じじぃの「カオス・地球_136_2050年の世界・いま生きている世界・ドイツ」

UK's University of Oxford tops World University Rankings 2021; UP ranks 401-500th

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=4k2C41C6lkE


THE世界大学ランキング2021 日本から116校がランクイン【一覧掲載】

2020.09.08 高校生新聞オンライン
英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は2020年9月、世界の大学を研究の影響力や国際性などの基準で順位付けした「世界大学ランキング」の最新版(2021年版)を発表した。
1位は5年連続で英国のオックスフォード大学。日本からは前年より6校多い116校がランクインした。中国をはじめアジアの大学の存在感がましている。国内の最高順位は東京大学の36位だった。
(記事末尾に日本からランクインした大学の一覧)
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/6768

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅

第1章 わたしたちがいま生きている世界

第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

                  • -

『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第1章 わたしたちがいま生きている世界 より

ドイツとベネルクス三国

ドイツは最先端分野の製造業で世界をリードしている。その繁栄ぶりを示す指標はたくさんある。

貿易黒字が世界最大である。自動車輸出額はダントツの世界1位であり、2019年の輸出額は1420億ドルと、2位の日本(980億ドル)を大きく引き離している。世界最大の医薬品輸出国でもある。

ほかのセクターでも世界トップがそれに近い水準にあり、世界中から称賛と羨望を集めている。特に注目されるのは、戦後期の大半を通じて、平価が切り下げられて自国製品が価格競争力を失いそうになるたびに、付加価値を高めてきたことである。つまり、ドイツマルクが切り下げられると、売り上げは一時的に落ち込むが、ドイツの産業界はそのたびにコストを削減し、品質を高めて、製品価格を上げてきたのだ。最近の例は2000年代はじめて、当初は競争力のないレートでユーロに参加した後のことである。成長率は低く、失業率は2桁に跳ね上がった。その当時、ドイツは「ヨーロッパの病人」と呼ばれていた、旧東ドイツの復興資金が財政に重くのしかかっていたからだ。しかしその後、ドイツは競争力を回復して、ヨーロッパ経済の原動力になった。労働市場改革の効果もあったが、とりわけ大きかったのが産業界の力と適応能力である。ユーロの為替レートは競争力に劣るユーロ圏の他の加盟国の状況を反映して決まるため、ドイツにとってユーロは割安になり、競争力はさらに高まっている。この状況もいつかは変るだろうが、それまではドイツの一人勝ちがつづく。

ところが、ドイツ経済には別の側面もある。輸出には強いが、それに比べると国内のサービス業の質は見劣りする。金融サービスも高等教育も弱く(ドイツの大学はどのランキングをみても、上位45校1つも入っていない)、一部のインフラでも後れをとっている。

しかしなによりも懸念されるのは、エンジニアリング産業の強さがこの先も大きな競争優位になるかどうかだろう。これから世界総生産に占める製造業の割合が小さくなる一方で、サービス業が成長ししていくと、サービス業の強さがいま以上に重要になってくるのではないか。異論はあるだろうが、ドイツは製造業セクターが大きいすぎるきらいがある。2019年のGDPに占める製造業の割合は、ドイツが19%だったのに対し、アメリカは11%、フランスは10%、イギリスは9%だった。それ以上に問題なのは、ドイツが大きな強みを持つ製品を買おうとする減っていきそうなことである。自動車がその最たる例だ。先進世界全体で若い人たちが車を使わなくなっている。運転免許をもつ人の割合も若い世代ほど低い。電気自動車はガソリン車よりもずっと簡単につくれる。バッテリー技術の開発はヨーロッパではなく、アメリカとアジアで進んでいる。

だからといって、ドイツは経済がとても成功している国ではなくなると言っているわけではない。過去70年間、ドイツは課題に直面するたびに、それにうまく対処してきた。ただこれからは、ほかのスキルのほうが相対的に見て、より重要になってくるだろう。たとえば高級品を生産する能力がそうであり、この分野では隣国のフランスがグローバルリーダーである。

