氷山も溶け・・・南極で18.3℃ 史上最高気温を更新か(20/02/08)
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=I1vYIYla5CU
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鼎信次郎「今世紀の排出が1000年先の未来を決める?! -ティッピングとは何か?」
2020年06月20日 岩殿満喫クラブ
2016年11月21日東京大学伊藤国際学術センター伊藤謝恩ホールで行われた環境省環境研究総合推進費戦略的研究開発プロジェクトS-10公開シンポジウム『地球温暖化対策の長期目標を考える-パリ協定の「1.5°C」、「2°C」目標にどう向き合うか?』発表資料です。
●ティッピングポイント(TP)とは?
それまで小さく変化していたある物事が、突然急激に変化する時点を意味する。
https://hiki.blog.jp/archives/56887985.html
気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」
【目次】
はじめに
第1章 深刻化する気候変動
第2章 不十分な対策と気候工学の必要性
第3章 気候工学とは何か―分類と歴史
第4章 CO2除去(CDR)
第5章 地域的介入
第6章 放射改変(SRM)
第7章 放射改変の研究開発―屋外実験と技術
第8章 ガバナンス
第9章 人々は気候工学についてどう思うか
第10章 日本の役割
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『気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」』
杉山昌広/著 KADOKAWA 2021年発行
第1章 深刻化する気候変動 より
弱者を襲う地球温暖化
また、「想定外」が人によって大きく違うということも、非常に重要です。人々が受ける影響は住む場所や状況などによって大きく異なるのです。地球温暖化の被害と聞くと、日本人も世界中の人も同じように似たような被害を受けるという印象を持つ方もいるかもしれません。これは間違いです。
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「想定外」の影響の例として、海面上昇を考えてみます。21世紀末の海面上昇は様々な理由で起こります。最も影響が大きいと考えられるのは、温度が上昇することによって海水が膨脹する熱膨脹です。これに加えて、高山の氷河の融解やグリーンランドや南極といった氷床の融解が海面上昇に拍車をかけます(北極は海に浮かんでいる海氷で構成されているため、コップに浮いた氷が溶けても水の量が増えないのと同じように、北極海の氷が溶けても海面上昇には影響しないので注意してください)。特に、南極氷床の崩壊は急速に海面が上昇すると考えられています。
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問題はこうした海面上昇がもっと速いスピードで起こるかどうかです。南極を見れば様々な可能性があります。約2メートルの厚さの海氷で覆われている北極と違い、南極は大陸の上に数千メートルの氷が乗っています。南極大陸の上に積もった雪は氷になり、氷河になり、流れ落ちて、やがて海に戻ってきます。南極の周辺では氷河が膿に突出しているところがあり、時々そこが崩れて氷山となり、海に流れ出ることがあります。2002年に大規模に崩壊したラーセンB棚氷については覚えていらっしゃる方もいるでしょう。
南極の氷床の端は少し詳しい説明が必要になります。氷床が大陸の上に乗っていると書きましたが、これは場所によって違いがあります。海の知覚では氷がはみ出していて、氷の下では陸ではなく海底になっているところもあります。氷はさらにはみだし、海面辺りで突き出したような形になっています。これを棚氷といいます。この棚氷は地球温暖化の影響を受けやすく、融解・崩壊する可能性があります。棚氷が融解することによって、その後ろにある氷河も縮小する可能性があり、これにより急激に海面が上昇するかもしれません。
最近の研究で一部の科学者は警戒感を強めています。イギリスのエクセター大学のティム・レントン教授らは、2019年に国際科学誌『ネイチャー』において、「想定外」の地球温暖化の危機について訴える論文を発表しました。この論文で特に注目されたのが南極氷床の融解です。
IPCCの過去の報告書を振り返り、2001年から2018年までどのように専門家の南極氷床融解リスクが変化したかを調べました。新たな観測データやコンピューターや理論の進歩など、研究は着実に進んでおり、これに伴って専門家の意見も変わっているはずです。
リスク評価の時間的な変遷を見ると、2001年では多くの専門家が、2℃の地球温暖化では南極氷床の融解といった気候のティッピング・ポイントはほとんどないとしました。
しかし、2009年では一歩進んで中庸と評価し、2014年ではさらにリスク認識は高い方に近付きました。この傾向は2018年の報告者でも続いています。
これはショッキングな現実です。いうまでもなく南極は厳しい環境です。南極にある日本の昭和基地で日が昇らない極夜が年間45日ほどあり、南極の真冬の最低気温はマイナス30℃~40℃になるほどです。つまり、どれだけ衛星観測や機械での観測が進むようになっても、データを収集するのは非常に厳しい環境で、その研究の進み方はどうしてもゆっくりにならざるを得ません。
しかし、それでも17年の間にリスク認識は大幅にふかまrました。先ほどのIPCCの海面上昇シナリオより早いタイミングで南極氷床の融解が進む可能性は否定できないのです。太平洋の島国だけでなく、先進国もうかうかしていられないのです。
普通の「危機」と異なる気候変動
「危機」といっても気候変動は、いわゆる普通の「危機」とは大きく異なる点がたくさんあります。また、その他の環境問題と比べてみても違うところがいくつかあるので、その点について誤解なきよう説明したいと思います。
イギリスの新聞『ガーディアン』は、2019年5月から「気候変動」という言葉を紙面で使わないことを決定しました。そのかわりに使うことにしたのは、「気候危機」ということあです。「地球温暖化」や「気候変動」といった従来の言葉では十分に問題の本質を伝えることができず、また十分な対応も喚起することができません。そうした判断がこの決定の背景にあるでしょう。
「気候危機」という言葉は、ドラスティックで劇的な対応を示唆します。
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対策の観点から見ても、地球温暖化はユニークな特徴があります。一度大気に出てしまったCO2は大気中に長期にわたって残るため、それに伴い一度上昇した気温は超長期の1000年間ぐらいは低下しません。新型コロナウイルスによって工場の操業が止まり、世界各地で大気がきれいになったという報告がありますが、これは大気汚染の物質は長くても1週間程度で地上に落ちてくるからです。
地球温暖化は大気汚染とは大きく異なり、一度気温が上がったら、(人工的に気温を下げない限り)温度上昇は1000年の規模でそのまま残るのです。既に地球の平均気温は約1℃上昇していますが、我々もまた私たちの子供世代、孫世代もこの暖まった地球から逃げることはできません。つまり気温は元に戻らないのです。
こうした特徴を持つ地球温暖化ですが、気候工学には伝統的な対策では不可能な貢献です。それは一度上昇してしまった気温を低下させるとうことです。パリ協定では1.5℃や2℃という気温上昇目標が掲げられていますが、これを超えてしまった場合は、何もしないと千年単位で上がりっぱなしの温度を放射改変を用いれば直接的に下げることができますし、CO2除去でも時間がかかりますが大気中のCO2濃度を下げ、長期的に下げることができます。こうしたシナリオでは一時的に気温が目標を超過してしまいますが、それでも気温を下げることで気候変動の影響を抑えることができるかもしれません。
気候変動の問題は甚大です。これについて世界は手をこまねいているわけではありません。再生可能エネルギーのコストの低下と大幅な普及、電気自動車のイノベーションの加速など素晴らしい光は見えてきています。ただ、残念ながらこれらの対策の規模と速さは気候科学が示す必要な水準に達していません。次章ではこの点を詳しく見ていきます。