じじぃの「カオス・地球_140_2050年の世界・人口動態・老いる先進国・日本」

Population Aging and Economic Growth: Impact and Policy Implications

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=4osipc8LeGk


The World's Aging Societies

Sep 22, 2022 Statista
In terms of larger countries, Japan has always been at the forefront concerning the share of residents aged 65 or older, with more than 86,000 centenarians alone living in the island nation in 2021.
As our chart based on data from the United Nations Population Division highlights, one smaller country beats the East Asian state to the number one spot when considering smaller geographic regions.
https://www.statista.com/chart/28319/estimated-share-of-population-aged-65--by-country/

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界

第2章 人口動態――老いる世界と若い世界

第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第2章 人口動態――老いる世界と若い世界 より

老いる先進世界

先進世界の高齢化は所与のものである。図が示すように、人口の高齢化はすでに進んでおり、少なくともあと1世代はつづくだろう。

そしてそれは先進世界だけにとどまらない。いま日本とヨーロッパ、さらにスピードこそ遅いがアメリカで起きているいることが、すでに中国やロシアでも見られるようになっている。やがてインド、そして亜大陸全体へと広がり、いまの時点で半世紀先のことを予測できる範囲で言えば、アフリカにもおよんでいく。

老いる世界はいまとは多くの点で変わるだろう。それがどんな感じなのか知りたいなら、日本に行くといい。日本は世界で最も高齢化が進んでいる国だ。

一見すると、日本はこの人口動態の変化に実にうまく対処している。もちろん、日本は昔からほかにないほど社会の結束が強く、協調性が高い。家族も大事にする。この社会的な接着剤が果たす役割は非常に大きく「若い老人」(中年後期以上の人)が「年とった老人」(超高齢の人)の面倒をみる。日本の高齢者の多くが、一般的な定年退職年齢をすぎてもずっと有給の仕事をつづける。しかし、子どもがいない町もある。学校がなくなると、町は退職者のコミュニティになるが、やがて放棄するしかなくなる。

日本の高齢化・人口減少とその対策については、膨大な研究がなされている。政府の主要機関である国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、2045年には日本の労働力の4分の1が75歳超になる。だが、そのときにはどんな種類の仕事をしているのだろう。そして日本の生活水準はどうるのだろう。若い労働者は一般に高齢の労働者よりも生産性が高い。すでに日本の生産性は明らかに下がっており、労働者1人当たりの生産性はG7諸国でいちばん低い。時代遅れのビジネス慣行も労働者の高齢化と同じくらい大きな原因ではあるかもしれないが、生産性を上げるのはかなりむずかしいだろう。

日本はいま、穏やかで、秩序が保たれ、清潔で、犯罪が少ない。市民の多くは快適な生活を送っている。それでも1980年代のようにイノベーションをつぎつぎに生み出した社会ではなくなっており、かつてのダイナミズムを取り戻すことはまずない。日本では1990年代はじめから2010年まで経済はほとんど成長しておらず、「失われた20年」と言われている。しかし、経済の停滞は20年では終わらず、この先も長くつづくだろう。

それは問題になるだろうか。高齢者に対する労働人口の比率が現在の水準で安定するなら、たぶんちがう。だが、この比率は年々下がりつづけており、2045年には7人の高齢者をわずか10人の労働者で支える計算になる。外国から大規模な人口流入があれば状況は変わるかもしれないが、日本人はそれを拒否しているようだ。

和を尊ぶ日本の伝統的な精神のおかげでいまはなんとかなっているが、この先どうなるかはまったくわからない。

結局はこういうことである。少子高齢化が進んで生活水準が下がること、おそらく自分の親よりも下がることを若い人たちが受け入れる覚悟ができているのであれば、高齢化社会は円滑に機能できるはずだ。一番深刻な状況なのは日本だが、最大限の対策もとられているのではないか。しかし、ヨーロッパはどうだろう。

ヨーロッパは日本の後を追って同じような形で高齢化しつつある。南ヨーロッパ北ヨーロッパよりも出生率が低く、東ヨーロッパはさらに低い。南ヨーロッパ、東ヨーロッパとも、若者が国外に流出しており、北と西に移住している。ヨーロッパはつぎの日本だと言われているが、決してよい意味ではない。だが、ヨーロッパ諸国は2つの重要な点で日本とはちがう。ヨーロッパは社会が断片化されていること、そして人口の流入と流出が多いことだ。そのため、ヨーロッパには日本に似ているところ、少なくとも高齢化のパターンが似ているところもあれば、アメリカに似ているところもあり、抱えている課題はそれぞれ異なると考えるほうがいいだろう。
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移民を社会にどう統合するかについては、アメリカはヨーロッパよりもよくわかっている。これに関してはアメリカに1日の長がある。ヨーロッパは何世紀ものあいだ人口の純流出地域であって、純流入をほとんど経験していない。ヨーロッパ人にとって、人口の大量流入は最近の現象である。アメリカ人にとってはそれが基本だ。さらに、アメリカがこれまでに受け入れた移民の数は世界のどの国よりも多く、いまも最大の受け入れ国である。
アメリカは大半の移民が移住が移住先として最初に希望する国であり、多くは少なくとも最初は優れた高等教育を受けられる機会にひかれ、そしてほぼ全員が雇用市場という強力な磁石に引き寄せられる。人口増加の最大の原動力は、自然増から移住にシフトするだろう。既存の人口の出生率は下がり、1.8を割り込んでいると見られ、人口置換水準をを大きく下回る。
ヨーロッパの一部の国では出生率が上向いており、アメリカもそうなるだろうが、国の人口を増やすには移住が必要だという構図を変えるほどには回復しそうにない。

その結果として、アメリカの人口は2050年まで増えつづけるが、ヨーロッパの人口は収縮する。そうなると、先進世界の2大ブロックのあいだの関係は変わる。アメリカもヨーロッパも、マイナスにはたらくおそれがある力をプラスの力に変えることを求められている。しかし、それを成功させるのはヨーロッパのほうがむずかしいだろう。