じじぃの「カオス・地球_94_第3の大国インドの思考・半導体のサプライチェーン」

沸騰!NEXTフロンティア ~動き出した“巨象”に挑む~人口世界一インド PMModi “Make in India” Shinkansen&semiconductor【WBS特別版】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xSnE-3A5dCs

半導体競争にインドが参戦?


半導体競争にインドが参戦 人口世界一の国は何を目指す?

2023年7月11日 NHK
インド西部グジャラート州の最大都市アーメダバードから100キロ以上。
ここにいま、インド初の半導体の生産拠点を作る計画が進んでいるというのです。
地元州政府から特別に取材許可がおりました。
工業団地の敷地面積は920平方キロメートル。
東京ドームおよそ2万個分、大阪市が4つすっぽりと入る土地で、果てしなく広がる地平線に思わずことばを失いました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230711/k10014125051000.html

第3の大国 インドの思考――激突する「一帯一路」と「インド太平洋」

【目次】
まえがき
序章 ウクライナ侵攻でインドが与えた衝撃
第1章 複雑な隣人 インドと中国
第2章 増殖する「一帯一路」――中国のユーラシア戦略
第3章 「自由で開かれたインド太平洋」をめぐる日米印の合従連衡
第4章 南アジアでしのぎを削るインドと中国

第5章 海洋、ワクチン開発、そして半導体――日米豪印の対抗策

第6章 ロシアをめぐる駆け引き――接近するインド、反発する米欧、静かに動く中国

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『第3の大国 インドの思考――激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』

笠井亮平/著 文春新書 2023年発行

第5章 海洋、ワクチン開発、そして半導体――日米豪印の対抗策 より

ペロシ訪台で際立った台湾の重要性

2022年8月、台湾海峡では緊張が急速に高まっていた。台湾近海で中国軍による大規模な軍事演習が行われたためだ。

理由は明らかだった。この月の2日夜から3日にかけて、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が台北を訪問し、蔡英文総統と会談、台湾の民主主義を守っていくというアメリカの決意を強調した。

中国にとって台湾問題は絶対に譲ることのできない核心的利益のひとつだけに、猛烈な反発を示した。
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アメリカも、米台間で高位の政治家の訪問を行われれば、中国の激しい怒りを引き起こすことは織り込み済みだったろう。過去には1995年に台湾の李登輝総統が訪米し母校のコーネル大学で演説をした際、中国が猛反発して軍事的示威行動を行い、第三次台湾海峡危機に発展したこともあった。それでもバイデン政権はペロシ訪台を黙認し、2022年だけで6回にわたり台湾への武器売却を行うなど、台湾との関係強化に動いている。その背景には、単に対中牽制というだけでなく、半導体をめぐる米中対立があると思われる。

半導体は、コンピュータスマートフォンはもちろん、自動車から電化製品、精密機械まできわめて多くの製品にとって頭脳の役割を果たす、不可欠の戦略物質だ。半導体の製造は大きく2つに分かれている。

ひとつは設計で、AMDクアルコム、イギリスのアームといった企業が代表格だ。こうした半導体企業は自社で生産を行わない「ファブレス企業」で「ファウンドリ―」と呼ばれる企業に製造を委託している。ここで世界最大手として君臨しているのが、台湾積体電路製造、通称TSMCだ。これに韓国のサムスンがつづく。委託生産というと、発注側のほうが立場が上で、受注企業は下と捉えられがちだ。しかし半導体に関してはそのようなことはなく、むしろ微細なチップを製造する技術を持つTSMCサムスンのようなファンドリーに引き受けてもらわないことには設計側の事業が立ち行かなくなるほどだ。なお、インテルの場合は、設計と製造の両方を手がけている。

戦略物資という半導体が持つ特質に着目し、中国との対抗関係を有利にすすめるべく活用したのがアメリカのトランプ政権だった。2019年以降、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)をはじめとする中国の通信機器大手に対し、半導体の輸出を禁止したのである。
中国国内でも半導体の製造は行っているものの、きわめて微細なレベルのチップを作る技術はなく、米欧日の企業と同様、国外のファンドリーに委託していた。ファーウェイの場合、半導体設計会社である子会社のハイシリコンがTSMCからの製品供給を受けられないことになった。TSMCアメリカではなく台湾企業だが、20年5月に強化されたトランプ政権の措置では、アメリカの技術や装置を使っている場合は第三国・地域からも対象とされたためだ。

アメリカは半導体サプライチェーンから中国を締め出そうとしているが、そのサプライチェーン自体にも脆弱性がある。TSMCのメイン工場が台湾にあるという点だ。

半導体サプライチェーンにインドは加われるか

アメリカは対中輸出規制を強める一方、巨額の補助金を提示してTSMCサムスンの工場誘致を急いでいる。日本もTSMCの工場を誘致するとともに、次世代半導体の量産を目指す新会社「ラピダス」が設立されるなど巻き返しを図ろうとしており、半導体をめぐる関係国の動きが活発になっている。中国抜きの新たなバリューチェーンが形成されようとするなか、そこに割って入ろうとしている国がある――インドだ。

インドはモディ政権になった2014年以来、「メイク・イン・インディア」というキャッチフレーズを掲げて製造業振興に取り組んでいる。自動車メーカーのスズキによる新工場建設や、台湾の鴻海精密工業フォックスコン・テクノロジー)、和碩聯合科技(ペガトロン)、緯創資通(ウィストロン)によるiPhone生産開始といった成果が出ており、中国に代わる製造業の拠点として注目が高まっている。だが、半導体分野では、インドの存在感は決して大きいとは言えないのが現状だろう。実際、これまで半導体関連で国際的に知られたインド企業や研究開発拠点があるという話は聞かない。

その状況がこの数年で変わりつつある。
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モディ首相は「セミコンインディア2022」の開会あいさつで、インドを半導体のハブにするための提案を出してほしいと参加者に呼びかけた。

また、インド国内の半導体需要は2026年に800億ドルを超え、30年には1110億ドルを超える見通しだとして、市場としての魅力もアピールした。インド政府で半導体産業を主管する電子情報技術省のアシュウィニ・ヴァイシュナウ大臣も23年1月下旬、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席し、インドは半導体の需要サプライヤーになるべく、政府としても100億ドルを投資する用意があると発言した。

こうした取り組みは数年で結果が出るものではないし、どのようなレベルの半導体を生産するかもわかっていないが、将来この分野でもインドが重要なプレイヤーとして台頭することになるかもしれない。