じじぃの「カオス・地球_302_白人がマイノリティになる日・第4章・英国・ブレグジット」

イギリス EUを離脱

動画 YouTube
2020年1月31日、イギリスは日本時間午前8時、EUヨーロッパ連合から離脱しました。
https://www.youtube.com/watch?v=QDcN8Y_K5OA

ロンドンで行われたEU再加盟を求める人々のデモ


ブレグジットのせいでイギリス衰退」論にだまされるな

2023年03月01日 ニューズウィーク日本版
<イギリスの現在の苦境を全てブレグジットのせいにする論調があるが、これは典型的な「EU残留派」のやり口だ>
https://www.newsweekjapan.jp/joyce/2023/03/post-269.php

WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日

【目次】
第1章………白人がマイノリティになる世界―ホワイトシフト
■第1部・闘争
第2章………ホワイトシフト前章アメリカ史におけるWASPから白人への転換
第3章………トランプの台頭―移民時代の民族伝統主義的ナショナリズム

第4章………英国― 英国保護区の崩壊

第5章………欧州における右派ポピュリズムの台頭
第6章………カナダ特殊論― アングロスフィアにおける右派ポピュリズム
■第2部・抑圧
第7章………左派モダニズム―一九世紀のボヘミアンから大学闘争まで
第8章………左派モダニズムと右派ポピュリストの戦い
■第3部・逃亡
第9章………避難― 白人マジョリティの地理的・社会的退却
■第4部・参加
第10章………サラダボウルか坩堝か? ―欧米における異人種間結婚
第11章……白人マジョリティの未来
第12章……「非混血の」白人は絶滅するのか?
第13章……ホワイトシフトのナビゲーション―包摂的な国の包摂的なマジョリティへ

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『WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日』

エリック・カウフマン/著、臼井美子/訳 亜紀書房 2023年発行

白人マジョリティが徐々に、白人の伝統的文化を身につけた混血人種のマジョリティへと変容していくモデル。
英国では2100年代に混血の人々がマジョリティになると著者カウフマンは予見する。

第4章………英国― 英国保護区の崩壊 より

2016年6月23日木曜日、英国ではEUからの離脱の是非を問う国民投票をおこなった。投票結果は衝撃的なもので、52%対48%で離脱が決定された。デイヴィット・キャメロン首相はじめ、投票行動の専門家やEU残留キャンペーンをおこなっていた人々は、残留派の勝利を確信していた。2014年のスコットランド独立を問う国民投票では、世論調査では両陣営は互角と示されていたにもかかわらず、スコットランド有権者は55%対45%という手堅い数字で断固たる独立拒否の姿勢を示していた。今回のEU離脱を問う投票では、残留派の活動家たちは、実利を重んじる英国の有権者たいは慎重を期すはずだと確信し、離脱の先にあるのは経済的に悲惨な結果だという自分たちの警告が決め手になると自信をもっていた。スコットランド国民投票のように、世論調査では両陣営の大接戦になることが示されていた。だが今回、英国の有権者たちは現状維持を拒否し、EU離脱を選択した。エスニック・マジョリティである白人の英国人の多くは、歴史的にもきわめて多い移民の数にいら立ちを募らせていた。彼らは、ブレグジットによって、自らが入国管理をおこなって移民を削減し、「国を取り戻す」機会を得られると確信していた。国民投票投票率は72%と高い、また4ポイントという、決着がつかないのではという恐れを払拭(ふっしょく)するに十分な差がついた。欧米の政治では、反移民をうたうポピュリズムは、時々起こるがなんとかなる類の厄介ごとだとみなされていた。だが、現在、それは実体経済に打撃を与え、エリートの真の関心事である利益追求に悪影響を及ぼすものとなっている。
   

