じじぃの「カオス・地球_411_46億年の地球史・第8章・化石燃料の害」

How Scientists Measure Carbon Dioxide in the Air

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=dXBzFNEwoj8

大気中の二酸化炭素の量 (ハワイのマウナロア山頂の観測所)


Measuring CO2 levels from the volcano at Mauna Loa

25 October 2010
The observatory near the summit of the Mauna Loa volcano in Hawaii has been recording the amount of carbon dioxide in the air since 1958. This is the longest continuous record of direct measurements of CO2 and it shows a steadily increasing trend from year to year; combined with a saw-tooth effect that is caused by changes in the rate of plant growth through the seasons. This curve is commonly known as the Keeling Curve, named after Charles Keeling, the American scientist who started the project.
https://skepticalscience.com/Measuring-CO2-levels-from-the-volcano-at-Mauna-Loa.html

たった1日でわかる46億年の地球史

【目次】
プロローグ――地球学への招待状
1. 化学と地球――地球はどのように生まれたのか
2. 物質と地球――地球はどのように形成されたのか
3. 生命と地球――地球に広がる生命
4. 酸素と地球――呼吸できる空気はどこから来たのか
5. 動物と地球――大型化する生命
6. 植物と地球――植物と動物の世界
7. 災害と地球――絶滅が生命の形を変える

8. 人間と地球――地球を変える人類

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『たった1日でわかる46億年の地球史』

アンドルー・H・ノール/著 鈴木和博/訳 文響社 2023年発行

私たちの身の回りにある山や海、動植物、資源、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか?
ハーバード大学の名誉教授(自然史学)で、NASAの火星探索ミッションにも参加している著者が、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点でエキサイティングに読み解く一冊。

8. 人間と地球――地球を変える人類 より

最初の霊長類

新生代を通して、生命と環境は呼応しながら変化していく。かつての超大陸パンゲアが分裂して以来、大陸は地球規模で離れつづけている。大西洋は劇的に広がり、ロッキー山脈やアルプス山脈ヒマラヤ山脈が空高くそびえるようになった。造山運動によって風化が速まり、大気中の二酸化炭素は吸収された。プレートの移動によって海水の循環は変わった。その結果、地球は冷えはじめた。高緯度地域からヤシやワニなどの温暖な気候を好む種が消え、内陸部の森林は草原に変わりはじめた。3500万年前には、南極が氷河が覆われ始めた。

このようなダイナミックな自然環境を背景に、霊長類が陸地に広がっていった。キツネザルやメガネザルなどのサルの仲間、そして霊長類の系統樹でヒトを含む枝にあたる大型類人猿など、さまざまな種が登場した。ここで600万年前から700万年前に起きた出来事に注目しよう。このころ、地球寒冷化のベースが上がり、再び氷河期が近づいていた。アフリカでは内陸部が乾燥し、森林がまばらな林や草原に変わっていった。そしてその生息環境の変化に刺激されて、現在のチンパンジーボノボから分かれた新たな系統の大型類人猿が登場した。この新種のサルはホミニン(ヒト族)と呼ばれ、大まかに言えばチンパンジーに似ていた。体は小さめで、脳は小さく、鼻が突き出し、長い腕と細長い指をうまく使って樹上を移動していた。ただし、このホミニンには、ほかの大型類人猿と違う重要な特徴が1つあった。直立歩行できたことだ。

生態系への深刻な影響

ある意味で、産業革命は人類の黄金時代のはじまりだった。公衆衛生や好況によるメリットが広がるとともに、均等にとは言えないかもしれないが、世界中で人口が急速に増加した。70億人以上に食料や衣類を供給できるようになったのは、技術革新のおかげだ。しかし、地球はその技術によって激しく圧迫されている。
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海は広大だが、だからといって汚染の影響を受けないことはない。海に流れ込むプラスチックの量は、毎分ゴミ収集車1台分と見られており、各地の海で動物の数に大きな影響を与えている。

