じじぃの「カオス・地球_135_2050年の世界・いま生きている世界・イギリス」

Embargoed U.K. Media Briefing - OECD PISA 2018 Results with Andreas Schleicher

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=vBZs9ZlwKdo


PISA 2018: The Top Rated Countries

Dec 3, 2019 Statista
The OECD conducts an assessment every three years of education systems worldwide by testing the skills and knowledge of 15 year old students in science, reading and mathematics (plus collaborative problem solving and financial literacy).
Named PISA (Programme for International Student Assessment), the test is conducted in 79 countries, with 600,000 students put under the spotlight of a two-hour test.
https://www.statista.com/chart/7104/pisa-top-rated-countries-regions-2016/

THE世界大学ランキング2021 日本から116校がランクイン【一覧掲載】

2020.09.08 高校生新聞オンライン
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/6768

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅

第1章 わたしたちがいま生きている世界

第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第1章 わたしたちがいま生きている世界 より

イギリスとアイルランド

アイルランドEUに対し、イギリスの自国領土内でどのような憲法上の取り決めをしていようと、ヨーロッパ時間帯の英語圏の国は繁栄をつづけるだろう。その理由はたくさんある。1つには、英語が広く話されている国の競争優位が高まっているように思われることだ。メタやグーグルにとっては、大陸をヨーロッパ事業の拠点にするよりも、イギリスやアイルランドから運営するほうがやりやすい。

コモンロー(英米法)の国であるのも競争優位になるだろう。外国人や外国企業にとってはコモンローのほうが扱いやすく、国境をまたぐ多くの契約で、イギリスとアイルランドが準拠国として選択されている。高等教育では明らかに優位である。

アメリカに対抗できるのはイギリスだけだ。イギリスがEUを去ったいま、3大世界大学ランキング(タイムズ、QS、上海交通大学)でEU最上位の大学は、トップ30にすら入っていない。イギリスの大学以外でトップ20に入っているヨーロッパのスター大学が1つある。チューリッヒ工科大学だ。しかしこの大学はスイスにあり、スイスはEUに加盟していない。

起業家文化も強みだろう。経営能力の面では、イギリスとアイルランドに優位があるとはとうてい言いがたい。むしろ逆ではないか。イギリスでは外資が所有・経営する企業のほうが国内企業よりも生産性が高い。だが、イギリスとアイルランドの企業の開業率は、西ヨーロッパのほとんどの国より高く、フランスやドイツ、イタリア、スペインを大きく上回っている。

イギリス経済を特徴づけるものはさらに2つある。1つはおおむねプラスにはたらくが、もう1つは明らかにマイナスに作用する。プラス要因は、サービス産業の規模、とくに金融サービス団業の規模がほかのどの産業よりも大きいことである。サービス産業は新型コロナウイルス感染症パンデミックで大きな打撃を受けているが、ほとんどやがて適応し、回復するだろう。

イギリス経済の約80%はサービス業であり、これはアメリカとほとんど同じ水準だが、ほかのヨーロッパ諸国や日本よりも高い。

金融サービスは12%を占める。それは主に、GDPに占める製造業の割合が下がったためであり、イギリスとアメリカは、大陸ヨーロッパの大半と日本以上に製造業が縮小している。人びとが異聞の所得のうち医療、教育、娯楽に(税金を通じて、あるいは直接的に)支出する割合を増やし、自動車、洗濯機などへの支出を下ラスことを選択しているのだとしたら、彼らは望んでそうしているのである。それはすべて先進国で行なわれている選択であり、この後で見ていくように、急成長する新興国、とくに中国は、サービス経済へのシフトを積極的に進めている。

したがって、ある意味ではイギリスはパイオニア経済である。アメリカにつぐ世界2位のサービス輸出国であり、サービス収支の黒字を使って、財の赤字を埋め合わせている。

財の赤字が足を引っ張っているとする見方もあるが、実は、そのパターンは19世紀はじめからつづいている。イギリスが世界の工場と呼ばれ、蒸気船をアメリカに、鉄道のエンジンをアルゼンチンに輸出していたときでさえ、海外に売るよりも多くの財を海外から買っていた。拡大する帝国への投資を含めて、国際投資から得られる収益で、貿易の赤字をカバーしていた。このように長い実績がある。
ほんとうに問題なのは、イギリスの競争優位はどこにあるのかだ。それはサービスにあるというのが、市場の答えである。

これについては言っておきたいことが3つある。1つは、イギリスはハイエンド製造業を得意としていることだ。航空機エンジン、レーシングカー、医薬品などがそうである。もう1つは製造業がサービス業を支えていることである。その意味では、製造業とサービス業は切っても切れない関係にある。ロールス・ロイスは航空機エンジンをつくっているが、その後は耐用年数の20年間にわたって整備もする。利益の大部分、場合によって利益のすべてが、エンジンを売るそのときではなく、売った後の20年間に生まれる。そして最後に、製造業からサービス業へのシフトは、1つまちがえば経済に破壊的な影響をおよぼしかねない。イギリスもこれをうまくやったとは言えない。

それがイギリス経済のとても大きなマイナスの側面へとつながる。イギリスは格差がものすごくある。まず、地理的な格差がある。インナーロンドン(ロンドン中心部)の西側は、北ヨーロッパで最も裕福な地域だが、非常に貧しい地域のうちの5うもイギリスにある。西ウェールズコーンウォールリンカンシャーなどがそうだ。

健康の格差もある。グラスゴー中心部の平均寿命は、グラスゴーの北にある裕福なイースト・ダンバートンシャーより5年短い。

教育も偏っている。OECDPISAでは、イギリスの学校のスコアは先進世界の平均よりも少し高いが、ウェールズの学校は低く、イギリスの有力私立校は世界トットクラスにある。

そして企業業績にも格差がある。イギリスは生産性に問題を抱えている。従業員1人当たりの生産がほかのG7諸国よりも10~25%低い。イギリスのトップ企業(たいていは外資が所有している)はグローバルリーダーにひけをとらない。しかし問題は、生産性が低いままの企業が全体として大きな役割を占めることだ。

アイルランドはそれとはかなりちがう形で偏っている。過去50年間のアイルランド経済は、世界屈指のサクセスストーリーを生み出している。1つの輸出品(農産品)と、1つの主要市場(イギリス)に過度に依存する経済から、輸出立国へと変貌をとげた。アップル、グーグル、ツイッター、メタをはじめ、多数のアメリカの巨大ハイテク企業がヨーロッパ事業の拠点を置いている。1970年には食品がアイルランドの輸出の半分を占めていた。それが2017年には10%強まで下がっている。工業製品の他、非常に重要なポイントとして知的財産の輸出が急拡大して、食品にとってかわっていたのだ。なぜか。理由の1つは税金だった。アイルランド法人税はかなり大きな経済国としては最低水準まで引き下げされた。それ以外にも優遇策が用意されただけでなく、教育水準が高くて英語を話す労働力も提供できた。アイルランドは先進世界で最速の経済成長をとげ、「ケルトの虎」と呼ばれるようになったが、2008/09年の金融危機で成長に急ブレーキがかかった。影響こそ甚大だったが、それも一時的なものに終わった。