摂食嚥下のメカニズム
嚥下の仕組み
耳鼻咽喉科Q&A:のど編
Q3: 最近、食事中によくムセるようになりました。時々自分の唾液で咳き込むことがあります。老化でしょうか。
A3: 食べ物や唾液、逆流した胃液などが誤って気管から肺に入り肺炎を引き起こす病気を「誤嚥性肺炎」といいます。高齢者になると誤嚥の危険性が高くなり、誤嚥性肺炎になる人が増加します。なぜ高齢になると誤嚥の危険性が高くなるのでしょうか。
http://www.kamimura-jibika.or.jp/q_and_a/throat_03.html
すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険
【目次】
はじめに
第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術
第5章 人体を脅かすもの
おわりに
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『すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険』
山本健人/著 ダイヤモンド社 2023年発行
第1章 あなたの体のひみつ
喉の優れたしくみの功罪 より
「死因の第6位」は意外な病名
2021年の死因順位を見ると、約4分の1を占める1位のがん(悪性新生物)をはじめ、心疾患や老衰など、誰もがよく知る病気が並んでいる。この中で特に知名度が低いと思われるのは、6位の「誤嚥(ごえん)性肺炎」である。
国立国語研究所の調査によれば、「誤嚥」という言葉の認知率は50.7パーセントと低く、発音のよく似た「誤飲(ごいん)」と誤解している人は13.9パーセントいるという。
「誤飲」は、食べ物でないものを誤って飲み込んんでしまうことだ。おもちゃや電池、たばこを小児が飲み込んだり、高齢者が義歯(入れ歯)を飲み込んだりするケースが多い。
一方、「誤嚥」は全く別の現象だ。食べ物や飲み物が空気の通り道(気道)に誤って入ってしまうことを指す。誤嚥の「嚥」は「飲み込む」という意味を持ち、何かを飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」という。いずれも、日常生活ではあまり使われない医学用語だ。
実は私たちの体は、飲食物と空気を同じ入り口から取り込み、そのすぐ後で2つに選り分ける、という煩雑な仕事を日常的に行っている。
喉の奥には、気道に向かう道と、食道に向かう道が二股にわかれている。食べ物や飲み物を飲み込むときは、その瞬間に軌道の入り口のフタが閉じるため、食道側にしか流れない。このフタを「喉頭蓋(こうとうがい)」という。「蓋」は「フタ」という意味だ。
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若くて健康な人であれば心配ないが、高齢になるとそうはいかない。誤って気道に入ってきた異物を排出する機能が衰えているからだ。
その上、年齢とともに飲み込む力は落ち、飲食物と空気の「選別ミス」自体も増える。食べ物や飲み物が、口腔内の細菌と一緒にしばしば肺に入り込み、そこで肺炎を起こしてしまう。悪化すれば命に関わることもあるのだ。こうして起こるのが、誤嚥性肺炎である。
「誤嚥」というリスクは、空気と飲食物を「同じ穴」から取り込む私たちが背負う、1つの宿命なのである。
もっとも恐ろしい「フタの感染症」
気道の入り口にある高性能の「フタ」、すなわち喉頭蓋は、私たちが食事をする上で必須の存在だ。だが、何らかの理由でこの「フタ」が閉じたままになってしまったら――。私たちは窒息死してしまう。
「フタ」が分厚く晴れ上がり、気道をふさいでしまう病気を「急性喉頭蓋炎」という。喉に起こる感染症の中でも最も恐ろしい、あっという間に人命を奪う病気だ。
ところが、どれだけ口を大きく開けても喉頭蓋は見えないため、その腫れを直接観察できない。よって「喉が痛くてつばが飲み込めない」と訴える患者に出会ったとき、それが急性喉頭蓋炎なのか、風邪や喉頭炎のような他の病気なのかを医師は判断しなければならない。前者の可能性があれば、緊急での精密検査や抗菌薬治療が必要になるからだ。
急性喉頭蓋炎はこれまで多くの子どもたちが呼吸困難に陥らせ、命を奪ってきた。その原因菌の多くは、インフルエンザ菌b型(ヘモフィルス・インフルエンザb)と呼ばれる細菌だ。「インフルエンザ」という名前がついているが、インフルエンザの原因になるインフルエンザウイルスとは全く別物である。前者は細菌、後者はウイルスだ。