じじぃの「カオス・地球_124_なぜ世界はEVを選ぶのか?ボルボCEOの警鐘」

Volvo EX30 Japan Launch Press Conference

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=cuuURCXvVDE

ボルボ 新型のコンパクトSUV「EX30」


新型ボルボEX30 若いユーザー向け小型EV、初公開 「最小にして最速」 クロスカントリー

2023/6/7 Yahoo!ニュース
●0-100km/h加速3.6秒 ボルボ最速のEVに
ボルボは6月7日、新型のコンパクトSUV「EX30」を発表した。
若い顧客層の獲得を目指し、ブランドの電動化の「礎」となる新世代のEVである。

欧州価格は約3万6000ユーロ(約535万円)からとなり、月額599ユーロ(約9万円)のサブスクリプション・プランも用意されている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/97bd261b35fefdf7fa29812922ccedf2677b8c3b

なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘

【目次】
はじめに
第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW
第2章 フォルクスワーゲン “地獄”からのEVシフト
第3章 これはトヨタの未来か VWが直面する5つの課題
第4章 「欧州の陰謀」論から世界の潮流へ
第5章 EVユーザーの実像 もはや「ニッチ」ではない

第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮

第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン
第8章 テスラとBYDの野望 電池と充電が生む新ビジネス
第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上
第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩
第11章 「出遅れ」トヨタの課題と底力

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『なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘』

大西孝弘/著 日経BP 2023年発行

第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮 より

米テスラや中国の比亜迪(BYD)など電気自動車(EV)を主力とするメーカーが躍進する中、既存の自動車メーカーは変革に迫られている。長きにわたってエンジン車を販売し、多くの顧客を抱えている分、戦略の転換には痛みを伴う。EVシフトを中途半端に進めれば、専業メーカーに太刀打ちできずに埋没してしまう恐れもある。

EVという新しい市場が拡大する中で存在感を高めるためにはどのような道があるのか。思い切ったEVシフトで大胆な路線をひと走るのがスウェーデンの高級車メーカーであるボルボ・カーだ。21年3月に「30年までに新車販売の全てをEVにする」と発表し、EV専業宣言をする自動車メーカーの先駆けとなった。最終目標を掲げるだけでなく、ロードマップとなる中期的な目標も示した。25年に新車販売の50%をEVにして営業利益率を8~10%にすることを目指す。

INTERVIEW IT出身のボルボCEOが鳴らす自動車業界への警鐘

ボルボ・カーCEO ジム・ローワン氏

ボルボのジム・ローワンCEOには、1年ほどの間に3回インタビューする機会を得た。就任から間もない2022年6月の初回こそ話の内容がやや抽象的だったが、23年2月および6月の2回目と3回目は、テック業界の構造転換と照らし合わせながら自動車業界に警鐘を鳴らすなど、より踏み込んだ話になった。異業種の出身だからこそ見えるEVの本質とは何か。総集編でお届けする。

――IT(情報技術)業界出身のローワンCEOから見て、今後の自動車業界ではどんなことが重要になっていくと思いますか。

私は技術畑出身で、ブラックベリーやダイソンの家電部門などに所属してきました。自動車業界とテック業界の大きな違いは、設計して市場に出す方法だとおもいます。自動車業界を理解し始めた時にとても驚いたのは、いかに多くの技術がティア1のサプライヤーに外注されているかということでした。そうしたサプライヤーから電子制御ユニット(ECU)などを購入して、それを組み合わせているのです。
それこそが、私たちがコアコンピューター・アーキテクチャー(車内の主要機能を管理するコンピューターを中核とするシステム構造)へと移行している理由であり、ソフトウェアを動かす半導体をさらにコントロールできるようになりたいと考える理由でもあります。クアルコムやエヌビディアなどの苦行から半導体を購入していますが、その技術やチップへの書き込み方法、レーダー、ブレーキなど、車の機能をコントロールする全てのソフトウェアを深く理解したいと考えています。ソフトウェアと半導体は未来を大きく変える要素であり、それを理解していあい自動車メーカーの先行きはかなり厳しいでしょう。

