じじぃの「カオス・地球_59_習近平独裁新時代・G7広島サミット」

プーチン氏の“影武者”は3人?検証ゼレンスキー大統領のG7成果は【5月22日(月) #報道1930 】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=lhKe6Fdnv4Y

G7広島サミット


G7広島サミット最終日 ゼレンスキー大統領参加で首脳会談 午後には平和公園で献花し記者会見

2023年5月21日 TBS NEWS DIG
G7広島サミットはきょう最終日を迎え、ゼレンスキー大統領が参加して会合が始まっています。
広島市内のホテルで首脳会談は行われていて、ウクライナの反転攻勢が近いと言われる中、焦点は「各国からの最大限の支援を得られるか」です。
45分ほど前から始まった会合で、ゼレンスキー大統領は当事国の実情を伝えるとともに、G7の首脳らに武器の供与を含めた軍事支援の強化なども求めているものとみられます。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/496701

習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン

【目次】
序に代えて――歴史の分岐点となった第20回党大会
第1章 江沢民の死と白紙革命

第2章 習近平「平和外交」の正体

第3章 コロナ政策転換でも光が見えない「新時代」経済政策
第4章 全人代から始まる新たな粛清
最終章 習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウンのボタン

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習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』

福島香織/著 かや書房 2023年発行

第2章 習近平「平和外交」の正体 より

「G7広島サミット」と「中国・中央アジアサミット」

2023年5月は、米中対立を軸とした新東西冷戦構造が明確化した季節でもあった。
まず広島でG7サミットが開かれ、世界の注目をあびた。その裏側で、第1回中国・中央アジアサミットが、シルクロードの起点となった党の都・西安長安)で開催された。

中国・中央アジアサミットについては、日本のメディアでも、女性ダンサーたちが天女に扮して舞うような歓迎式典のゴージャスなパフォーマンスの映像が流され、日本がホストとなったG7広島サミットに対抗する意図があったのではないか、という論評もあったと思う。

私個人としては、G7広島サミットも中国・中央アジアサミットも、のちのちに歴史的意味を評価され直すような、国際政治上のマイルストーンとも言えるニュースであったと考えている。

G7広島サミットについて言えば、日本がホスト国であったこともあり、日本メディアがかなり手厚く報じたので、ここではそこまで詳しくは説明しない。

簡単に言えば、チャイナ・ウォッチャーから見ると、このG7サミットは、中国に焦点を当てたものだった。日本が議長となってG7を団結させ、対中「デリスキング」(脱リスク、リスク低減)という表現で、対中政策の足並みを揃えさせたという点が最大の意義であったと言える。

カップリング(排除)ではなくデリスキングという言葉からわかるのは、一見すると中国への配慮のように見えて、今の中国習近平体制が西側先進国にとってリスクであるという認識でG7が一致しているということだ。

そして、このG7サミットで、ウクライナ・ゼレンスキー大統領を広島に招き、さらにはコモロクック諸島インドネシア、ブラジルまで、グローバルサウスと呼ばれる途上国・新興国を招き、G7の言う「1つの国際ルール」を遵守する国際社会腋組みの存在をアピールし、中国にもその「1つしかない国際ルール」を遵守せよと求めた。

これは、習近平がかねてから主張している”中国式現代化モデルによる新たな国際秩序の再構築”という目標を否定するものだ。中国は、民主化だけが現代化の道ではなく、G7という限られたメンバーだけの金持ちクラブのつくった国際秩序は途上国の利益を代表しない、という考えを広めようとしている。だが、今回のG7サミットはグローバルサウスの代表団も呼び、中国が画策している新しい国際秩序の構築の動きに公然と挑戦した。

中国が怒り心頭なのは、そのお膳立てをしたのが日本ということだ。日本はこれまで比較的、中国に配慮して見せ、安全保障上依存している米国に致し方なく追随しているというポーズをとってきた。だが、今回のG7は(実際はどうであったかは別として)いかにも日本が主導的に根回しをしたような印象を与えた。

それは、例えばオバマ元大統領が10分で退場した原爆資料館で、バイデン大統領に40分近く、米国の原爆投下による30万人緒民間人虐殺の実態について説明を受けさせた、といったこともある。また、自衛隊車両をウクライナに提供するなど、平和憲法かの日本としては、極めて踏み込んだ形で外国の戦争に関与する姿勢を見せた。

