じじぃの「カオス・地球_35_進化を超える進化・ホムニ・人新世」

猛烈な熱波 12万年で1番暑い夏/“臨界点”超えで始まる気候変動とは?【7月25日(火)#報道1930】|TBS NEWS DIG

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ieIn2XddkCQ

年々巨大化し、大きな爪痕を残す台風


2050年には夏は47度に。仏専門家が温暖化は予想以上に悪化と発表

Sep. 27, 2019 Business Insider Japan
地球温暖化は現在予測されているよりも急速に進み、2100年には、18世紀後半に始まった産業革命前に比べて6度から7度まで上昇するだろう――。
フランスの専門研究者グループが9月17日に発表した内容は衝撃的だった。
https://www.businessinsider.jp/post-199436

文藝春秋 進化を超える進化

【目次】
序章
創世記
第1部 火
第2部 言葉
第3部 美

第4部 時間

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『進化を超える進化――サピエンスに人類を超越させた4つの秘密』

ガイア・ヴィンス/著、野中香方子/訳 文藝春秋 2022年発行

第4部 時間 より

第14章 ホム二――超協力的超個体として生物種を超えた集合性人類へ

集合性人類

規模の経済、技術革新などの効率化によってエネルギーは安価になり、それが経済成長を加速させてきた。更新世の間、世界経済は25万年ごとに倍増したが、完新世には農業のおかげで、900年ごとに倍増するようになった。1950年以降は15年ごとに倍増している。それに伴い、世界人口は過去150年間で10億人から77億人へと急増した。では、この新しく増えた膨大な数の人間はどこに暮らしているのだろう。それは、都市という集中した効率的な社会システムの中だ。都市が地球の陸地に陸地に占める割合ははわずか3パーセントだが、まもなく世界人口の75パーセントがそこに住むようになる。都市化によって人間のネットワークの密度はかつてないほど高くなり、遺伝子や文化の新たな融合、組織化された医療システム、人口増加の鈍化など、独自の特徴を生み出している。

都市で暮らす人々は、豊かな資源を利用できるにもかかわらず、あるいはむしろそのせいで、自発的に少子化に向かっている。今日ロンドンで生まれた赤ちゃんは、これまでのどの時代の赤ちゃんよりも、大人になるまで生きる可能性が高く、おそらくは1世紀生きるだろう。その子は、最大かつ最も緊密につながった人間集団から学ぶことができ、人間が長年にわたって築いてきた認知と技術のツールボックスを利用でいる。したがって、識字能力、車輪、ばね、てこ、分数、進化、経済、民主主義、感染症対策、遠近法等々に通じているだろう。このツールボックスの存在は、現代の人間は過去のどの時代の人間よりずっと効率よく問題を解決できることを意味する。この数十年間で人間の活動の「グレート・アクセラレーション(大加速)」が起こり、人口増加、グローバリゼーション、技術革新が急速に進んでいる。

本書では、遺伝子、環境、文化という3つの進化を通して、人間が常に自らを作り変えてきたこと、そして、人間がいかにして自らの運命を変えられる比類ない種になったかを述べてきた。今や、わたしたち全員が全く例外的なものに変わろうとしている。人間は超生物になりつつある。これをホモ・オムニス(集合性人類)、略してホムニと呼ぼう。

ホムニを理解するために、土の中に入って、アメーバ―様の単細胞生物「粘菌」を見てみよう。粘菌は約6億年前に誕生し、南極大陸から北極まで、世界中の土壌に生息している。そのライフサイクルの大半を通じて、普通のアメーバ―のような平凡な生活を送るが、時には数千個が集まって1つの個体になり、自ら出した粘着物ですっぽり包まれ、這ったり、ゆっくり動いたり、脈動したり、蝕手を伸ばしたりする。迷路を通り抜けることさええできる。科学者はこれらの粘菌を「社会性アメーバ―」と呼ぶが、それは個々の粘菌が共通の目的のために団結し、時には自分を犠牲にすることもあるからだ。粘菌は土中の食べ物が不足すると、合体して巻きひげ状になり、光に向かって這い上がっていく。一部の粘菌は死んで自分の体を固いセルロースにして、地上に茎を作る。残りの粘菌はその茎を上り、てっぺんで小さな球状の塊になり、通りすがりの動物にくっついて、新たな土壌へと運ばれていく。

人間の神経細胞ニューロン)は、独立したり動いたりはできないが、この粘菌に少し似ている。個々のニューロンは感覚を持たないが、1000億個がネットワークを作ると、部分の総和をはるかに超えたものになる。思考、人格、行動の種がどのように蒔かれて、このネットワークに根づくのか、また、ニューロンがどのように組織化されてそのプロセスを推し進めるのかはまだ解明されていないが、ニューロンという単純な要素からどういうわけか意識が生まれる。ホムニの集団脳の思考力と創造力と社会性は、文化遺産や知的遺産を残した過去の人々と、コンピュータープログラムなどの技術のイノベーションによる人工頭脳を含む、数十億の人々の脳がネットワークで結ばれ、会話しながら蓄積してきた成果と見なせるだろう。
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進化の観点から言えば、生物の目標は遺伝子を永続させることだ。人間はそのための文化的な方法を考え出し、地球上のすべての生物を支配するに至った。しかし、人間の文化的目標である「自己決定」は、生物としての目標をしのいだ。今やわたしたちは、遺伝子を選択し、誰が生きて誰が死ぬかを決めることができ、さらには人間という種全体を消す力さえ持っている。人間が生き残るためには、文化進化は、グループに働きかける環境から、地球規模の集団、すなわちホムニに働きかけるという段階に進まなければならないだろう。

おそらく、人間が地球上の種としての自覚を高めていくために心に留め置くべき、人新世最大の教訓は、文化進化のルールは生物学的進化にも適用される、ということだ。つまり生態系の多様性と複雑さを維持するには、種の個体数やつながりを維持しなければならないのだ。ホムニのネットワークが大きくなると、技術や文化は複雑かつ多様になり、その見返りとしてホムニは利益を得るが、そのためにますます地球を犠牲にすることになる。
地球の資源は無限ではなく、ホムニはすでに地球の純一次生産量の4分の1を使っている。これを持続するのは不可能であり、ホムニの利益は減っていくだろう。しかし、個人が水を無駄づかいしないようにしたり、二酸化炭素を排出量を減らしたりしても、その影響はごくわずかだ。個人はある程度、ホムニを導けるかもしれないが、人新世の地球が抱える難題を個々人がどこまで解決できるかは不明だ。しかも、変化した地球はそれ自体が、ホムニに強い影響を及ぼすだろう。

更新世から完新世への移行期には大規模な地質学変化が起きたが、人新世はそれと同等の変化を文化的に起こす可能性がある。

しかも、先の変化は数千年かけて起きたのに対し、今回の変化はわずか数十年で起きている。わたしの子どもたちが生きている間に海面は数メートル上昇する可能性が高く、そうなると、わたしたちが生きる世界はもとより、文明そのものが壊滅的な打撃を受けるだろう。ローマ帝国マヤ文明などの過去の文明では、気温がわずか1度上がっただけで、社会が大混乱に陥った。人新世ではすでに同等の気温上昇が起きており、戦争、地域の不安定化、数百万人の難民をもたらしている。人間の文化は、人間が作り出そうとしている新しい世界に、かつてないレベルでの適応を迫られるだろう。