じじぃの「科学・地球_568_テックジャイアントと地政学・Web3」

【Web3.0とDAO①】インターネット以来の大革命に乗り遅れるとヤバい!ポストGAFAM時代の幕開け

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=dMYRs-2nQAI

データで振り返るWeb3の1年


Web3の評価基準は「面白い」かどうか メインストリームに対するオルタナティブと考えよう

2022年6月28日 高木聡一郎|東京大学大学院教授
最近、私の周囲でもWeb3が話題沸騰である。Google Trendでもこの傾向ははっきり見ることができる。
人々のWeb3に対するスタンスは概ね以下の3タイプに分けられるだろう。
1.Web3は世界を変える技術であり、これに乗り遅れてはいけない
2.Web3なんて言葉だけで意味ないよ
3.Web3って何?よく分からないんだけど
https://comemo.nikkei.com/n/n78fe42a2a263

日経プレミアシリーズ テックジャイアントと地政学

【目次】
プロローグ シリコンバレーとの往来から見えてきた日本の近未来
Part1 ChatGPTが与える衝撃
Part2 テクノロジーが変える地政学
Part3 曲がり角のテックジャイアン

Part4 メタバース&Web3、先端技術ブームの実態

Part5 日本人が知らない世界の最新常識

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テックジャイアントと地政学

山本康正/著 日経プレミアシリーズ 2023年発行

Part4 メタバース&Web3、先端技術ブームの実態 より

日本に広がるWeb3ブーム Web2.0の教訓をいかせるか

定義が不明確な用語が注目される日本

テクノロジービジネス業界のはやり言葉は2種類あります。1つは「ブロックチェーン」や「非代替性トークン(NFT)」「仮想現実(VR)」、人工知能(AI)の「ディープラーニング」など、個別の技術進歩を示すものです。もう1つは「Web3(ウェブスリー)」や「メタバース」など、技術そのものもコンセプトが前面にあり、用語の定義が広くて漠然としたものです。ぜひ前者と後者の定義を比べてみてください。

前者に比べて後者の用語や業界団体の名前を聞く機会が多くなった場合には注意が必要です。厳密な理解なしに議論が進んでいる可能性が高いからです。特に企業がマーケティングや自社をアピールする目的の一環で使われる場面が多く、技術的な仕組みを理解しなくとも企業のPRやコンサルティング会社、メディア、投資家、政治家によって拡散されていきます。ある意味で使い勝手が良い言葉だからこそ、よく考える必要があります。

特に日本でのWeb3への世間の期待度がここに来て急上昇しています。「Googleトレンド」でWeb3のキーワードを使った検索動向をチェックすると、米国でピークを打ったあとに、数ヵ月遅れて日本で検索数が増えている状況がうかがえます。

日本では一部の政治家がWeb3を積極的に推進していますが、米国の動向を把握しなければガラパゴスの道を歩む可能性が高いでしょう。日本でもWeB3を題材にした投資ファンドが設立されつつあります。しかし実際のところ、ファンド関係者に初期の暗号資産への十分な投資経験や理解があるかどうか必ずチェックをしなければなりません。実態のないESG(環境・社会・企業統治投資ファンドと同様の問題が起こりえます。

Web3のムーブメントが来ていることは良いことですが、一方でかつてWeb2.0と呼ばれたブームがそうであったように、いまの段階におけるWeb3は実体のない宣伝文句やパスワード(流行語)であり、危うさをはらんでいます。

Web3そのものは利益に直結しにくい

そもそもWeb3とは一般に「ブロックチェーン技術を活用して、脱中央集権化を図るインターネットの新しい概念」とされています。情報の送り手と受け手が固定化されて一方向の流れしかなかったWeb1に対して、誰もが情報を発信し相互にアクションを行えるようになった現在のWeb2.0を経て、脱中央集権的な時性を持つブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用することで新たな変革を目指しているのが、Web3の世界です。

ですからWeb3はそれ自体が直接的なもうけをもたらしてくれるわけではありません。Web3の根幹にはブロックチェーンがありますが、「Web3=ブロックチェーンの活用=利益」ではないのです。
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ちなみに、Web2.0では音楽配信の米ナップスターなどを例に挙げて分散化を1つの特徴として挙げていました。ナップスターは個人利用者がネットでつながった他の個人のパソコン上の蓄積データを自由に検索し、ネット全体を巨大なデータベースに見立て色々な場所に分散する情報を多対多でやりとりするWeb2.0の特徴を先取りしていたとされました。しかし違法コンテンツの温床と判断されて規制によって倒産しました。

恐らくWeb3の話題を耳にするまで、Web2.0という名前を最近まで忘れていた人も多いでしょう。2005年10月ごろに発表され、06年10月には検索動向ではピークを迎え、数年後にはほとんど語られなくなっています。

そしてコンセプトだけは認知されても、結局は海外のテクノロジー企業の優位性は増していきました。昨今でも海外の先端ベンチャーと日本企業がジョイントベンチャーをつくっても、日本企業の経営体制が硬直的で技術を自社に取り込めず、単に海外企業に日本の売上げや出資した資金を渡す結果になってしまうことになります。Web3もまさに同じ道を歩みかけています。理想を唱えるのは簡単ですが、重要なのはどこまで現実的に達成できるか、実際にどうなるかなのです。

一方、Web3を提唱したのは主要な暗号資産の1つである「イーサリアム」共同開発者だったギャビン・ウッド氏です。ウッド氏が提唱したのは14年ですが、当時は一般には広まりませんでした。しかし暗号資産に多額の投資をしていたアメリカの民間ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツが21年に引用し、マーケティング目的で宣伝文句としてWeb3を広めました。2021年には米国政府への宣伝を強め、22年の暴落後で損失を拡大させたあとには西村経産大臣など日本政府への宣伝を強めています。つまりポジショントークとして使ったのです。

極端な話をすると、例えば量子コンピューター関連の企業が投資家向けに「Web4.0」というバズワードをつくって「量子コンピューターの計算特性をクラウドで使えるWeb」などと提唱する場面を想像してみてください。実際にWeb4.0やWeb5.0を検索してみると、我先にと様々なバズワードにしようとする動きが見つかります。

また、Web3とブロックチェーン以外の分野の名前で組み合わせて検索してみても、定義が異なるWeb3はたくさん見つかるのですが、ほとんどの人は見向きもしません。
一般的には「用語+2.0~4.0」と名付ける動きには注意が必要でしょう。何らかの発言をしても社会的な地位への悪影響が少ない人や企業、投資対象などと利害関係のある人野発言は慎重に見極める必要があります。