――ボルボはグーグルやアップルといったテック企業と提携しています。そうした大企業と組む中で、ボルボのブランドの独自性をどのように保つのですか。

それは、私がボルボで働き始めてから多くの時間を費やしてきたことです。何を自社で製造し、何を市場から購入するのかという決断に関しては規定をつくり、それに沿うようにしてきました。インフォテインメント(情報と娯楽)システムの基盤として採用したクアルコムプロセッサーは、多くのスマートフォンで使われている非常に優れたものです。
そして、コアコンピューターの分野では計算能力の面でエヌビディアが業界をけん引する存在だと見られています。こうしたチップセットを自社で開発する必要はないというのがボルボの判断です。それが良い投資になるとは考えていません。
私たちが投資に力を入れたいのは、電気駆動システムです。自社でモーターやインバーター、電池、ソフトウェアを開発します。インバーターなどを構成する内部の部品について新しい素材を検討することもあります。例えばパワー半導体の材料をSiC(炭化ケイ素)などにすれば、インバーターの性能を高められます。そうした価値を生み出せる分野に重点に投資しています。

――電池に関しては、どんな投資計画がありますか。

最初の電池工場はスウェーデンに造ります。自社製造でコストを削減できるだけでなく、アジアからの電池の輸送で発生する大量のCO2も減らせます。(スウェーデンの新興電池メーカーである)ノースボルトとは研究開発の合弁会社をつくり、生産と技術という2つの側面で提携しています。
そして、サプライヤーによる電池も使用します。100%を自社の電池にするわけではありません。ノースボルトの電池を中国に輸送するのではなく、中国内の企業とのパートナーシップを維持して、彼らの電池を使うことになるでしょう。4社の異なる電池サプライヤーと提携していますが、そのほとんどと関係を継続することになると思います。

――電池材料の調達ではどのような手を打っていますか。

公には発表していませんが、世界の採掘大手と仲介を通さず、直に契約を結びました。地中から現材料を掘り出す業者との関係構築はコストの削減につながります。また、サプライチェーンの状況によらずにその素材を確保できる利点もあります。

――高級な車種はEVシフトに伴うコストを価格に反映しやすいかもしれませんが、大衆向けのEVは価格転嫁が難しいのが現状です。

モバイル業界でフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへの転換が起こった時、私はその中心にいました。ノキアモトローラソニー・エリクソンなどが他のメーカーに地位を奪われることなど、それまで考えられないことでした。
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――EVに参入した自動車メーカーは、電池のコストが原因で利益を損なうかもしれません。EVの価格をエンジン車よりも高くする考えはありますか。

現在ボルボが製造している車は、エンジン車でもHVもEVでも、同じ価格にしています。25年までにコストのベースは同じになるようにします。
100年前、駆動システムは蒸気機関でした。その後内燃機関が出てきて、エンジン車ができました。内燃機関と比較すると、蒸気機関は非常に効率が悪かった。人々はすぐに内燃機関に移行しました。当然、内燃機関のシステムでも様々な素材や構造などで大幅な改善が行われてきました。そして、次世代のシステムが電気なのです。
私たちはある技術から違う技術への移行する重大な転換のさなかにいます。確かに現時点では、電気駆動システムのコストは高いかもしれません。それはまだ世界の車の5%にしか使われていないからです。より多く活用されて大量生産され改善も進めば、EVのコストは下がります。エンジン車を買う人が減り、エンジン車のコストは上がります。
IT業界出身の私の経験をもう少しお話ししましょう。最初にノートパソコンが世に出た時は、大変高価なものでした。当時は、持ち歩けるパソコンがどうしても必要な人のみを対象とした製品でした。

それが、今では誰もがノートパソコンを持っていますね。デスクトップパソコンを見かけることがめっきり少なくなりました。初期のノートパソコンには「電池が持たないから電源につないだまま使わなくてはならない」という不満の声がありましたが、それも技術開発が進み、充電せずに1~2日使えるようになった。摩擦因子がなくなったわけです。

車も同じです。EVの普及における摩擦因子は、ノートパソコンの時と同じように少しずつ解決に向かっています。それらの問題が解決されれば、誰もがEVを使うようになります。

そもそも考えてみてください。今から6年後の29年に、古い技術(エンジン車)に数万ドルも払いますか? どうせなら最新の技術を搭載したものを買いたいと思いますよね。その方が将来売るときの残存価値も大幅に高くなるはずです。