化石燃料がもたらす宿痾

1世紀以上にわたり、自然の生態系は生息地の破壊や汚染、乱開発、侵略種によって蝕まわれてきた。オーストラリアがヨーロッパの植民地になってから、オーストラリア減産の哺乳類の種の10パーセント以上が消えた。北米の鳥の数は、1970年に比べて30パーセント近く減った。また、ヨーロッパの草原にいる虫の数は、この10年で80パーセント近く少なくなぅた。こういった厳然たる統計のほとんどは、前述のような行為を反映している。だが、私たちの孫の世代が地球に対する人間の最大の影響として認識することになるであろう現象は、まだ続いている。21世紀に入っても、生息地の破壊などはとどまることはないだろう。しかもそれは、劇的に変わっていく地球で進行することになる。今後の大きなテーマとなるのは地球温暖化だ。炭素サイクルに人間が関わることによって、地球自体が変わり、危機的な状況が訪れる。

この迫りくる災難について理解するのは、二酸化炭素と気候との根本的な関係、そして炭素循環における地球と生命との幅広い相互作用ももう一度注目しなければならない。復習しておくと、植物などの光合成を行う生物は空気や水からCO2を取り除き、炭素を固着させて成長や生殖に必要な生体分子を作る。動物や菌類、そして無数の微生物は、そういった分子を呼吸することでエエネルギを得ており、その過程で炭素はCO2の形で環境に返される。
光合成と呼吸はほぼバランスがとれているが、完全に均衡しているわけではない。均衡していない部分は、呼吸やそれに関連するプロセスを逃れて堆積する有機物を指している。このようにして埋もれた有機物の一部は、熟成されて石油や石炭、天然ガスになる。これらは、数百万年という長い時間をかけなければ、地表の炭素サイクルに戻ってくることはない。プレートテクトニクスによって堆積物が持ちあげられて山になり、露出して化学的風化や侵食を受けたときだ。少なくとも、産業革命が起きるまではそうだった。

炭素サイクルの物質に関連する部分に注目すると、大気中にCO2が追加されるのは火山によってであり、除去されるのは化学的風化によってである。炭素は最終的に石灰岩として堆積する。このプロセス全体が、大気中の二酸化炭素の量を決めている。また、CO2は強力な温室効果ガスなので、長い目で見れば寄稿にも影響を及ぼす。
第7章で解説したように、2億5200万年前のペルム紀末に(海洋生物の種の90パーセント以上が姿を消した)、巨大火山が大気中に大量のCO2を排出し、それによって地球温暖化や海洋酸性化(生理学的に重大な規模で海水のPHが低下すること)、そして海の酸素の欠乏が起きた。陸上でも海中でも、生命の多様性が失われた。しかし、火山活動の結果として起きた温暖化により、化学的風化の速度が速まったため、数千年後には大気中のCO2はもとのレベルに戻っていた。

火山は炭素サイクルを乱す自然の仕組みかもしれないが、人間も同じくらいの力を持つ新たな仕組みを生み出している。それは化石燃料の燃焼と農業目的の森林伐採だ。何億年もかけて作られた石炭、石油、天然ガスにより、炭素が途方もない速さで大気中に返されている。
21世紀の人類は、世界の火山をすべて合わせた量の100倍の二酸化炭素を大気中に放出している。しかし、大気や海洋にCO2を放出する速度はますます上がっているにもかかわらず、それを取り巻く速度を増やす技術は(まだ)何もない。そのため、私たちの周囲の空気にに含まれるCO2は増えつづけている。

ペルム紀末の絶滅後と同じように、やがて地球の温暖化によって化学的風化の速度が上がり、大気中の二酸化炭素の量はバランスを取り戻すことになるだろう。しかしこれまでそうだったように、このプロセスには数千年の時間が必要だ。私たちや子どもや孫の世代だけを見るなら、CO2は増えつづける一方でしかない。