じじぃの「カオス・地球_156_共感革命・序章・踊る身体」

Watch: Young gorilla spins, dances in zoo

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kkSMKQdMiJ4

Young gorilla dances


Is this the new Prima(te) Ballerina? Incredible moment young gorilla dances a perfect pirouette inside his enclosure

14 April 2016 Daily Mail Online
The hilarious video was captured at Twycross Zoo in Leicestershire and shows the three-year-old ape named Lope pirouetting before rolling on the ground.

The clip was posted to Facebook where it quickly picked up more than a million views and amused users shared their thoughts on the unlikely ballet dancer.
https://www.dailymail.co.uk/news/article-3538040/Is-new-Prima-te-Ballerina-Incredible-moment-young-gorilla-dances-perfect-pirouette-inside-enclosure.html

河出新書 共感革命――社交する人類の進化と未来

【目次】

序章 「共感革命」とはなにか――「言葉」のまえに「音楽」があった

第1章 「社交」する人類――踊る身体、歌うコミュニケーション
第2章 「神殿」から始まった定住――死者を悼む心
第3章 人類は森の生活を忘れない――狩猟採集民という本能
第4章 弱い種族は集団を選択した――生存戦略としての家族システム
第5章 「戦争」はなぜ生まれたか――人類進化における変異現象
第6章 「棲み分け」と多様性――今西錦司西田幾多郎、平和への哲学
第7章 「共同体」の虚構をつくり直す――自然とつながる身体の回復
終章 人類の未来、新しい物語の始まり――「第二の遊動」時代

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『共感革命』

山極壽一/著 河出新書 2023年発行
人類は約700万年前にチンパンジーとの共通祖先から分かれ、独自の進化を遂げた。やがて言葉を獲得したことによって「認知革命」が起きたとされている。しかし、実はその前に、もっと大きな革命があった。それが「共感革命」だ。

序章 「共感革命」とはなにか――「言葉」のまえに「音楽」があった より

二足歩行が共感革命を起こした

類人猿の子ども特有の遊びに、ピルエットと呼ばれるものがある。

ピルエットとはぐるぐると回転することだ。この遊びはサルには見られず、類人猿にしか見られない。フランスの社会学者ロジェ・カイヨウが分類した4つの遊びの中で最も自由な、浮遊感に満たされた冒険的な緊張感に包まれる遊びで、類人猿が人間に進化するにつれてこの遊びは拡大し、ダンスという音楽的な才能と結びついていった。

私は人類が直立二足歩行を始めた理由の1つに、この「踊る身体」の獲得があったと考えている。

かつて人類はジャングルを四足で歩行していたが、やがて二足歩行へと変化する。歩行様式が変わった理由として、二足の方がエネルギー効率もよく、遠くまで食物を集めに行けたからという説と、安全な場所で待つ仲間の元へ栄養価の高い食物を運びやすかったからという、2つの説がこれまで有力だった。

しかし、私は別の考えを持っている。

四足で歩行すると手に力がかかり、胸にも圧力がかって自由な発生ができない。しかし二足で立てば支点が上がり、上半身と下半身が別々に動くので、ぐるぐる回ってダンスを踊れるようになる。

また二足で立つと胸が圧力から解放されて、咽頭が下がり様々な声を出せるようになる。言葉を獲得する以前の、意味を持たない音楽的な声と、音楽的な踊れる身体への変化によって、共鳴する身体ができる。

この身体の共鳴こそが人間の共感力の始まりで、そこから音楽的な声は子守歌となり、やがて言葉へと変化する。人間はそうやって共感力を高めながら、社会の規模を拡大していったのではないか。

『サピエンス全史』で知られる歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、ホモ・サピエンスが言葉を獲得し、意思伝達能力が向上したことを「認知革命」と呼び、種の飛躍的拡大の最初の一歩と考えた。

しかし私は「認知革命」の前に「共感革命」があったという仮説を持っている。

もし7万年前に言葉が登場したという説が正しければ、人類はチンパンジーとの共通祖先から分れた700万年の中でわずか1パーセントの期間しか言葉を喋(しゃべ)っていないことになる。その点を踏まえれば、まず身体があり、次の共感という土台があった上で言葉が登場したと考えるほうが自然だろう。

イギリスの霊長類学者ロビン・ダンバーは「社会脳仮説」を唱え、言葉は脳を大きくすることに役立っていないと指摘している。人類の脳は200万年前に大きくなり始め、ホモ・サピエンスが登場する前に、すでに現在の大きさになっていた。つまり言葉が脳を大きくしたわけではなく、むしろ先に脳が大きくなり、その結果として、言葉が出てきたと考えられるのだ。

ではなぜ脳は大きくなったのだろうか。

ダンバーは人間の脳と、猿や類人猿の脳の大きさの違いについて、様々なパラメータを比較して検討した。その結果、大きな集団で暮らしている種ほど脳が大きいという事実を発見した。大きな集団で暮らせば、突き合う仲間の数が増える。自分と仲間、あるいは仲間同士の社会的な関係をしっかり覚えているほうが、様々な場所で適切に行動できる。
つまり社会の中で他者と交わるために、脳を大きくする必要があったと考えられるのだ。

ただし、脳が適応できる集団の人数にも限界はある。

時代によって脳のサイズは変化しているが、それぞれの時代の大きさから推定して、人類の平均的な集団人数を割り出すことができる。700万年前から500万年間は、現在のゴリラやチンパンジーと同じくらいの脳の大きさで、集団サイズは10~20人程度だった。その後、脳が大きくなるにつれて適正な集団サイズは大きくなり、現代人の脳の大きさ(約1500cc)だと、150人程度とされている。