じじぃの「科学・地球_585_心の病の脳科学・空気を読めない・ロボットとの会話」

発達障害ASDと就職活動【アスペルガー的特性が面接で出ると厳しい。精神科医が8分でまとめ】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=RGC21NcTvYQ

ASD の人と健常者の脳のはたらく部位の違い


アンドロイド面接のイメージ

https://iyakukeizai.com/beholder/article/1363

人間の顔が覚えられないのは「複雑で刺激が強い」から?ASDの人の「脳の働き方」の特性とは

2023.04.22 講談社
さまざまな感覚情報の処理や認識において、ASDの人たちは脳のはたらき方に違いがあると考えられます。
図【ASD の人と健常者の脳のはたらく部位の違い】は、fMRI(機能的MRI)という手法で調べた、物と顔を識別しているときにはたらく大脳皮質の領域です。
人の顔を見分けたり表情から相手の気持ちを読み取ったりすることは、人間が社会の中で暮らしていく中でとくに必要となる能力です。脳には、物の識別とは別に、顔の識別で活動する大脳皮質の領域があることが知られています。
https://gendai.media/articles/-/108801?page=2

ブルーバックス 「心の病」の脳科学――なぜ生じるのか、どうすれば治るのか

【目次】
第1章 シナプスから見た精神疾患――「心を紡ぐ基本素子」から考える
第2章 ゲノムから見た精神疾患――発症に強く関わるゲノム変異が見つかり始めた
第3章 脳回路と認知の仕組みから見た精神疾患――脳の「配線障害」が病を引き起こす?
第4章 慢性ストレスによる脳内炎症がうつ病を引き起こす?――ストレスと心と体の切っても切れない関係
第5章 新たに見つかった「動く遺伝因子」と精神疾患の関係――脳のゲノムの中を飛び回るLINE-1とは
第6章 自閉スペクトラム症の脳内で何が起きているのか――感覚過敏、コミュニケーション障害…様々な症状の原因を探る
第7章 脳研究から見えてきたADHDの病態――最新知見から発達障害としての本態を捉える
第8章 PTSDのトラウマ記憶を薬で消すことはできるか――認知症薬メマンチンを使った新たな治療のアプローチ
第9章 脳科学に基づく双極性障害の治療を目指す――躁とうつを繰り返すのはなぜか
第10章 ニューロフィードバックは精神疾患の治療に応用できるか

第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する

第12章 「神経変性疾患が治る時代」から「精神疾患が治る時代」へ

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『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』

林(高木)朗子/著、加藤忠史/編 ブルーバックス 2013年発行

第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する――人間にはできない早期診断・適切な支援が可能に より

ASDの人たちにとって、人間の顔は刺激が強すぎる

さまざまな感覚情報の処理や認識において、ASDの人たちは脳のはたらき方に違いがあると考えられます。
図11-1(画像参照)の図は、fMRI(機能的MRI)という手法で調べた、物と顔を識別しているときにはたらく大脳皮質の領域です。

人の顔を見分けたり表情から相手の気持ちを読み取ったりすることは、人間が社会の中で暮らしていく中でとくに必要となる能力です。脳には、物の識別とは別に、顔の識別で活動する大脳皮質の領域があることが知られています。

fMRIで調べてみると、健常者の子どもは、2つの物が同じかどうかを識別するときには下側頭回(かそくとうかい)、同じ顔かどうかを識別するときには紡錘状回(ぼうすいじょうかい)と、異なる領域が活動します。

一方、ASDの子どもは、顔の識別も物の識別と同じ下側頭回が活動します。 ASDの人の中には、子どものころに「人の顔を認識できなかった」「誰の顔かを見分けられ なかった」と語る人がいます。それは、顔を認識するときの脳のはたらき方に違いがあることが原因となっているのでしょう。

ASDの人たちにとって、人間の顔はとても複雑な形で刺激的です。ほかの人からの視線や口調が強すぎると感じたりします。また、人の表情や仕草はさまざまです。ASDの人たちはそのような複雑な変化の認識や対応が苦手です。

私たちは、言葉だけでなく、相手の表情や仕草から相手の気持ちや意図を読み取りながら意思疎通をしています。そのような非言語的なコミュニケーションがASDの人には難しいという特徴があるのです。それにより、周囲の人たちから「空気を読めない」と思われ、生きづらさを抱えます。

「他者の視点に立てるかどうか」が重要な診断基準

ASDの人たちは、他者の視点に立つことが難しいため、自分の言動が他者にどう思われているのかを理解しにくいといわれています。就職面接では、ASDの人が面接官が自分の言動をどう評価するのか想像しにくいことが、自分をうまくアピールできない一因となっていると考えられます。

私たちは、ASDの人に2人1組になってもらい、ひとりは面接官役のActroid-Fを遠隔操作し、もうひとりは面接者になってもらう形で面接の練習を行いました(図11-7、画像参照)。

ASDの人自身が面接官役を演じるのは、対面する面接者からの刺激が強すぎます。面接官役のActroid-Fの操作ならば、平常心を保ちやすい傾向があります。Actroid-Fを操作することで、面接官という他者の視点に立つことができます。
それによって、「もっと頷く回数を増やしたほうがアピールできる」などと、面接官の視点を学ぶことができました。

じつは、他者の視点に立てるかどうかが、ASDの重要な診断基準の1つになっています。

他者の視点に立てないことが、社会性やコミュニケーション能力の発達に遅れが出る原因だと指摘する研究者もいます。ロボットを通じて他社の視点を学ぶことは、就職面接の練習になるだけでなく、社会性やコミュニケーション能力の向上に大きく役立つ可能性があります。