じじぃの「カオス・地球_125_なぜ世界はEVを選ぶのか?フェラーリの今後」

約50年ぶりの復活 フェラーリ 新型ル・マンハイパーカー初公開 2023年デビュー

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https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=L5PQnzmCOIo

【ルマン24時間】フェラーリが58年ぶりの通算10勝目


【ルマン24時間】フェラーリが58年ぶりの通算10勝目…トヨタ惜敗の2位、6連覇ならず

2023年7月9日 レスポンス
2023年のルマン24時間耐久レースは現地6月10~11日に決勝を実施し、#51 フェラーリ499Pが総合優勝を飾った。
フェラーリが総合優勝を争うクラスに参戦したのは50年ぶりとされ、勝利は58年ぶり10回目。6連覇を目指したトヨタは惜敗の2位。
https://response.jp/article/2023/06/12/372043.html

なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘

【目次】
はじめに
第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW
第2章 フォルクスワーゲン “地獄”からのEVシフト
第3章 これはトヨタの未来か VWが直面する5つの課題
第4章 「欧州の陰謀」論から世界の潮流へ
第5章 EVユーザーの実像 もはや「ニッチ」ではない
第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮

第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン

第8章 テスラとBYDの野望 電池と充電が生む新ビジネス
第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上
第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩
第11章 「出遅れ」トヨタの課題と底力

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『なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘』

大西孝弘/著 日経BP 2023年発行

第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン より

昼夜ぶっ続けで24時間響き渡ったエンジン音に替わり、人々の歓声があふれかえった。

2023年6月11日にフランス・ルマンで開催された「ルマン24時間耐久レース」だ。全長13キロメートル超のコースを24時間で何周走行できるかを競うもので、世界3大自動車レースの1つに数えられる。

今回のルマンで最高峰カテゴリー「ハイパーカークラス」の総合優勝を果たしたのはイタリアのフェラーリ。24時間にわたる走行を終えてフェラーリ51号車がゴールすると、サーキットは熱狂に包まれた。コースに関係者やファンなどがなだれ込み、興奮した人々が握手したり、抱き合ったりしていた。

熱狂するのも無理はない。今回は1923年に第1回が開催されてから100周年となる記念大会だ。フェラーリのベネデット・ビーニャCEO(最高経営責任者)やトヨタ自動車豊田章男会長、欧州ステランティスのカルロス・タバレスCEOなど、多くの自動車メーカー首脳も集結していた。

100周年のルマン「EVはいらない」

ルマン24時間耐久レースは、最大級のエンジン車の祭典とも言える。その名物の1つが豪快なエンジン音だ。24時間を通して「フューン、フューン」とエンジン音が響き渡っており、会場の近くに泊まればそのエンジン音の中で眠りにつくことになる。

観戦に訪れたファンたちは、自動車のパワートレーンの未来をどのように捉えているのだろうか。何人かに聞いてみた。

50代のフランス人であるミッシュル・ピティットさんは、フランス南部でスペインの国境近くのバイヨンヌから車でルマンまで走ってきた。2006年から毎年観戦に来ているという。愛車は独アウディの「A3」だ。

フランスでもEVの販売が伸びており、アウディはEVのラインアップを充実させている。ピティットさんに「EVはどう?」と聞いてみると、即座に「ノー」と答え、様々な理由を挙げた。「価格が高いのもあるけど、最大の課題は航続距離の短さだよね。私の家の近くには充電ステーションが少ないから不便だ。EVに乗っていたら、充電に困ってルマンに来られなかったかもしれない」

レースに水素カテゴリーを新設へ

自動車技術の進化をけん引してきた自動車レースだが、今はCO2削減を目指すのがトレンドになっている。

ルマンではトタルエナジーズがCO2排出量の少ない合成燃料をチームに提供している。ブドウの搾りかすから生産したものだ。ルマンを何度も取材しているモータージャーナリストの島下泰久氏は「以前は1日中コース近くにいると肺ガスで息苦しくなる感じもあったが、今は合成燃料のためかそれが改善されている」と指摘する。

自動車レースの最高峰といわれるフォーミュラ・ワン(F1)でも、26年からパワーユニットの最高出力に対する電動モーターの比率を高めると同時に、合成燃料などカーボンニュートラル燃料を使うことになりそうだ。

今後のルマンで注目されているのが水素だ。ルマンの主催団体であるフランス西部自動車クラブACO)は、26年から水素のカテゴリーをつくることを検討している。最初は燃料電池車(FCV)を念頭に置いていたが、ACOのピエール・フィヨン会長は、トヨタが力を入れる水素エンジン車も対象に加えることを明らかにした。

トヨタは6月9日、ルマンで水素エンジンを採用したレーシングカーを公開。豊田章男会長はルマンが設ける水素カテゴリーへの参加を見据えていると説明し、「ライバルメーカーにも水素をおすすめしたい」と呼びかけた。トヨタは21年5月に日本の富士スピードウェイで開催された24時間耐久レースで水素エンジンのカローラを完走させるなど、水素エンジン車でのレースの実績がある。トヨタが披露した「未来のレーシングかー」は、多くの来場者の注目の的となっていた。

