じじぃの「カオス・地球_208_免疫超入門・第2章・炎症性サイトカイン」

【炎症反応の説明できる?】炎症とサイトカインについて

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=W9GVl-85VEY

図2-6 「炎症の起こる仕組み」


新型コロナで重症化した患者の共通点…なんと、「免疫が暴走しすぎ」ていた

2023.11.28 吉村昭

●マクロファージからのサイトカインが炎症を起こす
マクロファージには、貪食のほかにもう1つ重要な役割があります。ウイルスのDNAやRNAを感知し、炎症を起こすのです。細菌感染の場合は、細菌が持つ糖タンパク質や脂質なども感知し、炎症を起こします。また、死んだ細胞から出る物質がマクロファージを活性化して炎症を起こします。そのような死んだ細胞から出る物質を、ダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns:DAMPs)と呼びます。
https://gendai.media/articles/-/119287?page=2

サイトカインストーム

実験医学online より
感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する。
この状態をサイトカインストーム(cytokine storm)という。

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免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム

【目次】
第1章 人類の宿命・病原体と免疫の戦い

第2章 ヒトに備わった、5つの感染防御機構

第3章 病原体との攻防
第4章 自己を攻撃する免疫――アレルギーはなぜ起こるのか
第5章 炎症とサイトカイン――さまざまな病気と免疫
第6章 免疫とがん
第7章 老化を免疫で止められるか
第8章 脳と免疫の深い関係

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免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム

吉村昭彦/著 ブルーバックス 2023年発行

パンデミックによって感染症や免疫に関する情報を目にすることが多くなり、私たちの知識も増えたように見える。ただ、そこで出てきた情報は、曖昧なものや誤った情報、感情的なものなどもあり、玉石混淆ともいえる。
本書ではあらためて、ウイルスなどの病原体がどのように感染を起こし、免疫がどのように働くのか、その複雑なしくみを、基本から正しくわかりやすく解説する。

第2章 ヒトに備わった、5つの感染防御機構 より

マクロファージが炎症を起こす
マクロファージには、貧食のほかにもう1つ重要な役割があります。ウイルスのDNAを感知し、炎症を起こすのです。細菌感染の場合は、細菌が持つ糖タンパク質や脂質なども感知し、炎症を起こします。また、死んだ細胞から出るマクロファージを活性化して炎症を起こします。そのような死んだ細胞から出る物質を、ダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns:DAMPs)と呼びます。

炎症とは、マクロファージや好中球、NK細胞、場合によってはT細胞など、免疫に関係する細胞が患部に集積した状態をいいます。それらの細胞は、炎症細胞とも呼ばれます。炎症細胞が集積すると血管が拡張するので、皮膚や喉は赤く腫れてみえます。免疫が盛んに感染と戦っている現場です。

マクロファージがウイルスや細菌を感知する病原体センサーの中で特に重要なものが、トル様受容体(Toll-like receptor:TLR)と呼ばれるものです。この発見者であるブルース・ボイトラー博士とジュール・ホフマン博士は、2011年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

TLRには複数の種類があり、そのうちTLR3やTLR7はウイルスや細菌の核酸(DNAやRNA)を感知します。すると、インターフェロンや腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α:TNF-α)、IL-6、IL-1βといった炎症を引き起こすサイトカインがつくられ、分泌されます(図2-6、画像参照)。

それらの炎症性サイトカインは、マクロファージや好中球などの炎症細胞をどんどん感染部位に集まります。すると幹部は赤く腫れて熱を持ちます。
さらに炎症が強くなると、体温が37℃を超えるような全身性の発熱が起こります。マクロファージがつくる炎症性サイトカインが脳の視床下部に作用してプロスタグランジンという発熱物質がつくられ、体温を上げるのです。
体温が高くなると、通常はウイルスの増殖スピードが落ちます。したがって感染で熱が出るのは合目的なのですが、一方で発熱は体力も奪うので、なかなか難しいところです。

炎症性サイトカインを盛んに分泌するマクロファージをM1型、主に貪食によって異物を排除するマクロファージをM2型と呼ぶことがあります。M2型は、むしろ炎症を抑え、線維芽細胞にコラーゲン産生を盛んにさせて組織を修復する働きもあります。
M1型とM2型は完全に分けられるものではなく、ほとんどのマクロファージは多かれ少なかれ両方の性質を持っていますが、炎症に関わるか修復に関わるかを区別しやすくするための呼び名です(図2-6のヘルパーT細胞、キラーT細胞については後述します)。

好中球が炎症を広げてしまうことも
好中球はマクロファージと似ていますが、どちらかというと「食べて消化し、消毒する」ことが専門の細胞です。好中球は血液中を循環していますが寿命が短いため、炎症時にはマクロファージが分泌するサイトカインによって、骨髄から直接動員されます。そして感染細胞や死んだ細胞を食べ、その後、好中球は自壊して膿としてたまります。

好中球は自壊するとき、自身のDNAを放出して、投網のように細菌を絡め取り動けなくします。このDNAの網状の構造を、好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)と呼んでいます。ただし、そのDNAが断片化して短くなると、マクロファージのDNAセンサーを活性化してしまい、炎症性サイトカインが分泌され、さらに炎症を広げることになります。新型コロナウイルス感染症では、重症化した患者さんほど好中球が多いという報告もあります。そのたくさんの好中球が死ぬことで、マクロファージのDNAセンサーが活性化され、炎症が拡大すると考えられます(図2-6)。

免疫が働きすぎると、困ったことが起きてしまいます。炎症性サイトカインが猛烈に出ると「サイトカインストーム」と呼ばれる現象を起こし、体中で血栓ができて死につながることがあるのです。新型コロナウイルス感染症で死亡するのは、ウイルスが増殖して肺の組織が破壊され呼吸困難になるほかに、サイトカインストームによって血栓ができて血管が詰まり多臓器不全を起こすことも原因の1つであることがわかっています。サイトカインストームについては、第3章で詳しく解説します。

NK細胞や好中球、マクロファージを主体とした免疫応答を「自然免疫」といいます。

これらの細胞は、感染から数日以内に病原体を排除する場合に重要で、うまく排除できれば撤収、つまり自身も死んでなくなります。しかし排除できない場合は、これらの炎症細胞が集まり続け、放出される炎症性サイトカインによってさらに活性化され、激しい炎症が続きます。