東欧と移民

2004年、主にポーランドリトアニア、スロヴァキアなどの旧共産主義国から成る新たな10ヵ国がEUに加盟した。その時点まで、EU域内から英国に到来する移民はほとんどいなかった。スペインやギリシャなどの比較的貧しいEU南部の国から、わずかな移民が来ただけだった。そのため、政府への勧告をおこなう学識経験者のチームは、新たな加盟国からの英国への入国者は年間わずか5000人から1万3000人ほどだと予測していた。したがって、英国は、新たな東欧の加盟国からの移民について「暫定的取り決め」はおこなわないことにした。英国は、スウェーデンアイルランドとともにそのようにしたわずか3ヵ国のうちの1つであり、経済大国としては唯一、門戸を開いた国だった。結局、予測数の5倍から10倍の人数が到来し、2010年までには新米の移民は150万人に達した。この過程の初期のうちから、サザンプトンの労働党議員ジョン・デナムは、ニュー・レイバーの党首の認識が、党の基盤である労働者階級の実態からますます欠け離れていくことに心を悩ませていた。彼は、サザンプトンでは、東欧出身の移民によって、建設労働者の賃金が50%引き下げられ、病院や職業教育のための継続養育カレッジなどの地元のサービスが大いに圧迫されていると述べた。
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ブレグジット投票の余波

開票の結果、保守党が42.3%の得票率で勝利を収めた。これは2015年の数字よりも5.5ポイントの増加ではあったが、この結果は保守党の敗北とみなされた。その理由は、第一に、保守党は得票率を伸ばしたものの、13議席を失い、政権維持に必要な過半数議席を確保するために、結果的に北アイルランド民主統一党と取引を余儀なくされたことである。第二に、保守党が票を伸ばしたのはUKIP(英国独立党)の得票が13%から2%へと下落したこと、そしてスコットランド国民党の人気が著しく低下したことによるものである。残留派で注目されたルース・デイヴィッドソン率いるスコットランド保守党への急激な支持の高まりがなければ、テリーザ・メイ(元首相)は政権を確保することはできなかっただろう。選挙直後、デイヴィッドソンは、メイに「ソフト」・ブレグジットに舵を切らせることを明らかにした。つまり、移民規制を犠牲にして経済を優先させる政策をとるということである。
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ここで、英国選挙研究(BES)のデータを用いて25歳未満の若者と65歳以上の高齢者を比較した図を見てみよう。2001年には、65歳以上の高齢者の80%と25歳未満の69%が移民削減を求めていたが、2014年までには、この数字は65歳以上では76%、25歳未満では40%へと変化していた。結局のところ、多様性に富み、急速に変化していた2000年代の英国で育った若者たちは、文化的に同質的な英国を成長期の記憶にとどめる旧世代よりもリベラルなのである。ブレグジットは、ミレニアル世代の政治的覚醒の瞬間の証拠となるものかもしれないし、彼らの政治活動を定義するのがこのブレグジット問題なのである。BESのデータによると、2005年には65歳以上の高齢者と25歳未満の若者の労働党支持率はどちらも40%となっていた。2009年には若者の労働党支持率はここから6ポイント上昇した。そのあと、2014年までには13ポイントまで広がり、2017年の総選挙では27ポイントになっていた。
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英国がEUからの人々の継続的な流入を認める「ソフト・ブレグジット」でも、英国経済の再生は実現可能である。だが、英国が移民を完全に管理する「ハード・ブレグジット」でも、移民――移民は自国生まれの英国人より効率よく低賃金で働くとみなされている――を求める経済界や公共セクターの圧力をかわすことはできないだろう。

すべての党と大半の有権者が望むのは英国の堅調な景気拡大だが、それがうまく続いている限りは、移民を1990年代の水準まで削減することは困難だろう。このような世界では、ブレア政権以前の状態に戻るという離脱派の有権者の望みは容易に容易に打ち砕かれ、裏切りを訴える叫びが空を満たすことになるだろう。2017年5月、私はYouGov-LSE調査でブレグジット後でも移民の数に変化が見られなかったら次に誰に投票するかという質問をおこなった。その回答データが示したのは、2017年に保守党に動いた2015年のUKIPの票は、またUKIPに戻り、この離脱を訴える党が以前の強さを取り戻すということだった。もし「ソフト・ブレグジット」の結果、移民が多くなったなら、この傾向はさらに強まるだろう。ブレグジットの確定によってUKIPは無用のものになったが、これでポピュリズムが永久的な打撃を受けたと思っている人々は、考え直すべきである。2017年に2党支配に戻ったことは、決して新たな常態などではなく、右派ポピュリスト再生の不安定な前触れなのかもしれないのだ。