じじぃの「カオス・地球_249_人類の終着点・はじめに」

世界10大リスク予想 発表!日本の未来はどうなる?玉木雄一郎が解説

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ZQmEEgVp7Xo


世界10大リスク、1位は米国分断…調査会社「大統領選で誰が勝っても深刻化」

2024年1月9日 読売新聞

国際情勢のリスク分析を行う米調査会社「ユーラシア・グループ」は8日、今年の「10大リスク」をまとめた報告書を公表した。最大のリスクに挙げたのは11月に大統領選を控えた米国で、「誰が勝っても分断と機能不全は深刻化する」と指摘した。

報告書は米大統領選について、「過去150年間に経験したことがないほど米国の民主主義が試される」と強調した。米国の政治的な混乱が国内のさらなる分断を招き、「国際舞台における米国の信頼性は損なわれる」と分析した。
2番目のリスクには、混迷を深める中東情勢を挙げた。3番目はウクライナ情勢で、ロシアが占領地の支配権を維持し、「ウクライナは事実上の分割統治となる」と分析した。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240109-OYT1T50062/

朝日新書 人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来

【目次】

はじめに

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて
 エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
 フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
 スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
 メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
 マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学
 岩間陽子×中島隆博 対談

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『人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来』

トッド、フクヤマ、ロー、ウィテカー、ガブリエル/著 朝日新書 2024年発行

はじめに より

新型コロナウイルスの感染拡大が収まり、制約や規制が緩和されて1年足らず、世の中は「静」から「動」へと大きく変化しました。繁華街は人出でにぎわい、海外からの観光客も目立つ日常となっています。商業施設や飲食店などでは、コロナ前の風景が戻ったようにも感じます。

ただ、近い未来を考えたとき、コロナ禍とは違った別次元の不安が世界を覆っているようにも思います。これは、時代の大きな転換点に遭遇しているからなのかもしれません。

要因の1つは、各地で起きている戦争や紛争でしょう。ウクライナではロシアの侵攻で激しい戦闘が2年近く続いています。余波でエネルギーや穀物など物価高騰も招き、足元の生活にも大きな影響を及ぼしました。2023年10月にはイスラエルイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まり、ガザでの死者数は増え続けています。アフリカのスーザンやミャンマーでも戦闘が続いています。

また、23年は、ChartGPTに代表される生成AI(人工知能)が生活や仕事の場で急速に普及し、AIブームが起きたのも大きな出来事でした。米ラスベガスで24年1月に開かれた世界最大級のデジタル技術見本市「CES2024」では世界各地から約4000社が集まり、AI関連の機能やサービスを搭載する電気自動車やデジタル家電が注目されました。

こうした歴史の流れにあって、2024年はどんな年になるのでしょうか。

アメリカをはじめとして、国際情勢に影響力のある国・地域でリーダーや議会の構成を決める選挙が相次ぎます。1月の台湾総統選を皮切りに、インドネシア大統領選(2月)、ロシア大統領選(3月)、メキシコ大統領選(6月)、アメリカ大統領選(11月)などです。インドと韓国では総選挙があります。

また、生成AIがさらに躍進し、産業界だけでなく、働き方や消費の行動に大きな変化が起こるという予測もあります。地球温暖化の進行とその影響の深刻化や、国籍や障害、性別などを超えた共生社会の実現への着実な動きを予想する声も多くあります。

23年10月に開催した国際シンポジウム「朝日地球会議」では、日本や世界の置かれた状況を読み解き、近い将来を想像していく一助にしたいと考え、『「世界の知」と探るAI新時代』と題して、世界の知といわれる方々との対談インタビューを配信。その対談を受けたパネル討論も設定し、日本の知識人の方々にも登壇いただきました。対談インタビューでの発言から、ほんの一部をご紹介します。

ウクライナ侵攻をはじめとした戦争や紛争で世界の行く末が見えにくくなっているなか、エマニュエル・トッド氏(フランスの人類学者/歴史学者)は「戦争とは、結局のところ、現実を確かめる究極の試金石だ」と強調し、「驚くべきことにロシアが世界から好かれている」と指摘。「自らを自由民主首位の価値観の旗手だと考える西側諸国は完全い時代遅れだ」「アメリカのさらなる悪化に備えなければならない」と説いています。

フランシス・フクヤマ氏(アメリカの政治学者)は、ウクライナ侵攻について、「欧州全体の政治的な秩序に対する紛争だ」と読み解きます。目にするのは「多極的な世界」だとし、世界は「直面する課題ごとに異なる同盟関係が形成されていく」と予想します。

また、マルクス・ガブリエル氏(ドイツの哲学者)は、「資本主義や近代性は、普遍的な道徳的価値と社会経済システムを一致させることを約束しています。うまくいかなければ、信じられなくなり信頼性を失う」としたうえで、「これが今、不平等によって自由民主主義に起きている。資本主義は、もはや解散につながらない」と説明しています。

生成AIの動向に詳しいニューヨーク・タイムズ記者のスティーブ・ロー氏は、ChartGPTを開発したオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)と非公開で話した内容から「(AIの)進化とは暴走列車であり、なにものも止めることができない。もしかしたら天国まで伸び続ける木のようなものかも」という刺激的な言葉を紹介しています。一方で、ロー氏は「まだ私たちは暴走列車に乗っているわけではない」「むやみに怖がるのではなく、慎重であること。大切なのはこれです」と呼びかけます。

「世界の知」「日本の知」とされる知識人の方々は、このほかにも、ヒューマニティー人間性)のあり方や、気候温暖化問題、先進国で進む人口減少問題、日本の課題や役割などについても語っています。

本書では、ウクライナ侵攻などの戦争や進化の止まらない生成AIを中心に、私たちがこれから目にしていく可能性がある世界像を、あえて「人類の終着点」と表現してみました。世界や日本、そして、私たち一人ひとりのいまの立ち位置を再認識し、近未来の予想図を考える参考になればと願っています。