じじぃの「嗅覚・匂いが命を決める・第1章・CO2の破壊的な役割!匂いの雑学」

NHKスペシャル] 海の生き物が溶け出す脅威 | 海の異変-しのびよる酸性化の脅威-

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=hGBtsi34u6g

海洋酸性化の現状とは


海洋酸性化は海の多様性にどんな影響を与える?

2022年7月15日 海の豊かさを守ろう
IPCCによると、「産業革命(1750年代)から現代までに表面海水中のpHは全海洋平均で0.1低下しており、今世紀末までにさらに0.065から0.31低下する」と予測されています。

ハワイ近海の水深約250mではpHの低下速度が最も速く、海洋酸性化が進行しており、大西洋でも海洋内部でのpHの低下が報告されています。

また海洋酸性化は、今後大気中へ排出される二酸化炭素の増加に伴い進んでいくと言われていますが、海洋酸性化の進行についてまだ実態はよく分かっていません。今後の研究による科学的な知見の集積が待たれます。
https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/life_below_water_sdgs/7231/

『匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚』

ビル・S・ハンソン/著、大沢章子/訳 亜紀書房 2023年発行
 ・なぜわたしたちの鼻は顔の中央、先端についているのか?
 ・なぜ動植物は、ここぞというとき「匂い」に頼るのか?
 ・「Eノーズ」は将来、匂いの正確な転写・伝達を可能にするか?
ヒト、昆虫、動物、魚、草木、花など多様な生物の「生命維持」と「種族繁栄」に大きな役割を果たしている嗅覚。
そこに秘められた謎と、解き明かされた驚異の事実とは──。

第1章 人新世の嗅覚 より

CO2の破壊的な役割
車を運転したり飛行機に乗ったり、工場を移動させたりする際にはさまざまな物質が排出され、それらは気候と大気中の分子に影響を及ぼす。人新世に関わる変化としてもっともよく喧伝されているのは環境中の二酸化炭素(CO2)レベルの上昇で、それが温室効果をもたらし、この世界の気温を劇的に変化させ、海水の酸性度を増し、地球全体の気候を不安定にしている。

CO2自体は、空気中の匂いに直接的な化学的影響をあたえない非反応型の化合物だが、環境中のCO2が植物が放出する揮発性物質を変えてしまうことはある。これは、植物の内部で生じる生理学的変化によるのだ。二酸化炭素には、植物による水の消費量を抑え、植物細胞の化学組成を変えることによって、植物の光合成活動を活発化させる力があるのだ。また、空気中のCO2濃度の変化は、昆虫が宿主を探し当てる能力にも影響をあたえうる。蛾は、花が開花する際に噴出されるCO2を追跡して花蜜の在りかを探し当てる。よって、CO2濃度が高まった環境で花をうまく探し当てられなくなると、受粉と害虫の蔓延の両方に影響が出る。

CO2濃度が高い環境では、蚊も血を吸うための宿主を見つけづらくなる。なぜなら、CO2は蚊が宿主を見つけるときに使う主要な嗅覚的手がかりの1つだからだ(第9章参照)。人にとってはむしろ好都合かもしれないが、これにはマイナス面もある。

進化的に見ると、空気中のCO2濃度が上昇した期間に、蚊の種分化が劇的に早まったことがわかっている。この種分化率の高まりは、宿主の居場所を伝えるCO2信号の質の低下によって引き起こされたと考えられ、それがあらたな種間の識別に役立つより特殊な匂いの生成につながってきた。つまり、人新世における人の活動がもたらした大気中のCO2の明らかな増加は、人の健康にも、昆虫の種の増加と分布の変化がもたらす受粉の効率の低下にも、大きな影響をあたえているのだ。

このように、陸の世界の前途は多難である。海の世界もまたひどいものだ。CO2が海水に溶け込んで炭酸を作り、海水は以前より酸化が進んでいる。酸化された海の水が、海洋生物の嗅覚を狂わせているとする研究結果もある。嗅覚を使って海洋生物がやろうとしていることが、捕食者を避けることであれ、食糧を見つけることであれ、あるいはパートナーを見つけることであれ、海水のPH(ペーハー)値の低さは彼らの暮らしをひどく混乱させ、そうした仕事をより困難にすることだろう。海の生態系と食物網がこうした環境の変化にうまく適応できるかどうかは、まだよくわかっていない。

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じじぃの日記。

海水の酸性化が進行している

「このように、陸の世界の前途は多難である。海の世界もまたひどいものだ。CO2が海水に溶け込んで炭酸を作り、海水は以前より酸化が進んでいる。酸化された海の水が、海洋生物の嗅覚を狂わせているとする研究結果もある」

海から貝が消える?

海の中にはさまざまな物質が溶けていますが、サンゴや貝などの生きものに重要なのはカルシウムイオンと炭酸イオンです。サンゴや貝はこの2つのイオンを結合させた炭酸カルシウムで自分の骨格や殻をつくっています。

海洋酸性化の影響評価実験として、各地の臨海実験所で二酸化炭素濃度を人工的に高くして将来の海の環境を作りだし、海の生きものを飼育してその影響を見る研究が進められています。実験結果から、産業革命前と現在との二酸化炭素濃度の違いでもサンゴやウニのいくつかの種類ではすでに成長に影響が出始めていることがわかってきました。

https://www.cger.nies.go.jp/ja/news/2014/140516.html