じじぃの「カオス・地球_128_なぜ世界はEVを選ぶのか?EVシフト・リストラ」

トヨタが正しかった…」中国EVシフトの末路がヤバい!国家レベルでEV推進した結果…【ゆっくり解説】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ZXbVBgtSzsU


ドイツEVシフト、労組は「覚悟」へ

2023.6.7 日経ビジネス 大西孝弘(ロンドン支局長)
電気自動車(EV)シフトが進むドイツでは、従業員の人員削減や働き方を巡り労使で激しい議論が交わされてきた。
最大の産業別労働組合「IGメタル」も以前はEVシフトに抵抗する局面もあったが、潮目が変わりつつある。リスキリングによる雇用創出、週休3日制などによるワークシェアリングで乗り越えようとの姿勢に転換しつつある。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/01804/

なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘

【目次】
はじめに
第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW
第2章 フォルクスワーゲン “地獄”からのEVシフト
第3章 これはトヨタの未来か VWが直面する5つの課題
第4章 「欧州の陰謀」論から世界の潮流へ
第5章 EVユーザーの実像 もはや「ニッチ」ではない
第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮
第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン
第8章 テスラとBYDの野望 電池と充電が生む新ビジネス
第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上

第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩

第11章 「出遅れ」トヨタの課題と底力

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『なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘』

大西孝弘/著 日経BP 2023年発行

第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩 より

約220万人が加盟するドイツ最大の産業別労働組合の「IGメタル」は、電気自動車(EV)シフトによる雇用への影響について度々警鐘を鳴らしている。
イェルク・ホフマン会長は2023年4月のドイツメディアのインタビューで、「ドイツメーカーは高級EVに集中しすぎだ。手ごろなEVがなければ、中国メーカーに市場を奪われ、ドイツでの雇用を維持できない」と語った。

ただ、23年春まで、ドイツの完成車メーカーでEVシフトを理由に大規模な人員削減が実施されることはなかった。独BMWは20年、人員削減をせずにEVの生産を増やしていくことを宣言。ドイツ東部のライプチヒ工場は22年にEV「i3」の生産を打ち切ったが、EV用部品の生産に切り替え雇用への影響は表面化していない。その一方で米フォード・モーターは、EVシフトに伴う欧州での人員削減を23年2月に発表した。

EVシフトで自動車業界の雇用はどうなるのか。働き続ける人たちにはどんな変化が求められるのか。労働組合が強いことでも知られる欧州は、雇用に関する日本との共通点が多い。欧州で自動車メーカーがEV化を急いだことで渦中に置かれた労働者たちの苦悩は、これからEVシフトが進む日本にとっても決して他人事ではない。

ドイツ最大労組、抵抗から覚悟へ

2023年5月、IGメタルの中央執行委員会が新会長候補を選出した。15年から会長を務めたイェルク・ホフマン氏に代わり、女性初の会長候補としてクリスティアーネ・ベンナー氏が指名された。10月に実施される組合員の選挙を通じて、正式に選任される。

ベンナー氏は1968年にドイツ西部のアーヘンに生まれた。2015年からIGメタルの副会長を務め、独BMWと独コンチネンタルの監査役も務める。

ドイツ最大の企業で、世界の移動者会社でも最大級のVWの従業員代表のトップにも初めて女性が就いている。21年にVW監査役でもある労働評議議長となったダニエラ・カヴァロ氏だ。

ドイツの自動車産業従事者にとって大きなテーマがEVシフトだ。EVはエンジン車に比べて部品点数が少ないため、生産に必要な従業員数が減少すると見られている。そのため、IGメタルやVWの従業員代表は当初、EVシフトが大規模な人員削減を招くとして強い懸念を示してきた。
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ホフマン氏は、ドイツで生産されているEVが高級車に偏っていることに警鐘を鳴らしている。大衆向けEVの開発が遅れているため、EVの生産台数が伸びず雇用を維持できなくなる恐れがあるからだ。ドイツで廉価版EVの生産が始まるのは、25年以降になると見られている。

ドイツでは23年からEV向け補助金が縮小したものの、新車販売に占めるEVの比率は増え続けている。EV関連の生産拠点も増えている。国内ではVWメルセデス・ベンツグループ、BMWの3社がEVの完成車工場や部品工場を持つほか、米テスラがベルリンに完成車工場と電池工場を持ち、米フォード・モーターもケルンでEV生産の準備を進めている。労組としてはEVシフトを批判するより、適切な移行で雇用の減少を食い止めようとする働きかけが多くなっている。

「安定した雇用をもたらせる」

VW社内でもEVシフトを巡り、さまざまな論争が交わされてきた。20年前後には、労働評議会議長だったベルント・オスターロー氏が、経営陣と激しく争った。

VWのEV生産について、当初は本社工場から始める案があったが、本拠地での人員削減を避けたい労組が強硬に反対し、東部の工場などからEV生産が始まったといわれている。20年ごろまではEVシフトに恐怖を抱き、労組は多くの課題を会社に指摘していた。EVシフトだけが要因ではないが、ヘルベルト・ディース前CEO(最高経営責任者)と対立し、同氏を何度も辞任の瀬戸際まで追い込んだ。

だが、欧州各社が一気にEVを発売し、EV販売が急増し始めた20年ごろから労組の姿勢が変わる。EVシフトを支持する発言が増えていった。オスターロー氏の後任としてVW労働評議会議長に就いたカヴァロ氏は、その方向性をさらに明確にする。

22年7月にドイツ北部のザルツギッターで開催された電池工場の定礎式。ショルツ独首相も訪れたこの式典では、工場のホールに従業員たちが集まり、建設開始を祝った。壇上に上がったカヴァロ氏は、「EVシフトは良い展望、良い仕事、安定した雇用をもたらせる」と語り、会場から拍手を浴びた。イベントの後にカヴァロ氏と立ち話をしたときも、EVシフトに理解を示していた。

カヴァロ氏はVWの従業員たちの気質をよく理解しているはずだ。1975年にVW本社があるウォルフスブルグで生まれ、VWコーチング(現グループアカデミー)でトレーナーとして働いた。2010年から労働評議会のメンバーに就任している。

22年10月の英フィナンシャル・タイムズのインタビューでもこう述べている。「私たち労働評議会は、ブレーキを踏む傾向があるように思われているようだが、それは違う。今、この変革(EVシフト)を成功させなければ、我々の仕事も危うくなる」