じじぃの「カオス・地球_364_林宏文・TSMC・第5章・テキサスでの工場新設」

【衝撃】世界シェア5割…日本製の「半導体素材」がとんでもなくヤバい…【シリコンウェハ】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FRJnqcDgOM0

TSMC半導体工場を日本やアメリカに続いてドイツにも建設


TSMCが1.5兆円規模の半導体工場を日本やアメリカに続いてドイツに建設予定

2023年08月09日 GIGAZINE
台湾に拠点を置く世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」は日本の熊本県アメリカのテキサス州に工場を新設する計画を進めています。
新たに、TSMCがドイツでの半導体工場建設計画を2023年8月8日(火)に発表しました。ドイツに建設予定の工場にはTSMCボッシュ、インフィニオン・テクノロジー、NXPが共同出資する予定で、投資総額は100億ユーロ(約1兆5700億)を超えると見積もられています。

なお、TSMCの熊本工場は2024年末の稼働開始を目指して建設が進んでおり、2023年8月にはオフィス棟が稼働開始することが報じられています。また、テキサス州に建設中の工場では2024年中に4nmプロセスの半導体を生産開始する予定でしたが、人材不足を理由に生産開始時期が2025年に延期されています。
https://gigazine.net/news/20230809-tsmc-germany-fab/

TSMC 世界を動かすヒミツ

【目次】
はじめに――TSMCと台湾半導体産業のリアル
序章 きらめくチップアイランド
第1章 TSMCのはじまりと戦略
第2章 TSMCの経営とマネジメント
第3章 TSMCの文化とDNA
第4章 TSMCの研究開発

第5章 半導体戦争、そして台湾と日本

                    • -

TSMC 世界を動かすヒミツ』

林宏文/著、牧髙光里/訳、野嶋剛/監修 CCCメディアハウス 2024年発行

2024年の熊本工場(JASM)始動と第2工場の建設決定で、注目が高まるTSMC。創業時からTSMCの取材を続け、創業者モリス・チャンのインタビュー実績もある台湾人ジャーナリストが、超秘密主義の企業のベールを剥がす。
(以下文中の、強調印字は筆者による)

第5章 半導体戦争、そして台湾と日本 より

米国半導体業界、今ある商機のヒミツ――シリコンウェハー現地調達需要の高まり

ウェハー製造で世界第3位の台湾メーカー、グローバルウェハーズ(環球晶内)が2022年12月1日、米国テキサス州シャーマン市で12インチ工場の起工式を行った。米国にとっては約20年ぶりに新設されるシリコンウェハー工場とあって、現地には多くの来賓が駆けつけ、同社社長の徐秀蘭(じょしゅうらん)に祝辞を述べた。

その5日後の12月6日には、アリゾナ州フェニックスでTSMCの設備搬入式典も行われた。バイデン大統領、そしてアップルCEOのティム・クック、エヌビディアCEOのジャンスン・ファン、AMDアドバンスト・マイクロ・デバイセズ)CEOのリサ・スー(蘇姿su、そしほう)、マイクロン・テクノロジーズ(以下、マイクロン)CEOのサンジャイ・メロトラといった業界トップが列席し、モリス・チャン(張忠謀、ちょう ちゅうぼう)、マーク・リュウ(劉徳音、りゅうとくおん)、シーシー・ウェイ(魏哲家、ぎてつか)に祝辞を述べた。地政学的に混乱した状況のなかで、台湾発の半導体大型投資プロジェクトが、米国政府も注目する焦点となった。

グローバルウェーハズは現在、シリコンウェハー業界1位の信越化学工業、2位のSUMCOに次ぐ世界シェア第3位の台湾メーカーだ。もともとは新竹サイエンスパークの中小企業だったシノ・アメリカン・シリコンプロダクツ(以下、シノ・アメリカン)の傘下企業として設立された。生産拠点は台湾のほか、中国、日本、韓国、マレーシア、米国、イタリア、デンマークポーランドと世界に広げて、ウェハー業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立している。