トヨタは22年までルマン24時間で5連勝をなし遂げたが、この間は主要なライバルが出場していなかった。今回は主催者がハイパーカークラスへの参加要件を緩和し、多くのメーカーが参加。トヨタの他にフェラーリやポルシェ、米キャデラック、仏プジョーなどが参加し、7大メーカー(ブランド)の計16台が競うことになった。世界耐久選手権(WEC)の第4戦と位置付けられたこのレースは、第3戦までのチームランキングで首位を走るトヨタに他のメーカーが挑む構図だった。

現地で10日にスタートしたレースは、ハイブリッド技術で圧倒的な強みを持つトヨタと、自動車レースを会社の競争力の源泉とするフェラーリとの一騎打ちの様相になった。レースは終盤までもつれ、最後はフェラーリが逃げ切り、50年ぶりの出場で10回目の優勝を飾った。

INTERVIEW 水素エンジン開発もフェラーリCEOが語る転機

フェラーリCEO ベネデット・ビーニャ氏

売上高に占める研究開発費の比率が高いフェラーリにとっては、エンジン車と同様にEVの開発費が膨らむと収益の圧迫要因になり得るという課題もある。EVでどのようにフェラーリらしさを出し、今の利益水準を維持、もしくは高めていくのか。「EVシフトの谷」をどう乗り越えるのかをフェラーリ本社でビーニャCEOに聞いた。

――今後はEVとエンジン車はどのようなバランスになるのでしょうか。

26年には40%がエンジン車、60%がEVとHVとなり、30年には20%をエンジン車、40%をEV、40%をHVにするのが目標です。様々な種類の製品を提供し、顧客にベストなクルマを選んでもらいます。私たちが選ぶのではありません。

――メーカーが将来のパワートレーンごとに比率を定めるのは難しいですよね。

あえてこういう言い方をしますが、私には顧客の需要が予測できません。私たちができることは、選択肢を提供することです。3種類のパワートレーンを持つ製品を提供し続けることです。言えるのはそれだけです。
現在はEVの割合を増やそうとしています。さらに市場の需要が増えると分かっているので、より多くの設備投資を行います。この3種類の製品が結果的にどのような比率になるのかは、今後明らかになるでしょう。

――フェラーリは30年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。エンジン車でどのように達成するのでしょうか。新たな燃料を使うのでしょうか。

我々は3つのアクションでカーボンニュートラルを達成していきます。1つ目は、物流や生産に関するCO2排出をゼロにすること。2つ目は、製品を電動化すること。3つ目はリサイクルされた素材を使用し、カーボンフットプリント(製品のライフサイクル全体のCO2排出量)を減らすことです。
さらに、気候変動問題の解決に向けた取り組みも行います。外部企業と提起してCO2削減のプロジェクトを進めます。またローカルな取り組みとして自社で植林を行い、排出した分のCO2と相殺します。20年以内にeフューエルを使うことも視野に入れています。

――会見では水素を燃料に使ったエンジンについて言及していました。水素エンジンのポテンシャルについて、どのように考えていますか。

水素のエネルギー密度はガソリンのエネルギー密度よりずっと高いため、理論としてはとても良いコンセプトです。ただ、水素を保管するため車内にスペースが必要となります。この10年では、フェラーリに水素が使われるようにはまだならないと思います。
その次の10年では、可能性はあるかもしれません。その10年で実現するために、今から始めないといけないのです。電動化に関しても同じようなプロセスがありました。10年以上前から電動化に取り込んだため、EVの開発に今、足を踏み入れられているのです。電動化に向けて開発を始めたのは13年前です。フェラーリにとってEVは、真新しいものではありません。

――既に水素を用いるエンジンの開発を始めているのですか。

はい、いくつかのパートナーと開発を始めています。ただ、水素エンジンは30年より前には登場しないでしょう。

――エンジン車とEVの両方に投資すると、研究開発費や設備投資が膨らむのではないでしょうか。特にEVでは電気制御が増え、機能のアップデートなどソフトウェアの役割が増えるため、多くの企業がソフトウェア投資を強化しています。

なぜ大きな投資が必要になるのでしょうか。ソフトウェアにおいては、大きな投資が必要なのは自動運転用とパフォーマンス用の2つです。
フェラーリでは、自動運転用ソフトウェアは必要ありません。パフォーマンス用のソフトウェアは持っています。(EV開発において)ゼロからスタートしたわけではなく、さらなるソフトウェアへの大きな投資は必要ないのです。
私たちが開発している(パフォーマンス用の)機能では、10年前からレース向けに開発してきたものを活用しています。今、オペレーティングシステムを開発しようとしている企業は、そのソフトウェア開発が必要になりますが、我々にはその必要がありません。

――EV開発に関連して、新しいエンジニアが必要になりますか。

開発のための技術を持った従業員も必要です。フェリーにいるのは、工場で働く従業員だけではありません。半導体を扱う人やオペレーターなど、様々な職種の従業員が必要です。

フェラーリは大衆車ではなく、ラグジュアリー市場用のユニークな車を造る会社です。また、従業員を何万人も抱える企業ではないということも忘れてはいけません。事業転換の段階では、規模が小さい方が、難度が低いと思います。

イノベーションフェラーリのDNAに組み込まれています。フェラーリでうまくいっていることが他の企業でうまくいくとは限りませんし、逆もしかりです。

新聞に大きく掲載されている(自動車業界の)課題は、明らかにフェラーリではなく、他のメーカーに当てはまることでしょう。