じじぃの「カオス・地球_286_気候を操作する・第4章・CO2除去(CDR)」

Apollo 13 (1995)- Making/Solving The CO2 Problem Filter In The LEM

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=B_LD5PkV6rI

Apollo 13 CO2 adapter


Apollo 13 Day 4, part 4: Building The CO2 Adapter

2021年4月16日 twitter.com
Apollo 13: Scrubber Time!
On Wednesday, April 15, 1970, just after 7:20 a.m. CT, astronaut Joe Kerwin started to walk Jim Lovell through the build process for the CO2 adapter.
https://twitter.com/the_cosmosphere/status/1382797375916417027

地球ドラマチック 「地球“冷却化”作戦!」

2021年12月11日 NHK Eテレ
世界各地で起きている異常気象。地球の温暖化は危機的なレベルに到達している。
そんな中、科学者たちは革新的な挑戦を続けている。大気中から二酸化炭素(CO2)を取り出し、地下の岩盤に流して地球に戻すプロジェクト。二酸化炭素を資源として、セメントなどを作る技術。さらに化学物質や微粒子を大気にばらまき、人工的に気候を変えたり、太陽光を遮ったりして、地球全体を冷やすアイデアまで登場した。
アメリカ2020年)#SDGs

1970年、月面着陸に向かっていたアポロ13号で事故が発生します。

宇宙飛行士たちは想定外の深刻な問題に直面します。
呼吸で出る二酸化炭素を取り除く必要がありました。
呼吸のたびに、船内の二酸化炭素の量は増え、空気の毒性が強まります。
宇宙飛行士たちが生き延びられたのは、空気ろ過装置に工夫を加えたことで増えた二酸化炭素を除去できたからでした。

ろ過装置の中ではマイナス電気を帯びたフィルターが二酸化炭素を分離・吸着し、空気から取り除きます。

このような装置を地球の大気に応用できないのでしょうか。

https://www.nhk.jp/p/dramatic/ts/QJ6V6KJ3VZ/episode/te/M74272J8W3/

気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」

【目次】
はじめに
第1章 深刻化する気候変動
第2章 不十分な対策と気候工学の必要性
第3章 気候工学とは何か―分類と歴史

第4章 CO2除去(CDR)

第5章 地域的介入
第6章 放射改変(SRM
第7章 放射改変の研究開発―屋外実験と技術
第8章 ガバナンス
第9章 人々は気候工学についてどう思うか
第10章 日本の役割

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『気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」』

杉山昌広/著 KADOKAWA 2021年発行

第4章 CO2除去(CDR) より

生物資源を活用するCO2除去
前章では、気候工学の位置づけについて説明しましたが、この章ではその中でも特にCO2除去について解説します。

繰り返しですが、CO2除去は異なる様々な手法の総称です。一つ一つはなかなか理解がしにくいですが、原理で分類すると分かりやすいです。ここでは、木材や土壌などのバイオマスを活用する手法、自然の無機化学反応を利用する手法(化学風化の促進、海洋のアルカリ性化など)、また工学的な手法(直接空気回収)に分けて、原理から考えています。

最初の種類は生物の吸収を活用する手法です。植物は光合成によって大気中のCO2を回収し、炭素分として体内に取り込んでいます。何もしなければ取り込まれた炭素は植物が分解されることによって大気に戻ってしまいますが、これを大気に排出されないように長期的に保存できればCO2除去になります。気候工学の歴史の節で述べた鉄散布による海洋肥沃化もこの原理に基づきます。海洋に栄養分である数を散布することで、光合成を促進するのです。

保存の仕方は実に様々な方法が考えられます。植林をして森林を育てて炭素を吸収し、そのまま保つことも有用です。ただし、植林が成長しているときだけ吸収していることに注意が必要です。育てた木材などを空気なしで加熱して、炭を作り保存するのも1つの方法です。炭(バイオ炭)にすることで、分解されることもなく長期的に保存ができるようになります。

より込み入った方法は、CCS付きバイオマス・エネルギー(BECCS)です。バイオマスをエネルギーとして使う場合、発電所バイオマスを燃やしたり、バイオマスバイオエタノール製造のために発酵させたりする際に、バイオマスの炭素分がCO2となって大気に排出されます。これをCCSで回収・貯留することで、CO2除去できることは、歴史の節で述べたとおりです。

宇宙ステーションでも使われる空気からのCO2回収装置
CCS付きバイオマス・エネルギーは自然に依存する仕組みでしたが、もっと技術的に解決する方法はないのでしょうか。

実は、技術的に大気からCO2を除去する方法は存在します。直接空気回収と呼ばれる手法で、例えばアルカリ性の物質を使い、弱酸性のCO2を回収するというものです。長年にわたって閉鎖空間のCO2濃度提言のために利用されてきました。原子力潜水艦国債宇宙ステーションでは、長期にわたって閉鎖空間で人間が生活します。人は呼吸のために酸素を吸い、CO2を吐き出す必要性があります。こうした閉鎖空間では(電気分解などによる酸素生成装置で)酸素は常に供給されますが、人が出し続けるCO2はたまる一方であり、濃度が高くなり過ぎると人への健康と生命に影響を及ぼしかねません。そこで直接空気回収を用いてCO2濃度を低下させるのです。

しかし、原子力潜水艦国際宇宙ステーションと、誰もが触れる大気では規模や使える予算は全く違います。国際宇宙ステーションに滞在するのは普通3~6人です。しかし、70億人以上の人口が、呼吸だけでなく化石燃料だけでなく化石燃料森林伐採で出すCO2の量となると、比較にならないほど多いです。また、潜水艦も宇宙ステーションも、国家の威信がかかった一大プロジェクトであり、乗組員1人あたりに費やす予算は大きくなります。これに対して、日本国民全員どころか世界中の人々全員を対象にする技術は、安価でないと成立しません。

CO2以外でも、大気から物質を回収するのは、決して夢物語ではなく日常茶番時に行なわれています。例えば、現代の農業では化学肥料は(量は別としてほぼ)必須ですが、この肥料に含まれる窒素の多くは大気から回収されたものです。ハーバー・ボッシュ法と呼ばれる化学反応によって大気の窒素と水素からアンモニアが作られ、窒素肥料が作られているのです。

しかし、窒素は大気の中で78%を占める、豊富な分子です。一方でCO2は大気中で0.04%でしかありません。これでは、技術的にCO2を回収できたとしても法外な金額になり、とても地球温暖化対策として使えないことが予想されます。

実際、少し前のことになりますが、私自身大気からCO2を回収する話をすると、工学者からは非効率でエネルギーがかかるので、発電所や工場の煙突からCO2を取るべきだという批判を受けました。しかし、直接空気回収の効率は思ったより悪くありません。熱力学的に言えば、必要なエネルギー量など、その困難さは濃度の対数に依存します。誤解を恐れずに言ってしまえば、78 ÷ 0.04=1950倍のエネルギーがかかるのではなく、1950=1.95 x 103に依存し、数倍のエネルギーで済みます。しかし、それでも難しいことには変わりはありません。