なぜテキサスでの工場新設を選んだのか

グローバルウェーハズがテキサスにシリコンウェハー工場を建設したのは、米国英府からの補助金も大きかったが、それだけが決め手になったわけではない。

徐秀蘭は、米国の半導体製造工場の数は増え続けているが、シリコンウェハーの現地供給量は1%にも満たないため、米国国内でのウェハーの供給不足が深刻化していると考えていた。また、炭素排出実質ゼロやエコソリューションに世界の注目が集まっているのに、米国にはそれに対応するシリコンウェハー供給ソリューションがないことも、グローバルウェーハズが米国工場を設置することにした主な理由だった。

シノ・アメリカン元会長の盧明光(ろめいこう)は、同社とグローバルウェーハズの世界的な買収計を画主導してきた人物で、49年にわたり半導体業界に身を置いて、台湾TI(テキサス・インスツルメンツ)、光宝電子、シノ・アメリカンを率いてきた人物だ。盧はグローバルウェーハズの米国工場設立について、米国政府から要請されたからではなく、米国市場には将来的二巨大なビジネスチャンスがあると総合的に判断したからだと話している。顧客がそこにいて、しかも魅力的な補助金が提示されたから、工場の建設を決定したのだ。
    ・
盧明光は、TSMCアリゾナに投資するにあたり、台湾から多くのエンジニアを送り込む必要があるだろうが、グローバルウェーハズにはあまりその必要はないと言う。それは主に、グローバルウェーハズはテキサスにすでに大きな経営基盤を持っているため、今後新工場を建設しても台湾からそれほど多くの人材を異動させる必要がないうえ、シリコンウェハーの生産フローが、ファウンドリーよりもはるかに簡単だからだ。ファウンドリーとシリコンウェハーの製造はこの点で大きく異なる。

2022年、盧明光は台湾ハイテク業界での最高の栄誉とされる「潘文淵(はんぶんえん)賞」を受賞した。潘文淵は40年以上も前に台湾が集積回路発展計画を立ち上げたときに尽力し、台湾が米国企業RCAアメリカ・ラジオ会社)から半導体技術の給与を受ける際にも奮闘した人物である。

この授賞式で、当時技術研修を受けるためにRCAに派遣されたうちの1人で、TSMC現副社長の曾繁城(そうはんじょう)が、設立当初にシリコンウェハーを調達する際に起きたあるできごとに触れた。TSMCは設立時に工研院からチームを引き継いだが、周囲からは実力を疑われ、日系メーカーの信越化学工業も含め、多くの大企業から軽んじられていたと言った。

曾繁城は、当初ウェハーを3インチから4インチに切り替える必要があったため、信越化学工業にシリコンウェハーを発注しようとしたところ、良品は米国市場に売るため、品質の劣るものしか台湾には売れないし、米国への売値は5ドルだが、台湾向けは10ドルになると言われた。曾繁城はその後、他の人に交渉させたが、結局8ドルにしか下がらなかった。曾繁城は二度と日本人からウェハーを買うものかと誓い。調達先を米国のMEMCに変更した、と当時を振り返った。

しかし、今の状況はもちろん違う。TSMCの規模が拡大するにつれ、日本製のシリコンウェハーもTSMCで使われるようになった。

盧明光と曾繁城という半導体業界の2人の老将は今、台湾の業界の実力に全幅の信頼を寄せている。盧明光は、TSMC米国工場の3ナノメートルが量産体制に入るのは2025~2026年になるが、TSMC台湾工場の2ナノメートルと1ナノメートルはそれまでに準備が整っているはずだから、顧客と市場が米国にあれば会社が投資しない理由がないと述べた。

40数年前には半導体の製造基盤がゼロで、米国からのライセンス付与を必要としていた台湾は、今や世界がうらやむ重要な力を持つまでに至った。TSMCとグローバルウェーハズが今のように、米国に技術を輸出し、しかも、当時とは逆に米国に工場を建設し、より大きな商機を得て台湾の産業競争力を向上できるようになるまでには、大変な苦労があったはずだ。