The Secret Life of Albert Einstein
ADHDはどのように診断されるか
Top 17 Famous Scientists With ADHD That You May Not Know
April 29, 2023 SCI JOURNAL
To celebrate scientists and scientific advancements, we have collected a list of the most famous scientists with ADHD that will inspire us for the greater good.
https://www.scijournal.org/articles/famous-scientists-with-adhd
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ブルーバックス 「心の病」の脳科学――なぜ生じるのか、どうすれば治るのか
【目次】
第1章 シナプスから見た精神疾患――「心を紡ぐ基本素子」から考える
第2章 ゲノムから見た精神疾患――発症に強く関わるゲノム変異が見つかり始めた
第3章 脳回路と認知の仕組みから見た精神疾患――脳の「配線障害」が病を引き起こす?
第4章 慢性ストレスによる脳内炎症がうつ病を引き起こす?――ストレスと心と体の切っても切れない関係
第5章 新たに見つかった「動く遺伝因子」と精神疾患の関係――脳のゲノムの中を飛び回るLINE-1とは
第6章 自閉スペクトラム症の脳内で何が起きているのか――感覚過敏、コミュニケーション障害…様々な症状の原因を探る
第7章 脳研究から見えてきたADHDの病態――最新知見から発達障害としての本態を捉える
第8章 PTSDのトラウマ記憶を薬で消すことはできるか――認知症薬メマンチンを使った新たな治療のアプローチ
第9章 脳科学に基づく双極性障害の治療を目指す――躁とうつを繰り返すのはなぜか
第10章 ニューロフィードバックは精神疾患の治療に応用できるか
第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する
第12章 「神経変性疾患が治る時代」から「精神疾患が治る時代」へ
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落ち着きがない、待つのが苦手……どこからがADHDなのか――移り変わってきた診断基準
注意欠如・多動症(ADHD)の人は、知的障害のない人であれば同じ年齢の人と比べて、知的障害のある人であれば発達段階の人と比べて、注意が散漫だったり、落ち着きがなく、待つことが苦手だったりすることで、日常生活に困難を抱えています。ただし、ADHDがどのような状態であるのかという概念や診断基準は、時代とともに移り変わってきました。
ADHDが最初に記載されたのは、1845年に医師でもある絵本作家が著した子どもの記載でした。そこには、今でいうADHDの子どもの様子がこのように描写されています。
やがて もぞもぞ しはじめて
それから いすを がたがたいわせ
それから あしを ばたばたさせて
もじもじ ごそごそ おちつかず
まえや うしろに いすを ゆらす
〔ハインリッヒ・ホフマン:著、佐々木田鶴子:訳『もじゃもじゃペーター』1985年、ほるぷ出版刊〕
医学的には1902年、英国の医学誌『ランセット』に掲載されました。しかし、その病態が明らかになったわけではありません。当時ADHDは、脳の損傷や炎症に伴う疾患だと考えられました。
しかし、そのような明確な損傷や炎症は明らかになりません。そのため、目に見えない原因による機能障害という意味で、今でいうADHDのことを微細脳機能障害(minimal brain damage)と呼ぶ時代が長く続いたのです。
たしかに後で紹介するように、ADHDの人の脳のはたらき方は、ほかの多くの人と比べて相対的に違います。しかし、ADHDがある人に共通して脳の損傷や炎症が関連しているという証拠はいまだないのです。
1960年代以降は、精神疾患を客観的に評価できる「症状」に基づいて診断するようになりました。日本でも広く使われている米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル」の第5版(DSM-5/2013年)からは、ADHDは神経発達症群の一つに位置付けられています。
神経発達症群は、通常の発達(定型発達)とは異なる特徴を持ち、そのために日常生活上の困難をきたす状態を言い、知的能力障害、自閉スペクトラム症、限局性学習症、協調運動症などが含まれます。
神経発達症は、人生の早い段階から始まり、生涯にわたってその特性が持続しうると考えられています。日本で「発達障害」と言い習わされる障害群と神経発達症群は概ね重なり合うと考えていいでしょう。
ADHDの診断に必要な症状の項目の中には、誰でも経験していそうな事柄が多くあります(図7-1 「ADHDの診断に必要な症状の項目」、画像参照)。
では、どこからがADHDで、どこからが定型発達なのでしょうか。重要なことは、①症状が12歳以前から、②特定の場面だけではなくて学校、家庭、職場などの複数の場面で、③発達水準と比べて顕著に認められ、④日常生活に支障をきたすほどなのかどうか、です。
ADHDの診断を再構築し、多様な病態を解明する
ADHDは、これまで一貫して、不注意、多動性-衝動性によって診断されてきました。そしてADHDの子どもや大人には、薬物療法が相当な効果があることも示されています。それらの薬が効く仕組みは病態モデルをもとにした説明が可能になっているので、ADHDは医学的にもそのメカニズムが確立された神経発達症であるという認識を持ってしまいがちです。
しかし、実際にそうでしょうか。不注意、多動性-衝動性というのは、さまざまな精神症状やその他の神経発達症によっても生じます。薬の効果でさえ、ADHDに特異的に効果が現れると言い切れるものではありません。
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このような研究を進めていく上で大切なことは、多くの子どもや大人のデータを蓄積し、その臨床経過を適切にフォローすることです、私が所属する国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部では、より簡便な評価、プラットフォームの確立を目指しています。
ADHDや自閉症スペクトラム症の特性だけでなく、知的機能、適応行動に加え、不安・抗うつ・躁症状などについても評価しています。これらの精神症状は、ADHDの症状に関連するだけではなく、経時的な反復評価をすることで、思春期以降に出現することの多い二次障害が生じる原因を明らかにすることができるでしょう。
神経心理学検査でも複数の研究を組み合わせています。実行機能を評価するテストで、正解時に与えられる社会的報酬(ここでは笑顔)の頻度を操作することで、実行機能課題成績がどのように変化するかを調べています。ADHDの子どもへの行動療法では、好ましい行動をしたときに適切にほめるなどのフィードバックを与えることが大切とされています。しかし、子どもの望ましい行動に対して、常にフィードバックが与えられる環境にあるわけではありません。既存の研究では、正答に対して社会的報酬あるいは金銭などの非社会的報酬が(確実に)与えられる状況のみが検討されてきましたが、私たちは、それらの報酬が与えられる頻度を変えることでどのような影響が生じるかを検討しています。
また、先ほど記したように、ADHDでは時間感覚(タイミング)の障害が知られています。タイミングを合わせる機能は感覚-運動同期と呼ばれますが、時間知覚には、時間の長さを弁別したり、再生したりといった別の側面もあり、小脳や大脳基底核、補足運動野や前頭前野など異なる脳領域が関与していることが分かっています。私たちはこれらの時間知覚をすべて評価することで、時間感覚障害の全貌を明らかにしたいと考えています。
もう1つ、社会性の発達の基盤となる注意機能の障害についても研究しています。