じじぃの「嗅覚・匂いが命を決める・第4章・鳥の嗅覚!匂いの雑学」

How do Birds Navigate? - Sun, Stars, and Magnetic Senses

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=sHmdzXjgrHA

海岸を飛び立つ海鳥の群れ


海鳥の一部、嗅覚を頼りに飛行進路を決定か 実験

2016年8月30日 AFPBB News
海鳥の少なくとも1種は、海上を飛行する方向を決めるのに嗅覚を利用しているとする、新たな実験に基づく研究結果が29日、発表された。

科学誌ネイチャー(Nature)系のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、地中海(Mediterranean Sea)のスペイン・メノルカ(Menorca)島に生息する海鳥オニミズナギドリの嗅覚を一時的に奪うと、餌探しに飛び立った後に巣に戻ることが困難になったという。

嗅覚を利かなくしたオニミズナギドリは、採餌のためにスペイン東部カタルーニャ(Catalonia)地方の海岸まで約200キロを移動したが、帰路では誤った方角へと向かった。
https://www.afpbb.com/articles/fp/3140952

ジメチルスルフィド

ウィキペディアWikipedia) より
ジメチルスルフィド (dimethyl sulfide, DMS) は常温で液体、水に難溶の有機硫黄化合物。スルフィドの一種である。
ジメチルエーテルの酸素を硫黄で置き換えた構造。キャベツが腐った臭いとも表現される悪臭成分で、ミズゴケやプランクトンなどが作る物質でもある。海苔の香り成分としても重要である。酸化することで溶剤として有用なジメチルスルホキシド (DMSO) となる。金属やルイス酸に配位して錯体を作りやすい。硫化ジメチルとも呼ばれる。また、英語 "sulfide" の発音から、ジメチルサルファイド とも呼ばれる。

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『匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚』

ビル・S・ハンソン/著、大沢章子/訳 亜紀書房 2023年発行
 ・なぜわたしたちの鼻は顔の中央、先端についているのか?
 ・なぜ動植物は、ここぞというとき「匂い」に頼るのか?
 ・「Eノーズ」は将来、匂いの正確な転写・伝達を可能にするか?
ヒト、昆虫、動物、魚、草木、花など多様な生物の「生命維持」と「種族繁栄」に大きな役割を果たしている嗅覚。
そこに秘められた謎と、解き明かされた驚異の事実とは──。

第4章 鳥は匂いがわかるのか より

常識を覆す発見
ジェームズ・オーデュボン(画家で著名な鳥類学者)の実験にはじめて本気で疑問を呈した研究者の1人は、アメリカのジョンズ・ポプキンス大学の鳥類学者、ベッツィ・バングである。彼女は1960年代にはじめた先駆的研究で、鳥の嗅覚についてのそれまでの常識を覆した。バングは、ヒメコンドルを含む100羽以上の鳥の脳を調べて嗅球の大きさを測定した。その結果、鳥には十分発達した大きな嗅脳があり、そのことは、鳥の生活に嗅覚が重要な役割を果たしていると明確に示すものである、とバングが結論づけたという事実をオーデュボンが知ったら、きっと困惑したことだろう。とはいえ、ヒメコンドルが昼食の在りかを本当に鼻で嗅ぎ当てていることを示す確たる証拠を別の研究者が見出したのは、それからさらに20年が過ぎてからだった。

鳥類学者のデイヴィッド・ヒューストンはオーデュボンやその他の研究者たちが重大な見落としをしていたことを示す、最初の証拠を示した人物だと思われる。1980年代にパナマのバロ・コロラド島で行なった実験で、ヒューストンは、ヒメコンドルが死肉を漁りにくることで知られている場所に、隠した状態と、丸見えの状態の2通りの方法で鳥の死骸を置いてみた。ヒメコンドルは、密林に隠された死骸さえも見つけることができたが、彼らは明らかに腐敗がはじまったばかりの死骸を好んだ。ヒメコンドルが好む、ほどよい腐敗と分解の程度があったのだ。新しすぎず、腐りすぎてもいない、理想的なのは死後1日ほどの死骸だった。

何が鳥を導いているのか
地球の磁場が彼らを導いているのだろうか? ある種の鳥はたしかに磁場を手がかりに進む方向を決めているが、いくつかの研究から、ミズナギドリ目の鳥は少なくとも磁場だけに頼っているわけではないことがわかっている。磁場への知覚が阻害された(たとえば鳥の頭の上で義気装置を取り付けるなどして)アホウドリは、陸標や天体など、目に見える指標さえない状態でも生まれた場所に帰り着くことができる。つまり磁場は正解ではない。

