高校生物基礎「3つのヌクレオチド DNA RNA ATP」
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=OlI7aQkRGjg
化学進化 (生物体に必要な物質が生成される過程)
第2回 地球から細胞が生まれた1
実験医学online
2.有機化合物ができる
地球上の生命は,どこかで誕生したものが飛来したのではなく,地球上で誕生したと考えられます.
海ができて化学反応が可能になると,すぐに,無機物から有機化合物が合成されました.この過程を化学進化といいます(第2回図2).やがて誕生した生物が多様な変化をするのが,生物進化です.
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/mb_lecture_ex/vol2n1.html
たった1日でわかる46億年の地球史
【目次】
プロローグ――地球学への招待状
1. 化学と地球――地球はどのように生まれたのか
2. 物質と地球――地球はどのように形成されたのか
3. 生命と地球――地球に広がる生命
4. 酸素と地球――呼吸できる空気はどこから来たのか
5. 動物と地球――大型化する生命
6. 植物と地球――植物と動物の世界
7. 災害と地球――絶滅が生命の形を変える
8. 人間と地球――地球を変える人類
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『たった1日でわかる46億年の地球史』
アンドルー・H・ノール/著 鈴木和博/訳 文響社 2023年発行
私たちの身の回りにある山や海、動植物、資源、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか?
ハーバード大学の名誉教授(自然史学)で、NASAの火星探索ミッションにも参加している著者が、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点でエキサイティングに読み解く一冊。
3. 生命と地球――地球に広がる生命 より
生命はいかにしてうまれたか
長年、スミソニアン協会の米国国立自然史博物館では、初期の地球に関する展示に、あるビデオを使って使っていた。テレビ番組「フレンチ・シェフ」で多くのアメリカ人に知られているジュリア・チャイルドが出演するもので、ユーモアにあふれながらも核心に迫る内容になっている。ジュリアは、ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮込みの複雑な味付けを説明したのと同じ快活な声で、「原始スープ」のレシピを説明する。これは単純な化学物資を混ぜ合わせたもので、そこから生命が生まれたと考えられている。生命に「レシピ」があると考えるのは確かに単純すぎるかもしれないが、複雑な生命体を生体分子という部品にまで分解して考えるなら、一理あるといえるだろう。
生命体は時間とともに進化した化学装置であり、言うなれば化学的作用の歴史だ。そのため、生命の起源を探ろうという実験では、生命のない地球で細胞の材料となる化学成分がどのように生成されたのかという点に注目している。細胞の行動や機能を支えるタンパク質について考えてみよう。私たちの体内にあるタンパク質は大きく複雑だが、アミノ酸というかなり単純な材料が組み合わさってできている。一般的なタンパク質には20種類のアミノ酸が含まれ、それがつながり合って機能する構造になっている。
たとえるなら、文字を組み合わせて意味のある単語や文を作るようなものだ。ということは、アミノ酸を合成できれば、タンパク質を構成する要素がそろったことになる。1953年、スタンリー・ミラーとハロルド・ユーリーの2名が、初期の地球でそれが起きた可能性があうことを実証した。まず、試験管を二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、天然ガスすなわちメタン(CH4)、アンモニア(NH3)で満たした。これはミラーたちが原始地球の大気に含まれていたと考えた単純な分子を混ぜたものだ。そして、初期の地球の雷を模して火花を発生させたところ、試験管の内壁が茶色い物質は、アミノ酸を含む有機分子であることがわかった。ミラーとユーリーは、この歴史的な実験によって、自然界のプロセスで生命の重要な構成要素が生成された可能性を示した。
同じような方法でDNAに迫ることができる。DNAは細胞の取扱説明者であり、進化の記録でもある。とても複雑ではあるが、ヌクレオチド(リン酸・糖・塩基が結合した化合物のことを、ヌクレオチドという。DNAやRNAといった高分子化合物は、ヌクレオチドが繰り返し結合することにってできている)と呼ばれる4つの部品だけでできている。DNAが複雑なのは、ヌクレオチドが分子に沿って直線的に並ぶパターンがさまざまあるからで、DNAの情報はそこに蓄えられている。DNAのヌクレオチドは、タンパク質のアミノ酸と同じように、DNAの情報が織り込まれたコードのようになっている。ヌクレオチドをさらに分解すると、糖とリン酸イオン(3-PO4)、そして「基」と呼ばれる単純な有機分子になる。基はシアン化水素(HCN)などの単純な化合物から合成できるため、若い地球にも存在していたはずだ、また、ホルムアルデヒド(CH2O)などの単純な前躯体から糖を精製できることは1世紀以上前からわかっているので、これも古くから地球に存在していたと考えられる。さらに、火山岩の化学的風化によってリン酸イオンもあったはずだ。
こういった物質を組み合わせてヌクレオチドを作るという研究は何十年も行われてきた。そして2009年には、イギリスの科学者ジョン・サザランドらが、生まれたばかりの地球に近いと思われる環境で、2種類のヌクレオチドを生成することに成功した。
もう1つの欠かせない要素が脂質だ。脂質はすべての細胞を覆っている膜の成分となる分子で、タンパク質やDNAと同じように、単純な部品でできている。これは脂肪酸と呼ばれる長い鎖のような分子で、これも生まれたばかりの地球で化学的に生成されていたと考えられている。
おもしろいことに、脂肪酸を含む水がたまったり蒸発したりすると、脂肪酸が自然い集まって回転楕円体のような微小構造ができる。この構造には、細菌を覆っている膜と共通する性質が多い。
ということは、生命の主な構成要素、つまり私たちの細胞を作っている分子は、たとえ局所的だったにしろ、生まれたばかりの地球で起きていた自然界のプロセスで生成できることになる。重要なのは、この結論は単に理論的に、あるいは実験によって導かれたものではないということだ。先ほど述べたような反応は、何十億年も前に実際に起こっていたことがわかっている。その記録は、太陽系が生まれるときにできた隕石の中に保存されている。地球が成長するときに、炭素質コンドライトが炭素と水の供給源になったことはすでに説明した。この炭素質コンドライトはには、なんと70種類ものアミノ酸、そして糖や脂肪酸など、実に多様な有機分子が含まれていた。宇宙には、生命の源となる化学物資が広がっているのかもしれない。