じじぃの「カオス・地球_84_第3の大国インドの思考・まえがき」

“新大国”「インドの論理」と知られざる日本への期待【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(2023年9月5日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yvKqRM8DhYw


中国跳棋(中国チェッカー)

フリー百科事典ウィキペディア より
チャイニーズチェッカー(英語: Chinese checkers、ドイツ語: Sternhalma)は、チェッカーとも呼ばれ、広東語ではboziqiとも呼ばれ、 2人から 6人で同時にプレイできるボード ゲームです(ただし、対称性とバランスを考慮すると、 5人にはあまり適さないかもしれません)。
チェス盤は六角形の星で、チェスの駒は 6色に分かれています。各プレイヤーは 1色のチェス駒を持ち、1つの隅を埋めます。最初に自分のチェスの駒をすべて移動したプレイヤーが、反対側のコーナーが勝ちます。

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第3の大国 インドの思考――激突する「一帯一路」と「インド太平洋」

【目次】

まえがき

序章 ウクライナ侵攻でインドが与えた衝撃
第1章 複雑な隣人 インドと中国
第2章 増殖する「一帯一路」――中国のユーラシア戦略
第3章 「自由で開かれたインド太平洋」をめぐる日米印の合従連衡
第4章 南アジアでしのぎを削るインドと中国
第5章 海洋、ワクチン開発、そして半導体――日米豪印の対抗策
第6章 ロシアをめぐる駆け引き――接近するインド、反発する米欧、静かに動く中国

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『第3の大国 インドの思考――激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』

笠井亮平/著 文春新書 2023年発行

まえがき より

2020年以来、世界は暴風雨に襲われている。新型コロナウイルスパンデミック。ロシアのウクライナ侵攻。食糧とエネルギー価格の高騰。そして激しさを増す一方の米中対立――。「混沌」と「不透明さ」が現在とこれからの国際社会を表すキーワードになりつつある。

イアン・ブレマーが「Gゼロ」と呼んだように、現代の世界は冷戦期の東西対立でもなければ、1990年代以降のアメリカ一極体制でもない。多極化が進行する状況にある。世界経済に占めるG7の割合が低下する一方、新興国や資源国の比重は拡大しつづけている。G20は現状に対処するためのフォーラムではあるが、参加国の多さゆえに実効性とスピードには課題が残る。

こうしたなかで、急速に台頭を遂げつつあり、世界の中でキープレイヤーになろうとしている国が南アジアにある――インドだ。

人口は2023年中に中国を抜いて世界第1位となるとされ、経済規模でも2022年にかつての宗主国・イギリスを抜いて米中日独に次いで5位に躍り出た。軍事費の伸びも著しく、21年時点で世界のトップ3はアメリカ、中国、そしてインドとなっている。こうした国力の急成長を背景に、世界の舞台でインドの影響力は日に日に高まりつつある。

だが、インドという国には「分かりにくさ」がつきまとう。

それが際立ったのは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応だ。国連安全保障理事会でのロシア非難決議案に対し、インドは棄権票を投じた。日米豪印戦略対話「クアッド」の一角を占め、二国間でも日米との関係強化を進めてきたはずのインドが、なぜロシア非難に与(くみ)しないのか――そう訝(いぶか)しがる声が国際社会で上がった。

中国との関係も、「反中か親中か」という二元論では簡単に割り切れない複雑さを抱えている。
ユーラシアと海洋の双方でインフラ整備を通じた大規模な開発を進める現代版シルクロード構想「一帯一路」に対しては、インドは警戒感を示して反発している。だがその一方で、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)には創設メンバーとして参加。未解決の国境問題が時きに軍事衝突に発展することがありながらも、インドにとって中国はアメリカと並ぶ最大の貿易相手国でもある。

グローバルな課題や地域の貿易枠組みづくりでもインドは一筋縄ではいかない姿勢で臨んでいる。「グローバル・サウス」の代表を自任するインドは、気候変動問題でも先進国とは一線を画し、途上国の立場から主張を展開している。核兵器保有国ではあるが、核不拡散条約(NPT)は5大国のみに核保有を認めるものとして加わっていない。

「地域的な包括的経済連携」(RCEP)の交渉に参加していたものの、交渉が大詰めを迎えていた2019年11月に離脱を決めるなど、「NO」ということを恐れず、実利に適うか否かで決断を下すインドの姿勢を強く印象づけた。

これからの世界は、このインドという国を抜きにして論じるわけにはいかなくなっている。言い換えれば、中国もさることながら、インドが世界の帰趨を左右するパワーとして台頭しつつあるということになる。その影響力は、南アジアやインド洋にとどまらず、インド自身が「拡大近隣」と呼ぶ広い範囲に及ぼそうとしている。それは中国の「一帯一路」への対抗であると同時に、インドが自ら主導する行動でもある。

インドのS・ジャイシャンカル外相は自著『インド外交の流儀』(白水社)のなかで、現在の国際社会の状況を「巨大な中国跳棋」になぞらえている。
中国跳棋はその名に反して中国ではなく19世紀末にドイツで考案された。六芒星のかたちをしたボードゲームだ。最大6人が参加でき、プレイヤー間で協力することもできる。
米大統領補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーはかつてユーラシアの地政学を「巨大なチェス盤」に喩(たと)えたが、世界が超大国同士の対峙から混沌とした多極化に向かって久しく経ち、規模も力も意図も多様なプレイヤーが時に競合し、時に協力する現状は、中国跳棋により近いといえるだろう。さらに同外相はこうも付け加えている――「ゲームが進行してからも、ルールについて議論をやめないプレーヤーがいる」と。
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では、インドというプレーヤーは何を目指し、どのような思考とアプローチで「巨大な中国跳棋」を指そうとしているのか。中国、アメリカ、ロシアといった他のプレーヤーとはいかに渡り合っていくのか。そして日本にとってインドの台頭は何を意味するのか。本書はこうした問いに答えようとする試みである。