ベネルクス三国については、経済が繁栄するかどうかはドイツにかかっている。ベルギーにはEUの本部があって、ヨーロッパの首都としての役割から大きな恩恵を受けており、そのEUへの最大の純貢献国がドイツである。
オランダ経済はほとんどドイツの分家になっていて、輸出全体の4分の1がドイツむけである。意外かもしれないが、人口密度が高いのに(メリーランド州とそれほど変わらない大きさの土地に1700万人が住んでいる)、オランダは農産物の輸出大国なのである。実際、農産物輸出額はアメリカにつぐ世界2位で、とまとの輸出額でもメキシコにつぐ世界2位である。

小国のルクセンブルクは人口が60万人と。ブリストルボルチモアと同じ規模だが、別のことで有名である。ルクセンブルクは世界でも指折りのお金持ちの国なのだ。産油国カタールカタールと非常に小さいリヒテンシュタインをおそらく例外として、1人当たりのGDPが世界一の富裕国である。

フランス

フランスは非常に興味深い。経済の多くの分野で目をみはるサクセスストーリーを実現している。
まずは高級品産業からはじめよう。世界の高級ブランド上位10社のうち、ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメスのトップ3を筆頭に、フランスが6ブランドを占める。1つの国が高級品事業をここで支配するというのは驚きだが、この支配がはじまったのが17世紀にまで遡ることである。ルイ14世の財務総監であるジャン=バティスト・コルベールは、「徴税の極意とは、ガチョウの羽を、できるだけ音を立てずに、できるだけ多くむしりとることである」と語ったことで知られる。

だが、1665年にはこうも述べている。フランスが富をどのように生み出したかを考えるなら、「フランスによってのファッションは、スペインにとってのペルーの金鉱のようなものだ」。フランス革命が起こると、高級品産業は一時的に止まったが、19世紀を通じて回復していき、1900年のパリ万国博覧会で、フランスは世界の文明の頂点をきわめた。

高級品ほどではないが、フランスが卓越している産業はほかにもある。新型コロナウイルスパンデミックが発生して海外旅行が制限される前は、フランスにはほかのどの国よりも多くの観光客が外国から訪れており、その数は年間9000万人近くにのぼった。また、アメリカ、ロシアにつぐ世界3位の武器輸出国である。

エアバス(ヨーロッパのプロジェクトだが、本社はフランスにある)は民間航空機の世界市場をボーイングとほぼ二分している。医療サービスの結果もとてもいい。一例をあげると、乳児死亡率はヨーロッパで(スウェーデンについで)2番目に低い。

どれもすばらしいことであり、そのうえアルプスの山々、地中海沿岸など、多様な美しい自然にも恵まれているとくれば、地上の楽園のように思えるのではないか。しかし、謎が1つある。フランスの人びとはあまり幸せではないようで、たとえばドイツ人やイギリス人よりも幸福度が低いのだ。理由の1つは、失業率が1世代にわたって高止まりしていることで、1990年年代なかばから9%前後の水準にある。失業すればだれでもつらい。もう1つはフランスの税金の高さだ。対GDP比で見た税負担率は世界の主要国のなかで最も高い。フランスの上はデンマークしかない。公共支出も多く、そのぶん公共サービスは充実している。それでも税負担が負担であるのに変わりはなく、憤りの声も聞かれる。

問題はそれだけではない。インサイダーとアウトサイダーの分断を抱えている。フランスの労働市場は大きく2つのグループに分かれている。賃金が高く、雇用が保護されて、十分な年金を手に早期退職していく中高年の労働者(インサイダー)と、非正規労働で、雇用はほとんど守られず、フルタイムの仕事と単発の仕事をかけもちしないと食べていけないような若い労働者(アウトサイダー)だ。フランスは雇用管理が厳しく、すでに雇用されている人は守られるが、仕事を探している人はその犠牲になる。特に打撃を受けているのが能力の不十分な若い人たちであり、多くは移民家庭で育った若者である。労働市場を改革しようとする取り組みはあったものの、政府は政治的な支持を十分にとりつけられていない。どこかの段階で変化が訪れるだろうが、それまでには雇用の低迷が重い足かせになる。フランスは多くの点で成功を収めているといえ、土台はもろい。労働市場の二重構造は、社会の二重構造の1つの表れである。全く異なる2つのものを1つにまとめるのは至難の業だ。