じじぃの「カオス・地球_251_人類の終着点・トッド・民主主義・最悪の事態の始まり」

Capitol riots: How a Trump rally turned deadly - BBC News

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6quOC6McLZU

2021年1月6日、米ワシントンDCの連邦議会議事堂


米国の民主主義は私の目の前で死んだ…議会襲撃事件を潜入ジャーナリストが渾身ルポ

2022.11.2 ダイヤモンド・オンライン
一見すると堅牢にも見える民主主義は、私たちが信じているほど盤石ではなく、意外な脆弱性をはらんでいる。
アメリカで起こった“トランプ現象”を追いかけながら、民主主義が、どのように道を踏み外し、どのように機能不全に陥り、崩壊の危機に直面するのかを考えていこう。
https://diamond.jp/articles/-/312133

朝日新書 人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来

【目次】
はじめに

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて

 エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
 フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
 スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
 メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
 マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学
 岩間陽子×中島隆博 対談

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『人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来』

トッド、フクヤマ、ロー、ウィテカー、ガブリエル/著 朝日新書 2024年発行

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて より

エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている

【輝かしい「民主主義」の時代は、もう戻ってこない】
――あなたは自由民主主義の価値を支持する知識人の1人です。たとえ自由民主主義が、今現在失われているとしても、失地回復するチャンスはまだあると思いますか。あなたがおっしゃったリベラルな寡頭制からの回帰の面から考えるといかがでしょうか。
   
それは私が、20年ほど前から考えてきたことです。まさに私が『帝国以後』を書いたのは、今から20年ほど前でした。この本はアメリカについて書いた本であり、イラク侵攻の少し前に出版されました。そして、この本には、私がここまでに話してきた多くの傾向が書かれています。

寡頭政治への推進、アメリカの「不労所得者国家」状態、貿易赤字……。そして、アメリカという国自体が必要と見せかけて世界に混乱を生み出す傾向などなど。

しかし、この本はある種の希望で終わっています。つまり、アメリカが再び民主的な価値観に戻り、何とか回復してほしいという希望でした。

そして、トランプ現象が始まったときも、私はトランプ自身でも、共和党でもなく、「覚醒した民主党」が新たな原動力のようなものを生み出すのではないかという期待を持っていました。
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アメリカで観察されているようなこの歴史的大変革は、私が言うところの「元に戻せない」ものです。歴史が続く限り、後戻りはできません。

私たちが何に対処しなければならないのか、正確にはわかりません。しかし、「以前のような民主主義に戻れるかもしれない」「戻せるかもしれない」とい考えは、妄想です。

つまり、私たちは、新しいことに備えなければなりません。戦争とは関係なく、私たちはもっと悪い事態に備える必要があるでしょう。

アメリカは「ニヒリズム」に支配されている】

今のアメリカに典型的なのは、プロテスタントという中核の完全な崩壊です。現在、アメリカで起こっていることを理解するためには、プロテスタント文化がアメリカやイギリスにおいて「いかに重要であったか」を理解する必要があります。

イギリスでも、プロテスタントの崩壊は並行して進んでいます。これは、最終的に、プロテスタント的価値観の完全な消滅という災厄にまで行きつくでしょう。つまり、それは「労働論理」の消滅です。経済学における道徳の基本概念の消滅を意味します。そしてこのことが、すべての経済的機能不全の理解を可能にします。

これにより、アメリカを支える宗教的な核が消滅したため、過去に戻ることはないと予測することが可能になります。これが、一般的な歴史であり、経済史です。

しかし今、支配者層、ワシントンの人々、この世界をリードする人々、ジョー・バイデン、彼の安全保障顧問のジェイク・サリバン、トニー・ブリンケン、ヴィクトリア・ヌーランド、そして彼女の夫であるロバート・ケーガンといった人々は無責任であり、恐ろしい存在です。

私にとっては、西側がウクライナ戦争に勝つか、ロシアが戦争に勝つかというのはどうでも良いのです。もっと一般的に言うと、西側のネガティブな動きを考慮すれば、ウクライナ戦争とは関係なく、アメリカのさらなる悪化に備えなければならないということです。

無責任なインテリやケンブリッジの学者のようなことを言って申し訳ないですが、私はフランス市民として、そして世界市民として、私たちの前にある歴史の動向に、心から怯えているのです。
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【「最悪の事態」はまさにこれから起こる】

コロナ禍の時期、西洋には、必要な医薬品や機械、マスクなどを作ることができないことがわかり、私は本当に驚きました。フランスでは、乳幼児の死亡率がわずかに上昇しましたし、大きな政治的な機能不全があり、警察の取り締まり姿勢は強硬になっています。アメリカでは状況がもっと悪く、バイデンが当選した後、銃乱射事件や連邦議会議事堂の襲撃事件が起きました。

私たちは、最悪の事態をすでに目の当たりにし、今こそ回復し始めるときだという考えを持っています。しかし、状況はまったくそうはなっていない。私たちにとっての最悪事態はまだ来ていないのです。

これこそが、私が恐れていることです。最悪の事態についての意識の欠如こそ、恐れるべきです。
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【本当の意味で「帝国以後」の世界がやってくる】

アメリカ人は、間違いを犯していると思います。アメリカの新聞や批評は、中国の人口状況などに関して破滅的な未来を予測した記事で埋め尽くされているのは知っています。
たしかにこの人口状況は、中国を窮地に陥れ、中国が世界を支配する未来を遠ざけるでしょう。

しかし中国が、今後10年、15年の間に南シナ海や台湾問題で軍事的にアメリカを凌駕することは防げないと私は考えています。しかし人口動態を見れば、私たちは、新たな不均衡を心配する必要はないことがわかります。
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しかしアメリカはそうはいきません。なぜなら、食料、機械、生産、生活水準を世界に依存しすぎているからです。つまり世界には不安定な部分が残ることになります。その不安定な一点とは、アメリカなのです。

奇妙な考えだとお思いでしょうが。私が言っているのは、人々の考え方とはまったく逆の考え方かもしれません。人々がロシアを嫌っていることは、知っています。私はそれを知っていますし、日本のこともよく知っています。フランスの状況も日本と同じだと言えます。私は、フランスでも日本でもどうかしていると思われていると思われているでしょう。

でも、私にとって、問題はアメリカなんです。ロシアは問題ではない。ロシアはそれほど強力ではありません。ロシアは、自分たちに必要なものを自分たちで生産しています。世界に依存しません。しかしアメリカは、非常に危険な旅の途上にあります。