じじぃの「カオス・地球_74_デンジャー・ゾーン・トゥキディデスの罠」

The Thucydides Trap: A Lesson for Today's World

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=cHkdsegSgdI

【都市伝説】中国が描く2050年の世界地図が怖すぎる…日本に忍び寄る驚異

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=C4kh8B-fVbI

Thucydides Trap


Why China and the US can avoid the Thucydides' trap

October 12, 2015 China.org.cn
During his recent state visit to the United States, President Xi Jinping dismissed fears that China and the United States might fall into the "Thucydides' trap," a theory that claims China's rapid rise would prompt it to challenge the leadership of the United States and the two may resort to war.
In an editorial published by Xinhua News Agency in late September, Xinhua writer Li Zhihui cited 10 reasons why the two major powers can avoid the trap. Excerpts of the piece follow:
The Thucydides' trap warns of the danger when a rising power comes into conflict with a ruling one--as Athens and Sparta did in the fifth century B.C. The majority of such conflicts have ended in war.
http://www.china.org.cn/opinion/2015-10/12/content_36789864.htm

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網

第4章 衰退する国の危険性

第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第4章 衰退する国の危険性 より

トゥキディデスは間違っていた?

現在の、大国間紛争の原因についての理解は、記録上最も古い戦争の1つから集中的に知識を得たものだ。それは紀元前431年から前404にかけてアテナイとスパルタが戦った「ペロポネソス戦争」の記録であり、トゥキディデスがこれについての古典的な説明を提示している。

無双の海軍力を持ち、帝国を発展させつつあったアテナイの台頭は、それまでギリシャ世界をリードしてきた陸の大国スパルタを脅かすものだった。スパルタは、アテネが成長し、武装し、他の国家を影響圏に引き込むのを神経質に見守っていた。

スパルタはその影響力をますます試されることになった。エスカレートする一連の危機の中で、スパルタは手遅れになる前に戦うこと、つまり「敵対勢力に全身全霊で立ち向かい、できることなら現在の戦争を始めることによって打破する」ことを決意したのだ。その後に起こった恐ろしい衝突は、双方を荒廃さえ、ギリシャ文明の黄金時代を終焉に導くことになった。

トゥキディデスは「国際関係論の父」と呼ばれ、彼の大国間の紛争に関する説明はこの分野の学問の中心に残っている。覇権移行論は、新興国が既存の国を追い越す恐れがある場合に戦争が起こる可能性が高まるとする。そして挑戦者が強くなるにつれて、既存のシステムを不安定にするろ捉える。挑戦者が既存の大国の力に挑戦するからだ。

その結果として、敵対関係のスパイルが発生する。ある政治学者は「戦争が最も起こりやすいのは、台頭し不満を抱く挑戦者の力が、リードしている大国の力に近づき始める時期だ」と書く。

2015年にハーバード大学のグレアム・アリソンは、古代からの知恵を活かして現在の対立を説明している。アリソンは歴史を通じて「覇権の移行は戦争につながってきた」と主張した。この危険性は、中国が間もなく「世界史上最大のプレーヤー」になるため、とりわけ深刻なものになるという。

今後数十年間の最大の課題は、アメリカに代わって世界のリーダーとなる運命にある国の台頭を、その途中で激しいカタストロフィ(大惨事)を引き起こさずに管理することだという。驚くことではないが、この考え方は習近平に響いたようで、彼は「トゥキディデスの罠」を引用しつつ、アメリカに対してアジアとその外の地域における中国の優位性を受け入れるよう呼びかけている。

トゥキディデスのテーゼにはたしかに真実が含まれている。新しい大国の台頭は、必然的に世界を揺るがすからだ。2500年前にアテナイが強大な超大国になっていなければ、スパルトに対してこれほど脅威を与えることはなかったはずだ。もし中国がいまだに弱く貧しい国であったなら、ワシントンと北京が対立することもなかった。台頭する大国というのは、たいていの場合は既存の大国を脅かす形で影響力を拡大するものだ。

ところが戦争を引き起こすメカニズムというのは、それほど単純ではない。

その理由を知るには、ペロポネソス戦争にさかのぼってみるべきだ。この戦争の研究で現代の第1人者であるドナルド・ケーガンは、紀元前460年から前445年にかけて戦われた「第1次ペロポネソス戦争」は、たしかにアテナイの台頭によって引き起こされた可能性があると指摘している。だがその戦争は、包括的な和平調停で終結している。

トゥキディデスが記した「大ペロポネソス戦争」の方は、もっと複雑な原因があった。実はアテナイはこの戦争の数年前から台頭を終えていた大国で、その影響力はもはや拡大してはいなかったのだ。アテナイは急速な衰退を恐れて平和に挑戦するような行動をとり、最終的に平和を破壊した。
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このエピソードには、大国を絶望に追い込むメカニズムを理解するヒントがある。相対的な富と力が増大して地位が向上している国は、たしかに地政学的な視野を広げるものだ。
だがそのような国でも、クライマックスとなる決定的な紛争の開始は遅らせ、覇権国の怒りを早々に買うことを避けたいと思うものだ。そうした国にとっては、冷戦後の20年間に中国が行ったような、自国の能力を隠して時間を味方につける行動が望ましいと思われる。

さらに別のシナリオも考えてみよう。ある不満を抱く国家が力をつけ、野心を高めている。指導者たちは強烈なナショナリズムを煽(あお)り、国民に対して「過去の恥辱を晴らせるし、大きな犠牲を払ったこともきっと報われる」と約束する。ところがこの国はピークを越えてしまった。その理由は、経済が停滞したためか、あるいはこの国の台頭を阻もうとするライバルたちの同盟に直面したためである。

「チャンスの窓」が閉じ始めて「脆弱性の窓」が迫ってくる。このような状況では、修正主義的な勢力はより攻撃的になり、さらには予測不可能な行動を取るかもしれない。「手遅れになる前に、できる限りのものを手に入れておきたい」という衝動に駆られるからだ。

アメリカと中国が直面しているのは、まさにこの厄介な可能性だ。しかもこのようなことは、過去に何度も、実際に繰り広げられてきた。