「cool-hira "カオス・地球_" 日本がウクライナになる日」画像検索
プーチンの異常なウクライナ「執着」の源...1000年に及ぶ歴史から完全解説
2022年3月10日 ニューズウィーク日本版
<ウクライナとロシアの対立の原因は、文化や宗教をめぐって起こったキエフ大公国にまでさかのぼるあまりにも古い軋轢にある>
「キエフの君主は、古代ルス(ロシア)において支配的な地位にあった。これは9世紀後半からの慣例である。『原初年代記』には、オレグ公がキエフについて語った『ロシアの全ての都市の母になれ』という言葉が残されている」
プーチンも示しているが、ロシアとウクライナの密接な関係を示す説の裏付けの大半は宗教に絡んでいる。始まりは、988年に東方正教会を国教としたことで知られるキエフ大公のウラジーミル1世だ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98252_1.php
『日本がウクライナになる日』
河東哲夫/著 CCCメディアハウス 2022年発行
プロパガンダにだまされるな。「プーチン=悪、ゼレンスキー=善」という単純な見方でウクライナ危機の深層は分かりません。外交官・作家としてソ連・ロシア観察50年の実感から書いた、歴史・軍事・地政学に基づくロシア・ウクライナ関係の多角的分析。
第2章 どうしてこんな戦争に?―ウクライナとは、何があったのか より
「スラブの本流はロシア」という歴史の誤認
プーチンは法学部出身だから、日本との北方領土問題でも法的な知識(ロシアに都合のいいように脚色して)をずいぶん披露した。そして今度の宇露戦争では歴史を入念に勉強している。そういうことは学者の仕業なのだが、プーチンは北朝鮮ばりに、歴史の解釈も「国営化」したいようだ。既に言ったように、彼は2021年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的同一性について」という論文を発表した。同じくエセ論文の手法を取ったスターリンは、役人たちにそれを徹底的に学習させては実際の政策とした。批判すると、密告され、逮捕され、職と地位は奪われた。
プーチンは同じようなことをやろうとしているのだろうか。僕の知っているプーチンはもう少しリベラルだった。部下たちの官僚性をからかうようなことをよく口にした。ところが、このごろはスターリンに先祖返りだ。気持ち悪い。
僕も歴史の専門家ではないが、これまで読んだ本を総合すると、プーチンの言い分とは違う図が見えてくる。ウクライナ人とロシア人は確かに同根なのだが、本家はむしろウクライナ人なのだ。
『ロシア原初年代記』などによれば、9世紀、今のロシア西部の豪族たちに招き寄せられた北方のヴァリャーグ人=ヴァイキングが、ノヴゴロドやキエフなどに根拠地を作り、現地の住人と通婚してウクライナ人、ロシア人の原型を作っているからだ。
つまり今の「スラブ人」の故地はキエフの方、スラブ人統合の”権利”があるとすれば、ウクライナ人の方なのだ。
それにもし、人種的に近ければ統合の”権利”があるなどと言ったら、中国は喜び勇んで極東ロシアの黄色人種を「統合」してしまうだろう。
「植民地」が必要なロシアの経済力
ついでに言っておくと、10世紀のキエフやノヴゴロドは商業で繁栄し、ドイツの中世都市にも似て大商人たちがいちおう民主的な統治をしていた地域なのだ。彼らはヴォルガ川水系からドニエブル川と黒海を通ってビザンチン帝国の首都コンスタンチノーブル(シルクロードの産品が集積される商業のハブ)とバルト海地域を結ぶ貿易ルートを作る。
キエフは1240年、モンゴルに制圧される。モンゴル統治を免れたノヴゴロドも、1478年にはモスクワ大公国に併合され、のちに、イワン雷帝によって市民を虐殺され、その自由を奪わる。一方でモスクワはモンゴル来襲以後、モンゴル人支配者のための税金集めを請け負い、これを着服することで急に伸びた侵攻勢力だ。やがてモンゴル勢力を駆遂すると、ウラル山脈を越えて征服を開始。1860年の北京条約では、ウラジオストク周辺の沿海地方を清朝から奪い、300年かけて今のロシアのもとを作った。