じじぃの「カオス・地球_97_プーチンは何をしたかったのか?はじめに」

いかにして権力を握り、現在の統治国家を築き上げたのか――ドキュメンタリー『プーチンより愛を込めて』予告編【2023年4月21日公開】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=EpVaYM5zy20


寺谷 弘壬(てらたに ひろみ)

青山学院大学名誉教授。
1937年神戸市生まれ。1960年神戸市外国語大学ロシア語科卒、フルブライト全額支給生として米プリンストン大学大学院社会学部博士課程に学ぶ。
プリンストン大学ロシア研究所研究員、コロンビア大学客員研究員、ネブラスカ大学大学院教授(リンカーンオマハ)。ソ連にも留学し、ロシア、アメリカ、オーストラリア、韓国の大学などで教える。日本では、青山学院大学(国際社会学)ほかいくつもの大学で教える。現在、国際比較研究所研究所長、青山学院大名誉教授。
著書に『ロシア・マフィアが世界を支配するとき』、『プーチンは何をしたかったのか?』(いずれもアスコム)など70数冊。

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プーチンは何をしたかったのか?

【目次】

はじめに

第1章 プーチンは、何をしたかったのか?――なぜクリミア併合、ウクライナ侵攻へ至ったか
第2章 プーチンとは、いったい何者なのか?――スパイを夢見た少年時代、若き日の挫折、そして一大転機で権力者へ
第3章 どうやってロシア大統領になったのか?――最高権力者まで上り詰めた疾風怒涛の4年間
第4章 権力者となったプーチンをとりまく人々――政治を動かすオリガルヒ、愛すべき家族や親族
第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは?――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る
第6章 プーチンの支配はいつまで続き、どう倒れるのか?――プーチンの哀れな末路と、ロシア再生への道

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プーチンは何をしたかったのか?』

寺谷弘壬/著 アスコム 2023年発行
妻に恐怖の「ヴァンパイア」と言われたプーチンの真実!ロシア研究60年の著者がQ&Aでズバリ回答!

はじめに より

いま、私は、はらわたが煮えくり返るほど怒っています。絶望的に悲しい思いでもいます。プーチン大統領のロシアが突如、隣国ウクライナへ理不尽に侵攻したからです。

首都キーウ(ロシア語読みではキエフ)攻略で政権崩壊を図り、うまくいかないと、転戦して東部4州は俺のものという。行く先々の町や村で虐待や処刑を繰り返す。病院も学校も住宅も見境なしにミサイルを撃ち込む。なお抵抗が続けば、エネルギー施設を狙って破壊し、厳冬を悪用して人々を苦しめる。21世紀も4分の1が経過しようという現代に、”兄弟” ”1つの民族”とうそぶきながらウクライナ全土を戦場と化す無法が、許されるはずもありません。

いったい全体プーチンは何を考えているのでしょうか。

みなさんも2022年2月24日以来、この疑問をずっと抱き続けているでしょう。すでに1年以上の時間が経過しました。

私は18歳でロシア語を勉強してから60年以上ソ連やロシアを研究し、アメリカ、ロシアといったさまざまな大学や研究所で教えてきました。米プリンストン大学の大学院にフルブライト全額支給生として留学し、そのロシア研究所に在籍し、ソ連モスクワ大学に短期留学もしました。ソ連とロシアに関する本を70冊以上書き、ロシア語や英語から翻訳した本も20冊以上に上ります。ソ連とロシアを、いったい何十回訪れたでしょうか。

ですから私は、ソ連もロシアも、そこに住む人びとや文化のことも熟知しています。ダメなところは少なからずありますが、60年ずっと愛し、気にかけてきたのです。

ゴルバチョフ大統領とは数回話しました。エリツィン大統領とは浅草の料亭で一夜をともに飲んだこともあります。日本酒を1升は飲まれたあとに、「これは水だ!」とどなられたこともあります。

プーチンとは出会ったことはありません。彼が大統領になったとき「人権を守る」「民主主義を維持する」と宣誓しながら、ムチャクチャなことをやりはじめ、ついにウクライナ侵攻までやってのけたのです。面識こそありませんが、本書では日本ではほとんど知られていない情報も入れ込んで、精魂込めてプーチンを書いたつもりです。

Q&A形式にして、プーチンのさまざまな疑問に端的に答える、わかりやすいコンパクトな本が完成したと自負しております。

ウクライナやロシアに関心を寄せ、その現状を憂えるみなさんに、いささかでも参考になれば、筆者としてこれほどうれしいことはありません。

      2023年 3月 寺谷弘壬 (強調印字は筆者による)