こうした科学の世界では、アホウドリが進路を知る際には嗅覚が大きな役割を果たしており、そのおかげでアホウドリは生まれた場所に帰れる、と再び考えられるようになった。アホウドリ同様、ミズナギドリ目に属するハサミアジサシについての研究からは、鳥を移動させた場合、もっともスムーズに元いた場所に戻れるのは、嗅覚が損なわれていない場合であることがわかった。アホウドリは方向を示すある種の指標として匂いを記憶しており、記憶している匂いの方向に向かって進むのかもしれない。しかし彼らがたどっているのはたった1つの匂いではないだろう。空を飛んでいるときに感知するいくつもの匂いと、それらが立ち上がってくる強さのちがいをもとに、自分が今どこに居てどこに向かうべきなのかを判断しているにちがいない。

初期の実験の多くでは、ある種の知覚の剥奪──たいていは一時的な──が行われていた。それ以外の、ハサミアジサシが飛んだルートを解析する手法を用いたより低侵襲の研究からは、鳥が営巣場所に戻るルートを探す際にたしかに嗅覚的手がかりに頼っていることを示唆する結果が得られた。

もしかすると、これらの鳥は、陸標の不足を補うために、海の上を行ったり来たりして海の匂いの地図を描き出し、それを頼りに海から立ち上る匂いの移ろいをたどって、次の夕飯を見つけられるのかもしれない。あるいは営巣地で行われたその他の実験から、アホウドリは生存のために複数の知覚系──視覚と嗅覚──に頼っていることもわかっている。鳥が匂いを手がかりに食べ物を探していることを示す証拠はたくさんあるが、渡り鳥が嗅覚だけを頼りに生まれた場所に戻っていることを示す確定的な証拠は今のところなさそうだ。

しかしハトに関しては、いくつかの説得力のある研究結果がある。

バランスを崩す
この話(薬剤による環境の変化)は、社会の一画で下された決断とそれにともなう行動が、自然界の別の場所のバランスを崩しうることを如実に物語っている。しかしまた、そのバランスを回復させる解決策があることもはっきりと示されている。ハゲワシは見た目はきれいではなく、テーブルマナーもひどいものかもしれないが、少なくとも生態系においてある種のバランスを保つ役割は果たしている。そしてそのためには彼らの鋭い嗅覚あ必要なのだ。

一方、人間の行動が鋭敏な嗅覚をもつ鳥類にもたらした別の問題に関しては、今はまだ解決の兆しさえ感じられない。あの美しいアホウドリが誇る DMSの匂いへの敏捷性は、プラスチックによる環境汚染が進む一方の世界においては、むしろ不都合なものとなっている。

プラスチックは海中に長時間漂いつづけると──おそらくほんの数週間で── DMSの匂いを吸収し内部に溜め込んでしまうと考えられている。匂いを発するこのプラスチックは、餌探しにやってきた海鳥を引き寄せ、オキアミではなく死にいたる食事を取れと誘う。理想を言えば、この発見を期に、海に流れ着いても匂いを吸収しない素材の研究開発が進むべくだろう。もっといいのは海洋ゴミをそもそも減らすことで、それは第1章で述べた通りだ。

わたしたちは、海鳥にもハゲワシにも等しく敬意を払うべきだ。彼らはその鋭い嗅覚で、それぞれの生態系において進化上の利点を得てきた。しかしわたしたち人間の干渉によって、その利点が、一転して彼ら自身に不利益をもたらすものに変わってしまうことがあるのだ。

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じじぃの日記。

ビル・S・ハンソン著『匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚』という本に「鳥は匂いがわかるのか」というのがあった。

鳥は、巣からかなり離れた場所に餌を探しに移動する。

最近、ブライアン・バターワース著『魚は数をかぞえられるか?』という本を読んだ。

「この途方もない行動には、船乗りが『自律航法』と呼ぶような複雑な計算が求められる。人間がやる場合は通常、地図や羅針盤や計算機が必要だ。羅針盤の方位に従って移動距離を読み、船が地図上のどこにいるのか計算することになる。また、鳥の場合は、餌を探し終えたら巣に戻らなくてはならないから、現在地を割り出すだけでなく、『帰巣ベクトル』――巣に戻る直線ルート――を見極めなくてはならない。2つの重要な要素は、羅針盤と地図だ。鳥の羅針盤は、さまざまな情報に頼っていることが判明している」

渡り鳥はどうやって目的地まで針路を決めるのか?

中には何百、何千キロも離れた場所まで飛ぶ鳥もいる。

こうした長距離移動する渡り鳥は、強靭な筋肉を持っているらしい。
このような渡り鳥の筋線維にはミトコンドリアがびっしり詰まっているのだとか。

「もしかすると、これらの鳥は、陸標の不足を補うために、海の上を行ったり来たりして海の匂いの地図を描き出し、それを頼りに海から立ち上る匂いの移ろいをたどって、次の夕飯を見つけられるのかもしれない」

海水中のプラスチック・ゴミなどで、鳥もまた大量絶滅に向かっているらしい。