オハイオ州は大統領選の激戦州である
オハイオ州(中西部)
NHK NEWS WEB 2016年
中西部オハイオ州は、人口が1100万人と全米で7番目に多い州で、18人の選挙人が割り当てられています。人種の構成や産業の分布が全米の平均値に近いことから、「アメリカの縮図」とも呼ばれています。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/tossup_states4.html
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オハイオ州 工業の衰退が進む「ラストベルト」の一角 より
面積と人口 全米で7番目に人口の多い州
オハイオ州の面積は11万6096km2。本州の半分くらいの州である。人口は1176万人程度、全米で7番目に人口が多い。
地勢と気候 エリー湖にある内陸州であり、寒暖差が激しい
アメリカ北部の内陸州であり、州の北側は5大湖の1つであるエリー湖岸となる。南部の州境にはオハイオ川が流れ、南部へと流れ込むミシシッピ川に合流している。そのため、内陸水上交通の要衝(ようしょう)となっている。
北緯38度から42度の間に位置し、日本でいえば北海道南部から東北地方北部と同じ緯度にある。内陸性気候のため、寒暖の差が激しく、降雪もある。
政治風土 「オハイオを制する者が全米を制する」
屈指の激戦州(スイング・ステート)となっている。1984年から2016年まで、オハイオ州で勝利した者が、民主候補であれ、共和党候補であれ、大統領となっている。
つまり、どちらにでも揺れ、その差はごくわずかということ。1992年のビル・クリントンの勝利、2016年のトランプの勝利においても、オハイオ州が焦点となった。ただ、2020年の選挙では、トランプがオハイオ州を制したものの、民主党のバイデンに最終的に屈している。選挙人の数は17。
トランプ支持の背景にあった「ラストベルト」化
大統領選の激戦州であるオハイオ州では、2016年、2020年の選挙では共和党のトランプを支持した。その背景に、同州の「ラストベルト」化がある。
「ラストベルト」とは、「錆(さ)びた地帯」を意味する。合衆国の5大湖周辺の一帯であり、長く合衆国屈指の工業地域であった。けれども、近年、製造を外部に委託しはじめ、さらには脱工業化が進んでいくと、住人たちも外部に職を求めるようになる。商店は閉鎖に追い込まれ、職にあぶれた若者も出てくる。オハイオ州も、そうした「ラストベルト」化が問題になっていたのだ。
「ラストベルト」救済を掲げたのは、トランプであった。救済の声によって、ラストベルトではトランプが優勢となり、激戦州オハイオもトランプを支持したのだ。
7人の歴代大統領を輩出した俊英の地
オハイオ州は、すぐれた指導者や偉才を輩出してきた地でもある。同州からは、7人の歴代大統領が生まれ育っている。特に19世紀後半には、第18代のユリシズ・グラントから、第19代のラザフォード・ヘイズ、第20代のジェームズ・ガーフィールドと、3代続けて大統領が登場している。
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また、オハイオ州出身の著名人として「発明王」トーマス・エジソン、有人飛行機を初めて飛行させたライト兄弟(兄ウィルバーはインディアナ州生まれ)らがいる。映画監督スティーヴン・スピルバーグも同州の出身である。オハイオ州のすぐれた教育が、俊英を次々と生んでいたのである。