の仲間も絶滅の間に種のほんの一握りにまで減少したが、まったく異なる対応を見せた。これら少数の生き残りがジュラ紀の化石で最も繁栄し(しかも美しい)アンモナイトを生み出し出しのである。
    ・
前期ジュラ紀に関するよい化石記録を残しているプランクトンは放散虫だけではない。第4章で述べたように、円石藻類はコッコリスという炭酸カルシウムの小さな円盤を分泌するプランクトンのグループで、深海の炭酸塩泥を形成する。この円石藻類は登場したのは後期三畳紀で、三畳紀末までにいくらか多様化したものの、大量絶滅で極めて多くの種を失った。しかしその後円石藻類は復活し、最初はテチス海周辺の浅海域で増殖が始まり、それからテチス海の外洋域にも生息域を広げた。トアルシアン階初期の危機の間には、円石藻類の生息域はまだ沿海域に限られていた。今度はどうやって復活したのだろうか? 驚くなかれ、その答えはまったく無事だったのである。円石藻類の多様性には何の問題も生じることがなく、約1億2000万年後の白亜紀末まで何の抑圧も被ることのないまま、その多様性は増大を続けた。トアルシアン階危機は世界のプランクトンに長期的な影響は与えなかったのである。

ジュラ紀の海洋の変化を概観してきたが、この辺で陸上に視点を移してみよう。前期ジュラ紀までには恐竜が陸上の覇権をとり形態も多様化させ、鎧をつけた巨大な装飾動物、さらに巨大で首の長い竜脚下目(りゅうきゃくかもく)、また捕食者であるディロフォサウルスなどの獣脚類(じゅうきゃくるい)などが出現した。最後のディロフォサウルスは映画『ジュラシックパーク』の第1作に登場し、つばを吐いて行儀の悪い仕草を見せていた。しかし残念ながら、トアルシアン危機ころの恐竜の運命についてはよくわかっているとは言えず、当時海面が非常に高かったことと関係するのかも知れないが、陸上恐竜の化石を含む堆積物はめったにない。恐竜の化石がまれなことから、恐竜に重大な種の減少があったのかどうか推定するのは難しい。わずかな間接的証拠から、何かが起きていたということは考えられる。スミソニアン協会のマシュー・カッラーノは、巨大捕食恐竜メガロサウルスの進化樹に関する大変な調査を徹底的に行い、この恐竜が後期トアルシアン階に明らかに大きく多様化していることを示した。こうした適応放散が生じるのは大量絶滅の後である場合が多いのだが、これは大量絶滅によってそれまで生息していた動物が排除され、空きができたニッチを再び埋め合わせようと進化に勢いがつくからで、ひょっとすると前期トアルシアン階の恐竜絶滅事象が、ディロフォサウルスのような既存の捕食者を排除し、そこにメガロサウルスが一歩踏み出して空になったニッチに収まることができたのかも知れない。残念ながら、これでは状況証拠にしかならない。進化的成功物語が始まるまえに必ず絶滅事象があるわけではない。トアルシアン階に正真正銘の大規模な陸上絶滅があったとするなら、すでに古生物学者はその証拠を発見していてもいいはずだろう。