じじぃの「カオス・地球_465_日本列島はすごい・5章・塩の道」

世界の主な製塩地


世界の塩:世界の塩資源(海水の成分、世界の塩資源の分布)|世界の塩・日本の塩

利用されている塩資源の割合
現在、世界中で1年間に約1億8000万トンの塩が生産されています。海水からつくられる塩は、そのうちの約1/4で、残りは、岩塩や塩湖など海水以外の塩資源から採られます。
https://www.tabashio.jp/collection/salt/s4/index.html

『日本列島はすごい――水・森林・黄金を生んだ大地』

伊藤孝/著 中公新書 2024年発行

5章 塩の道――列島の調味料 より

2 海の水はなぜ塩辛いのか
神の目で地球を眺め、水の循環をイメージする
海の水はなぜ塩辛いのか? さかのぼってみていくとすれば。舌の味蕾(みらい)の中ににある味細胞がナトリウムイオンを県とし、脳へ「塩辛い」というシグナルを送るからだろう。それでは、海水中になぜたくさんのナトリウムイオンが含まれているのか? 時間と空間のスケールの尺度を柔軟に伸び縮みさせながら、考えていく。

まずは宇宙飛行士になった気分になろう。神の目でもよい。遠くから地球を眺める感覚。陸と海と雲が見える。小学校と中学校で習った知識を総動員しつつ、このスケールでの水の循環をイメージしてみる。

水はいたるところから蒸発する。海からだけではなく陸からも、生まれた水蒸気は目に見えない。しかし、条件の¥によっては凝結し、雲になると人の目でも見えるようになる。やがて、より大きな粒子へと成長すれば、それは雨となって降り注ぐ。陸に降った雨は大地を潤すが、多くが蒸発してしまう。一部は河川水や地下水となって、また海へと戻っていく。そして重要なのは、この過程が延々と繰り返されることだ。

延々と繰り返される水の循環を想像できるようになったところで、つぎにナトリウムを考えてみる。小学校5年生の理科で、水に溶けたものを取り出す実験をしたかもしれない。蒸発皿に入れた食塩水を蒸発させて、食塩だけが皿の上に残ることを確認しただろう。
自然においても一緒である。液体の水が蒸発した水蒸気はH2Oからなる純粋な期待であり、ナトリウムをはじめ塩類は含まない。ナトリウムは残される。したがって、水蒸気の集合体である雨水もナトリウムを含まない。

この過程では、蒸発皿にあたるのが海である。ただし、実験室での蒸発皿の場合は、水蒸気は空気中に消えてしまうが、地球全体で考えると、水蒸気は重力に捉えられ、巡り巡って、また海に戻ってくる。

3 塩の地層
岩塩は蒸発岩の1つ
世界の半分以上の人たちは岩塩を食しているらしい。日本でも食にこだわりのある方は、いろいろな岩塩を使い分けているかもしれない。

岩塩とは、いってみれば、塩でできた地層である。地質図Naviをいくら目をこらえて眺めてみても、塩の地層は出てこない。日本列島にはないのだ。

本書でもここまでいくつかの種類の堆積岩が登場してきた。泥岩、砂岩、レキ岩など、陸が削られてできた粒子が海のなかで留まってできたのが一般的な堆積岩である。実は、まったく異なるできかたの堆積岩もある。水のなかに溶けていた物質が、析出・沈殿して形成されたものだ。通常は、水が蒸発・濃縮して、溶解度を超えた鉱物が、析出・沈殿していくので、蒸発岩と総称されている。

蒸発岩に含まれる鉱物は、岩塩(NaCl)、石膏(CaSO4・2H2O)、方解石(CaCO3)などが代表的なものであり、実に多様である。現在の組成の海水が蒸発した場合、量的にも多く析出・沈殿するのは岩塩だ。本書では、とくにナトリウムのゆくえに着目しているので、蒸発岩に含まれる鉱物のうち、この岩塩に絞って考えてみる。

図(画像参照)には世界のおもな岩塩の産地を挙げていた。
皆さんのお気に入りの岩塩の産地は含まれているだろうか。