じじぃの「カオス・地球_250_人類の終着点・トッド・ウクライナ・ロシアを好む国々」

[NHKスペシャル] 岐路に立つ“民主主義” 権威主義拡大はなぜ | 混迷の世紀シリーズ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=ncmfGSBlS_Q

民主主義国と権威主義

赤と橙色が広い意味で「独裁」に分類される

世界人口の71%が「独裁に分類される国に住む」という衝撃

2022/3/8 Yahoo!ニュース
ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射による威嚇、中国による台湾侵攻の恐れ――。
強権国家による民主主義体制への圧迫が続く。国際社会を大きく「民主主義」対「独裁」の構図で見た場合、人口の合計はそれぞれ「23億人」対「55.6億人」となり、世界の多くが「独裁」側に住んでいるということになる。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f449889e876d8789b92f05ec4388f92cdd2d608c

朝日新書 人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来

【目次】
はじめに

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて

 エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
 フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
 スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
 メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
 マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学
 岩間陽子×中島隆博 対談

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『人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来』

トッド、フクヤマ、ロー、ウィテカー、ガブリエル/著 朝日新書 2024年発行

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて より

エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている

ウクライナ戦争が明らかにした「西側の失敗」】
――まず、現在の世界情勢について、お聞きしたいと思います。ウクライナでの戦争は依然として続いており、アメリカ、イギリス、EU、日本などの西側諸国は、多額の軍事、財政、人道支援を行っています。
しかし、報道を見る限り、戦況は依然として流動的です。あなたは著書の中で多くの国が中立的な立場にとどまることさえせずに、ロシア寄りに傾いていると述べています。
また、あなたは世界的な対立を「西側対東側」ではなく「西洋対世界」であると表現しています。国際秩序に反するロシアの侵略に、怒りを感じている日本人にとっては、非常に驚くべきことでしょう。
こうした動きを踏まえて、現在の国際情勢をどのように受け止めていますか。また、この戦争は国際秩序のどのような変化を象徴していると思いますか。
   
まず、現在の状況からお話ししましょう。戦争によって、私たちは現実をより良く認識するようになったと思います。とくに経済の現実です。

もちろん、戦争は恐ろしいもので、ウクライナの人々は、私たちが想像するのも難しいような苦しみを味わっています。多くの人々が殺され、負傷し、傷害を負っています。戦争は嘆かわしいものです。

また当然ながら、戦争はロシアの侵攻によって始まりましたので、人々は「ロシアは悪者」「ウクライナ人は善人」と考える傾向を持っています。

しかし、私が基本的に関心を持っているのは、経済的な観点から見た「現実への落とし込み」です。

私たちは、西側諸国――あなたがおっしゃったようにアメリカ、EU、イギリス、日本など――が、GDPの面で途方もない経済力を持っているという考えに取りつかれていました。

たしかに、ロシアのGDPベラルーシGDPを合わせると、世界の西側のGDPの4.9%くらいだったと思います。

しかし今、私たちが目の当たりにしているのは、戦争がしばらく続いているということ、そして、西側諸国は信じられないほどの生産力不足に陥っており、アメリカは同盟国とともに、ウクライナ軍に必要な155ミリ砲弾を供給を供給できていないという事実です。ミサイルなども同様です。

今、私たちが直面しているのは、もはや存在しないも同然と考えていたロシア経済や、ロシアの産業システムの力です。実際、ロシアの産業は西側諸国全体よりも生産性が高いようです。しかも、ロシアがより多くの武器を必要となった場合には、中国には提供できる力があります。
これは、この戦争の「最初の教訓」となりました。

つまり、西欧諸国に対する私たちの認識は、バーチャルで、架空で、あるいはまったく非現実的であるという教訓です。

ごく当然のことですが、これこそがグローバル化の要点でした。なぜなら、グローバル化は、現実には工場を海外に押し出し、西側諸国から実際の生産手段を奪ったからです。

私にとっては、これが中心的かつ本当に深刻な問題のように思えます。

【西洋はもはや、「世界の嫌われ者」である】

あなたは「西洋対世界」と、私がこの1年以上、言い続けてきたことをまとめてくださいました。ただまずはっきり言いますが、私は自分自身を西洋人だと思っています。私はフランス人で、イギリスともつながりがあります。だから、私が西洋人の視点から離していることは、念頭に置いて下さい。

そのうえで、私たち西洋人が今気づいたことは、「西洋は、私たちが思っていたほど好かれていない」という事実です。

ここでは、アメリカを例に挙げましょう。ここ数年、「世界中の人々はアメリカを嫌っており、ロシアの勝利を心から望んでいる」ということが、少しずつ見えてきました。
これは、驚くべきことです。

これに関して、多くの例を挙げることができます、ただ中国は良い例ではありません。ロシアと中国の間には古いつながりがあるからです。

またインドは現在、世界で最も人口の多い国ですが、これも良い例ではありません。旧ソ連時代のロシアとインドの間には、古くからのとくに軍事的なつながりがありますから。

そうではなくて、私にとって最も驚きだったのは、イスラム諸国が、ロシアを好んでいるように見えることです。最近では、イランだけではなく、サウジアラビアのようなアメリカの長年の同盟国もロシアとの取引を好んでいるようです。実際、石油価格も、イスラム諸国やロシアが求めるものになっており、アメリカの石油はあまり考慮に入っていないかのようです。

さらに、NATO北大西洋条約機構)の一員であるトルコとロシアとの間に生まれた新しい関係は、とても興味深いものです。また、フランスの元植民地である西アフリカでは、群衆がロシアの旗を振っています。この旗が彼らにとって何を意味するのかは、私にはわかりません。しかし、その光景は実に興味深いものです。

これらの事実は、私たちを現実に引き戻します。繰り返しますが、これこそがグローバル化の現実でした。