中国としては、戦後78年目にして日本の姿勢や立ち位置が変わりつつあると感じただろう。

そうした日本の変化が、バイデン政権になって米国のレームダック化が加速しているとも関係があるとすれば、G7広島サミットは国際社会の多極化への転換の萌芽とも受け取られるし、同時に、次の世界大戦の可能性を意識せずにはいられない変化の兆し、とも言えるかもしれない。

万が一にも台湾有事が起こり、米中戦争の形になるとすれば、日本も参戦する、いや日本が先鋒として中国と戦うことになろう、と中国は改めて意識したのではないか。

さらには、こうした外交政治パフォーマンスを「平和都市・広島」でやったのだから、中国が受け止めたメッセージは、ひょっとすると日本の想像を超えているかもしれない。

このG7広島サミットの裏番組とも言える第1回中国・中央アジアサミットも、実は次の世界大戦の可能性を意識せずにはいられない変化の象徴と言える国際会議だった。

参加者は、中央アジア5ヵ国(カザフスタンキルギスタンウズベキスタンタジキスタントルクメニスタン)の大統領たちである。習近平がそれぞれの国家元首と1対1の会談を行い、共同宣言や声明を出したうえで、全参加国が西安宣言に調印した。

この中国・中央アジアサミットの成果の1つは、西安宣言や中国側が発表した成果リストで規定された”中国と中央アジアの関係強化のメカニズム化”だ。

このサミットの開幕式で習近平は演説を行った。その演説によると、中国は中央アジアとの関係を発展させ、「互いに(周囲の敵を)見張り合い、事が起きれば助け合い、共同で発展し、普遍的な安全を守り、世代を超えて友好的な中国・中央アジア運命共同体」となるという。

「人類運命共同体」構築は、習近平の打ち出す中国の最高外交目標であり、中国が主導する国際社会の新たな枠組みの理念だ。この理念と目標の起点に、中央アジアを据えている。それは中国が打ち出す一帯一路構想の起点が新疆という中央アジアとの隣接地域であることからもうかがえる。
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中央アジアとの「運命共同体」化は、中国の戦略学者や国際関係学者が言うところの、いわゆる「西向戦略」の一環に他ならない。

仮に中米関係が完全に断絶した場合、中国は中東、EUとの経済貿易ルートを確保する必要がある。台湾海峡戦争が勃発した場合、米国はEUに対中経済制裁を強いるだろうが、中国が欧州との経済貿易リンケージを今から強化しておけば、EUはその制裁パワーの度合い、範囲、時間を軽減、短縮せざるをえない。

これはG7広島サミットで、中国を経済防疫上のデリスキングが打ち出された理由でもある。また中央アジア5ヵ国のうち3ヵ国は中国と国境を接し、イスラム国としてかつてはウイグル独立派に影響力を持っていたが、経済的に中央アジア5ヵ国を従えれば、この懸念も軽減できる。

これまで中国の西向戦略は、進めたくとも、なかなか進まなかった。理由は簡単で、中央アジア5ヵ国への影響力はロシアが厳然と維持していたからだ。

だがロシアはウクライナに戦争を仕掛けたことで国力が一気に弱体化、いまや中国を頼りにするほかない状況に追い込まれている。

ロシアが弱体化すると、米国がその政治的空隙に入り込もうと、2023年2月末、カザフスタン・アスタナで米国・中央アジア5ヵ国外相会議を行い、ブリンケン国務長官を送り込んだ。だが、米国は中央アジアに効果的な経済的手段を提示できなかった。代わりに中国がまんまとロシアの後釜として中央アジアパトロンに収まった。ロシアとしても、米国に入り込まれるよりは中国のほうがましだ、と考え、これを許した。

もしロシアがウクライナとの戦争で弱体化していなかったら、第1回中国・中央アジアサミットは、おそらく第1回中国・ロシア・中央アジアサミットになっていただろう。

G7広島サミット成功の背後に米国レームダック化という要因があり、中国・中央アジアサミットの成功の背後にはロシアの弱体化があり、ともに時代の変局、米国1極状態から多極化への変化を示すサミットだった。

そこに将来的な米中戦争、あるいはその代理戦争、あるいは第3次世界大戦に至りそうな兆しが少しでも見えるなら、目を背けないことだ。