Meritocracy - do you think it exists?
The Myth of Meritocracy: Why It's Time to Rethink the American Dream
2024/3/18 Linkedin
●Conclusion: Time for a Rethink
While the idea of rewarding talent and hard work is not inherently bad, the "-ocracy" in meritocracy is where the problem lies. It's time to rethink a system that justifies an upper class based on these attributes and undermines the democratic process.
https://www.linkedin.com/pulse/myth-meritocracy-why-its-time-rethink-american-dream-amr-elharony-t5rxf
『TSMC 世界を動かすヒミツ』
林宏文/著、牧髙光里/訳、野嶋剛/監修 CCCメディアハウス 2024年発行
2024年の熊本工場(JASM)始動と第2工場の建設決定で、注目が高まるTSMC。創業時からTSMCの取材を続け、創業者モリス・チャンのインタビュー実績もある台湾人ジャーナリストが、超秘密主義の企業のベールを剥がす。
(以下文中の、強調印字は筆者による)
第3章 TSMCの文化とDNA より
真の「実力主義」を貫く秘密――社内政治や株主に左右されない企業統治
モリス・チャン(張忠謀、ちょう ちゅうぼう)は常々、企業統治についての考え方を表明している。本当の企業統治とはメリトクラシー(meritocracy)、つまり優れた業績を上げた者に仕事を委ねるという実力主義を取るべきだと。
何も特別なことを言っているようには思えない。仕事とは本来そうあるべきだろう。だが各社の企業統治や運営を実際に見てみると、たとえば会社を将来、誰に託すかと考えたとき、現実にはさまざまな要素が複雑に絡み合っているため、そのなかの1つの理由や要因だけで判断することも、純粋にその人の能力だけで決定することもできないはずだ。
一般的には、ある企業に家族が経営参加していようが法人の安定株主がいようが、あるいは株式が分散していようが特定の筆頭株主がいようが、最も有能で優れた業績を上げている人物を後継者に選ぶことは可能だ。だがこれはあくまでも理想論であって、実際には家族や安定株主、法人株主が自分の好みで人選をしたり、自分たちに反対そそうにない人物を後継者に指名したりするケースが散見される。後継者選びでは往々にして、実力や実績ではなく、コネがある人物や、株主に従順そうな、あるいは妥協してくれそうな人が候補に挙げられる。
後継者を選ぶ際、株式所有構造はもちろん重要な要素だ。たとえばある会社に大株主の一族や安定株主がいる場合は、彼らが人事権を握りたがることが多いし、持株比率が同じくらいの株主が複数いる場合は、互いに腹の内を探り合った結果、協議によって選出するしかなくなることもある。だが船頭が多すぎると最適な人選が行われなくなるばかりか、実力主義とはかけ離れた人選が行われる場合もある。
プロフェッショナル経営者が統治する企業では、台湾では端株の買収を委任状を通じて委任したり法人による代表者の任命が許可されているため、プロフェッショナル経営者が強権を振るって自分の主観で後継者を選ぶことにもなりやすい。また台湾の電子メーカーの多くがかなり前に株式上場を果たしているため、株式が分散して役員の持株比率が低くなっていることから、やはり実力主義による最適な後継者の選出が行われるとは限らない。
こうしたことから、台湾企業の事業継承文化に対するモリス・チャンの見解は、今日のハイテク業界にとって一考の価値があると私は考えている。最もパワフルな後継者に事業を継承できるのか。株式はどのように権利を行使すべきか、企業の事業継承にどう注目し、どう影響を与えるか。これらは間違いなく、台湾の企業統治における大きな課題である。
メリトクラシーが世界での優位性を守る
モリス・チャンがこれほどメリトクラシーを重視するのは、台湾に来る前に米国で豊富なキャリアを積んだからだ。TI(テキサス・インスツルメンツ)に入社した若き日のモリス・チャンが、会社のナンバー3に上り詰めまでのよりどころがTIのメリトクラシーだった。モリス・チャンは実力主義に立脚した米国の競争社会の中で、企業統治や事業継承の成功モデルを肌で感じ、これを台湾に伝えたいと願うようになった。
モリス・チャンは以前に、1972年にTIの半導体事業担当グループ・バイス・プレジデントに昇進してから、企業統治と事業継承について考えるようになり、米国企業のTIやインテル、GEそして欧州各社の事業継承方法について調べてきたと話している。
かつてのIBMやGE、今でいうならマイクロソフトやアマゾン、グーグルといったメリトクラシー重んじる企業で、実力主義を是とするプロフェッショナル経営者が企業経営のなかで見せる臨機応変さや進化の速さは、一般的な同業他社をはるかにしのいでいる、とモリス・チャンは言う。
またモリス・チャンは、優れた実績を上げたCEOは次期後継者を指名できることも知った。たとえばインテルCEOのゴードン・ムーアは引退前にアンドリュー・グローブを指名し、グローブはグレイグ・バレットを指名し、バレットはポール・オッテリー二を指名している。だが実績の上がらなかったCEOは後継者を指名できないため、その場合は取締役会が適時介入して主導権を握る。たとえば、オッテリー二は業績が芳しくなかったため、その後任は取締役会が指名したが、後任のブライアン・クルザニッチとボブ・スワンの業績も振るわなかったため、最終的には元最高技術責任者のパット・ゲルシンガーを呼び戻してCEOに指名せざるを得なかった。
モリス・チャンは台湾に来てから、台湾企業の統治と運営についてさらに多くを学ぶ機会を得たが、多くの会社はメリトクラシーには程遠いことも知った。雑誌「天下」の独占取材に応じた際、モリス・チャンは工研院に入ってから何度も挫折を味わい、多くの人からのけ者にされ、「上から」「下から」あるいは「横から」さまざまな圧力にかけられたと明かしている。
TSMCを設立したモリス・チャンは、メリトクラシーで企業統治するという夢を実現するため、企業文化の醸成に力を入れ、優れた業績を上げたプロフェッショナル経営者を社内から登用した
私は思うのだが、これからの米中半導体戦争やマクロ環境のなかで、半導体産業に影響を与え、その変革を促すことができる力の源も、モリス・チャンの言うメリトクラシーではないだろうか。