じじぃの「カオス・地球_144_2050年の世界・貿易と金融・リーマン・ショック」

リーマンショックとは何か?わかりやすく解説【株式投資

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jsdFsbO_n9U

株価暴落(暴落):リーマン・ショック

投資の森
リーマンショック」とは、2008年9月15日アメリカの証券会社「リーマン・ブラザーズ」の経営破綻に端を発し、株価が大暴落したことを指します。

リーマン・ブラザーズ」破綻のきっかけともなった「サブプライムローン」問題が金融市場をマヒさせ、世界同時不況を引き起こしました。
これを「リーマンショック」と呼びます。
https://nikkeiyosoku.com/crash/lehmans_collapse/

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化

第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する

第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する より

2008~09年の金融危機が残した傷跡

貿易に関する大きな疑問は、グローバル化は行き詰まっているのか、そしてつぎの30年には貿易障壁などの制限が設けられるようになるのかどうかだ。金融に関する大きな疑問は、2008年の金融危機リーマン・ショック)と、過去10年にわたって中央銀行がつづけてきた異次元の金融緩和政策によるダメージがどれくらい大きいかである。いまの金融システムそのものを維持するには抜本的に解体修理する必要があるのか、もしそうだとすれば、どのような形になるのか。

国際貿易は、第二次世界大戦以降の世界の繁栄をテクノロジーとともに大きく牽引してきた。1980年代以降、まず中国が、その後ベルリンの壁が崩壊して東ヨーロッパが、共産主義の経済政策を捨て、機能する市場経済を確立しており、国際貿易が果たす役割はとりわけ重要になっている。1990年代にはインドがつづき、2014年にナレンドラ・モディが改革に乗り出すと、市場経済への移行が加速した。2019年にはインドは世界最速で成長する経済大国になっていた。

国際貿易の自由化が繁栄拡大の鍵となる原動力だったとしたら、金融システムはそのプロセスを加速させた潤滑油だった。貿易が急成長できたのは、貿易金融、外国為替市場などの決済システムがあったからだし、20億~30億人が貧困を抜け出して、中間層生活様式を送れるようになったのも、そのための投資に必要な資本の大部分を金融システムが供給したからである。
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2008年に世界の政府と中央銀行が銀行システムを救済する必要があると判断したのは、そうした理由からだ。政府と中央銀行が行ったことは、簡単に言うと、つぎの3つである。
世界をチープマネーであふれさせた。大規模な銀行を救済した。そして、同じような破綻が二度と起こらないようするために新しい銀行規制をつくった。

どれも必要なことだったが、その副作用はいまも消えていない。超低金利状態が10年つづいて資産価格が急騰しており、社会の緊張が高まっている。資産が値上がりすると、莫大な資産をもつお金持ちが利益を手にする。犠牲になるのは富が少ない人たちだ。そして金利が下がったため、ただ預けるだけではお金が増えなくなった。税金で銀行を救済したことで銀行業界全体に対する反感はいまも根強く、銀行は守勢にまわり、慎重な姿勢をとるようになっている。さらに、銀行の安全性を高めるための規制がつくられて、潜在的なリスクが大きい顧客、とくに小規模企業への貸し出しが減った。2008/09年の金融危機から10年あまりがすぎても先進国が後遺症に苦しむなか、そこに新たな世界危機が襲った。新型コロナウイルスパンデミックである。だとすると、つぎの20年に国際貿易と金融はどうなっていくのだろう。まず国際貿易から見ていこう。

国際貿易の性質の変化――財の貿易からアイデアと資本の貿易へ

つぎの30年に、国際貿易の性質は一変するだろう。もちろん、これからも財を動かすことは必要になる。原材料が豊富にある国は、それを輸出しつづけるだろうし、製造業に強い国は、世界中に自国の製品を売りつづけるだろう。しかし、財の貿易をさらに自由化するべきだという考えは影をひそめるようになる。保護貿易を求める政治的な力ははたらきつづけるが、それが大きな理由ではない。大量の財を船や飛行機で運ぶ必要がなくなるからだ。それにかわって現地生産に重点がシフトしていく。

2010年代なかば、ドナルド・トランプアメリカ、カナダ、メキシコのあいだで結ばれている北米自由貿易協定NAFTA)への攻撃と中国との貿易戦争をはじめるずっと前の時点で、世界貿易の成長にはすでに陰りが出てきていた。世界GDPの成長率を上回るベースで拡大していた世界の貿易量が減速しはじめていたのだ。なぜか。

大きな理由は4つあるように思われる。
1つは、新興世界の大部分、とくに中国と先進世界の賃金格差が小さくなるはじめていたことだ。賃金は数多くの新興国で急激に上昇する一方、先進世界の大半では伸び悩んでいた。 (略)

2つ目は、製造業のあり方が変化していることだ。工場のフロアで働く人はぐっと減り、設計とオートメーションを行う人はうんと増えている。 (略)

3つ目の理由は、消費者の選択である。原因をなにか1つに特定するのはむずかしく、いくつかの流れが組み合わさって、国際貿易の拡大に歯止めがかかることになりそうだ。1つは輸送が環境に与える影響であり、とくに若い人たちのあいだで関心が高まっている。 (略)

そして最後は、人びとの購買パターンが財からサービスにシフトする流れが止まりそうにないことだ。ここがいちばん重要なポイントになるだろう。サービスが財とちがうのは、消費される場所と同じところで生産しなければいけない点だ。 (略)
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世界はどんなサービスを買いたいと思うようになるのか。その一部はすでにはっきりしている。リストのトップは教育と医療がくる。どちらも需要はほぼ無限だと思われるからだ。それはこれからも変わらない。人びとが豊かになると、教育への支出を増やそうとするし、人口が高齢化すると、健康のためにかける支出を増やさなかればいけなくなる。娯楽産業もグローバル化しているが、言語や文化のちがいがあるため、国際貿易はかぎられている。言語の壁は低くなるかもしれないが、文化のギャップは拡大する可能性がかなり高い。

だが、ほかのサービスに対する需要がどうなるかはわからない。通信革命の際立った特徴の1つは、だれかがそれを生み出すまで、わたしたちがどんなサービスを買いたいと思っているのか、だれもわからないということだ。フェイスブックが登場するまで、わたしたちがそんなサービスを必要としていたとはわからなかった。同じことはソーシャルメディア産業全体に言える。2050年までの30年に世界を支配する情報サービスの大半は、おそらくまだ存在していない。そうだとすると、どの国がそれを生み出すのかが問題になる。

これはアメリカと中国の覇権争いで主戦場の1つになるだろう。ほかの英語圏諸国はアメリカの陣容に引き込まれる。自国のIT産業を発展させる力が中国にあることはだれも疑っていないはずだ。すでにそうなっている。それに比べると、中国がグローバルに輸出できるサービスを生み出せるかどうかは不透明である。アメリカと中国がどこで覇権を競うかはわかるが、どう決着するかは推測するしかない。

それでも、全体として見れば、開かれた貿易体制がつづく可能性が圧倒的に高い。便益がコストを大きく上回っているため、それを維持するなんらかの方法が見つけられるだろう。たとえ世界が深く分断されて、地域貿易ブロックが形成されるとしても、ブロック間で取引しなければいけないことに変わりはない。モノとサービスが、完全に自由に動くようにはならないだろう。
人が完全に自由に動くようになることもない。移動の自由はむしろ後退するおそれがある。この先、グローバル化の大きなメリットを享受しながら、コストを最小限に抑える方法を見つける必要が出てくるだろう。