じじぃの「カオス・地球_280_地球を掘りすすむ・第4章・コアはなぜ鉄の塊なのか?」

小惑星帯~あなたの知らなかった事実~

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水素の元「水」はどこからきたのか?


地球の誕生と進化の鍵は水~地球上の水はどこから来て、どこへ行ってしまったのか

みらいぶっく 廣瀬敬先生
太陽系の惑星形成初期には、地球に水はありませんでした。それが、木星が形成されると、その重力の影響で状況が全く変わりました。木星の重力攪乱のせいで、氷に覆われた微惑星が隕石となって地球に降り注ぐようになったのです。こうして太陽から1AUぐらいの場所に、水を持った惑星が形成されました。これが地球です。

マグマの海と原始の大気を図にしました。マグマの海の中には溶けた金属鉄が含まれていました。この金属鉄が地球の中心に落ち込んでいき、金属の核(コア)を形成しました。
https://miraibook.jp/researcher/mp1302

『地球を掘りすすむと何があるか』

廣瀬敬/著 KAWADE夢新書 2022年発行

第4章 地下2890~6370km 鉄から成る地球の中心「コア」の世界 より

コアはなぜ鉄の塊なのか?

マントルは岩石でできていましたが、コアは鉄を主体とする金属でできています。マントルがいくつかの層に分かれていたように、コア(核)も液体の外核と固体の内核に分かれています。つまり、高温で流動的な鉄の真ん中に、固体となった鉄の玉がある、という状態。この構造については後述しますが、まず、その素材について見ていきましょう。

そもそもなぜ、岩石でできた地球の真ん中に、鉄の塊があるのでしょうか。

地球の原材料物質は太陽の組成を参考に推定されています。「太陽は水素とヘリウムからできているのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そのとおりです。太陽光スペクトルを分析すると、太陽の成分のほとんどが水素とヘリウムで、その他の元素はわずか0.1パーセントです。しかし、水素やヘリウムは凝縮しにくい、つまり固体になりにくい元素なので、惑星の材料にはなりません。固体になりやすい元素(難揮発性元素)については、地球も太陽もたいして変わらないのではないかと考えられているのです。

その根拠は、隕石です。火星と木星の軌道の間に小惑星帯というエリアがあり、地球にやってくる隕石のほとんどはここからやってきます。

この隕石の組成を見てみると、主に、マグネシウム、鉄、シリコン(ケイ素)、アルミニウム、カルシウム、そして酸素で構成されていることがわかります。そして大事な点は、固体になりやすい元素については、始原的な隕石の組成は太陽の組成ときれいに一致します。

太陽と小惑星帯小惑星は地球に降ってくると、隕石と名前が変わります)の化学組成が同じなら、その間にある地球の組成も、とうぜん同じだろうと考えられるわけです。7章で触れますが、他の岩石惑星(水星、金星、火星)についても同様です。

水素とヘリウム以外の太陽をつくっている元素の中でも、鉄はかなり多くの割合で含まれていて、なおかつ、金属と酸化鉄のふたつの状態をとりうる物質です。

マグネシウム、アルミニウムやカルシウムは酸化されやすい、つまり酸素と結びつきやすく、逆に還元して金属にするほうがたいへんです。

たとえば、アルミニウム製の1円玉の製造原価は3円程度といわれていますが、それは、ボーキサイトから還元して金属アルミニウムにするために、それだけエネルギーが必要だからです。この反応は、自然界ではほとんど起きません。マグネシウムやカルシウムも同じです。ところが、鉄だけは比較的簡単に金属にできます。そのため、酸化鉄は、マントルに、金属鉄はコアに、とその両方が存在しています。金属鉄は、比較的軽い元素である酸素と結合している酸化鉄や二酸化ケイ素などの酸化物よりもずっと密度が大きいのです。

それで、もともとドロドロに融けていた地球が固まっていくときに、金属鉄だけが沈んでいった、つまり中心に集まったというのが、コアの形成の仕組みです。

コアの組成からさまざまな謎が解ける

また、地球の過去だけでなく、地球の現在や未来について知るためにも、コアの組成を確定することは大きな意味があります。

コアの正確な組成がわかっていないため、じつは、コアの温度が確定できていません。地球深部の温度の推定には化学組成の情報が不可欠なのです。

コアは、外核内核、2層になっていると前述しました。外核が液体、内核が固体です。

ということは、外核内核の境界面では、コアを構成する物質の融点になっているはずです。もしも物質の化学組成が確定すれば、融点も確定するので、この境界面の温度がわかります。しかし、化学組成がわからなければ。融点もわかりません。

物質の融点は、不純物によって決まるといってもよいくらいで、不純物によって大きく変わります。不純物の比率が大きいほど融点は下がります。特に水素や炭素のような軽い元素は、それをどのくらい含んでいるかで、1000℃くらいは簡単に差が出てしまうのです。ですから、つまりコアの正確な温度を知るためには、化学組成を確定して融点を知る必要があるのです。
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そういった意味で、この地球のコアの組成を決定する、具体的には鉄とニッケル以外の不純物がなんであるか突き止めることは、地球科学のいま、もっとも重要な課題のひとつだと思っています。