じじぃの「カオス・地球_127_なぜ世界はEVを選ぶのか?ニデック・電動アクスル」

世界制覇を狙う!NIDECのEV戦略 【NIDEC(6594)IR動画】

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https://www.youtube.com/watch?v=f8Mh7XOMlyk


ニデック、EV基幹部品1000万台へ 激化する電動アクスル争奪戦

2023.5.22 日経ビジネス電子版
●大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
エンジン車の販売が減少する中で、部品メーカーはどのように生き残るのか。事業拡大を狙う新興勢とメガサプライヤーが入り乱れ、電気自動車(EV)の基幹部品を巡る主導権争いが過熱している。
ニデック(旧日本電産)が電気自動車(EV)向け事業で攻勢をかけている。同社は5月18日、東欧のセルビアで新工場の開業式を開催した。同国のブチッチ大統領が参加し、新たな投資を歓迎した。ニデックはここで車載用のモーターやインバーターなどを生産する。将来的には欧州のEV向けにモーターやインバーター、変速機の主要3部品を一体化した電動アクスルを量産する。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/051800176/

なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘

【目次】
はじめに
第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW
第2章 フォルクスワーゲン “地獄”からのEVシフト
第3章 これはトヨタの未来か VWが直面する5つの課題
第4章 「欧州の陰謀」論から世界の潮流へ
第5章 EVユーザーの実像 もはや「ニッチ」ではない
第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮
第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン
第8章 テスラとBYDの野望 電池と充電が生む新ビジネス

第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上

第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩
第11章 「出遅れ」トヨタの課題と底力

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『なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘』

大西孝弘/著 日経BP 2023年発行

第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上 より

エンジン生産縮小が独部品メーカーを直撃

欧州自動車部品工業会(CLEPA)は2021年12月、エンジン車からEVへのシフトにより、約27万5000人の雇用が危険にさらされると警告した。

35年までにエンジン車の新車販売が禁止された場合の試算として、EV向けパワートレーン製造に22万6000人の新規雇用が見込まれる一方、エンジン部品製造の部品メーカーで働く50万1000人の雇用が脅かされるとした。部品メーカーは完成車メーカーとの長期契約に縛られており、機敏に反応できない。そのため、CLEPAは完成車メーカーよりも部品メーカーがEVシフトの影響を受けやすいと指摘している。

激化する電動アクスル争奪戦

ニデック(旧日本電産)は23年5月、東欧のセルビアで新工場の開業式を開催した。同国のブチッチ大統領が参加し、新たな投資を歓迎した。ニデックはここで車載用のモーターやインバーターなどを生産する。将来は欧州のEV向けに、モーターとインバーター、変速機の主要3部品を一体化した「電動アクスル」を量産する。

電動アクスル事業は23年3月期まで赤字だったが、24年3月期に黒字転換する見通しだ。23年3月期に33万9000台だった販売台数を、24年3月期には94万9000台まで伸ばす。従来の供給先は広州汽車集団吉利汽車など中国車メーカーが中心だったが、今後は欧米に広げていく。今期は中国向け電動アクスル販売の中で、利益率の高い第2世代の割合を71%まで高めるという。

4月に開いた決算説明会では、最大7つの部品を一体化した第3世代の電動アクスルを開発していることも明らかにした。常務執行役員で車載事業を担当する早舩一弥氏は、「トータルで大幅なコストダウンになる」と話す。さらにほとんどの部品を内製できることが強みになるという。

30年度には、電動アクスルの販売台数を1000万台に引き上げる目標がある。永守重信会長兼CEOは決算説明会で、「30年のEVの値段は20年に比べ5分の1になるので、部品のそれも5分の1になる」と指摘した上で、「早くやったら勝てる」と語った。

今後の大手自動車部品メーカーにとって、電動アクスルはエンジン関連の代替となる事業のため極めて重要だ。EVにおいては電池に並ぶ基幹部品といえる。

完成車メーカーとしては、エンジン車より量産の歴史の浅いEVの開発はまだ手探りの部分がある。そのため、この段階で基幹部品お納入できれば、将来の販売増加につながる可能性が高い。EV市場の拡大を見据え、自動車部品メーカーが激しい競争を繰り広げている。

早期のシェア拡大を狙って鼻息が荒いのがドイツ勢だ。自動車部品大手である独ZFはもともと変速機が主力だったが、15年に米TRWオートモーティブを買収するなど総合部品めーかーに変身。電動化への需要が高まっていたことから、いち早く電動パワートレーン関連の部品を立ち上げた。

4兆5000億円超の受注残

ZFは35年に世界でEVと燃料電池車(FCV)の生産台数が年間8400万台に達するという見通しを示す。電動パワートレーン・テクノロジー事業部のシュテファン・フォン・シュックマン取締役は、「経営資源を電動化関連部品に一気に振り向けている」と話す。さらに「ハイブリッド技術などの開発を通じて、モーターとインバータートランスミッションの技術を磨いてきており、その技術的な蓄積が電動アクスルに応用されている」と自信を示す。

同社は顧客のEV開発を支援している。完成車メーカーがZFの車台(プラットホーム)を活用すれば、EVの開発期間短縮やコスト削減のメリットがあるという。電動アクスルの受注残は300億ユーロ(約4兆5000億円)を超えている。

さらに力を入れるのが、800ボルトへの対応だ。現在のEV用電池の電圧は400ボルトが多いが、充電時間の短縮などを狙って800ボルト以上に高める動きが広がっている。既に高級車では800ボルト対応のEVが増えている。

800ボルト対応のEVでは、炭化ケイ素(SiC)を使ったパワー半導体が主流になりそうだ。従来のシリコン(Si)製パワー半導体より高電圧に強く、電力損失が少ないからだ。そこでZFは23年4月、スイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクスからSiC半導体を25年以降数千万個調達することを発表。シュックマン取締役は「最初は高級車から始まるが、徐々に大衆車にも広がっていく」と市場の広がりに期待する。