Cosmic Inflation: The Solution to the Big Bang Theory and the Universe
スローロールインフレーションを起こすポテンシャルの例
The Gravitational-Wave Physics
●1 INTRODUCTION
On 11 February 2016, the LIGO Scientific Collaboration and the Virgo Collaboration Abbott:2016blz announced that on 14 September 2015 at 09:50:45 UTC the two detectors of the Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory (LIGO) simultaneously observed a transient gravitational-wave (GW) signal.
In particular, the compact binary systems are main sources for GW detection such as LIGO, Virgo, Kagra, Einstein Telescope, etc., ground-based GW experiments, and Laser Interferometer Space Antenna (LISA), Deci-Hertz Interferometer Gravitational wave Observatory (DECIGO), Big Bang Observer (BBO), Taiji, Tianqin, etc., space-based GW experiments.
●2 GRAVITATIONAL WAVES FROM PRIMORDIAL UNIVERSE
In order to solve some problems in big-bang cosmology such as the horizon and flatness problems, inflationary scenario was introduced Guth:1980zm ; Albrecht:1982wi ; Linde:1981mu , in which a period of accelerated expansion of the Universe happened at early times.
https://www.arxiv-vanity.com/papers/1703.00187/
『なぜ宇宙は存在するのか』――人間原理の正しい解釈
われわれの宇宙はどこから来て、どこへ向かうのか――ダークマター、インフレーション理論、超弦理論といった基礎知識をご存じの方におすすめ。宇宙論の最先端の話題/用語を合理的に整理できる。
第4章では、1980年代に開花したインフレーション理論を紹介する。
宇宙誕生後10-38秒から10-36秒くらいの間に指数関数的に宇宙が膨張するインフレーションが起こり、宇宙は一様になり、曲率がきわめて平坦になった。そして、インフレーションの膨張が熱エネルギーになり、ビッグバンを引き起こす。野村さんは、宇宙の始まりとビッグバンの間にインフレーションがあったということを平易に説明してくれる。
インフレーションが起きたにしても、この宇宙の標準模型はよくできすぎている。たとえば、真空のエネルギー密度と物質のエネルギー密度がほぼ同じ大きさであるタイミングで生命が誕生したのは偶然なのか―
https://www.pahoo.org/e-soul/gadget/2022/WhyTheUniverseExists.shtm
なぜ宇宙は存在するのか――はじめての現代宇宙論
【目次】
第1章 現在の宇宙
第2章 ビッグバン宇宙1――宇宙開闢約0.1秒後「以降」
第3章 ビッグバン宇宙2――宇宙開闢約0.1秒後「以前」
第4章 インフレーション理論 より
4-2 ビッグバン宇宙に残された謎を解く
謎を解く鍵の1つ、スローロールインフレーション
宇宙にインフレーションを引き起こすメカニズムに関しては、1980年代に大きな理論的発展がありました。その成果の1つとして、「スローロールインフレーション」(slow-roll inflation:「ゆっくり転がるインフレーション」と訳されることもあります)と呼ばれる枠組みが確立されたことが挙げられます。
現在では、このスローロールインフレーションが、私たちの宇宙の超初期に起こった爆発的膨脹の正体だと考えられています。
ではこのスローロールインフレーションは、どのようにして起こるのでしょうか? ここで大事になってくるのは、宇宙に存在することができる粒子の中には、ヒッグス粒子やアクシオンのように、空間に一様に凝縮できる種類のもの(専門的には、スカラー粒子と呼ばれます)が存在するということです。このような「粒子」は、凝縮した後は粒というよりもある種の「流体」として振る舞います。そして、物理学ではこの「流体」を「場」(より正確には「古典的な場」)と呼びます。
この場という描像によれば、凝縮した粒子はもはや通常の粒子ではありません。実際、もし私たちが凝縮した一様な場だけが存在する空間を観測したとしたら、そこに粒子のようなものを認識することはできません。通常の粒子のようなものを観測するのは、場を「攪乱」することにより、一様に凝縮していた粒子(のいくつか)を背景となる場から取り出す必要があります。これが、LHC実験がヒッグス場に対して行ったことです。
しかし、このような通常の粒子が存在しない場合でも、凝縮した場の存在には物理的な意味があります。
その1つの現れとして、場はエネルギー密度を持つことができるという事実が挙げられます。このエネルギー密度は、凝縮が一様であることを反映して空間的に一様であり、またその大きさは場の凝縮の大きさによります。つまり、通常の粒子が全く存在しない空間でも、その「からっぽ」の空間のエネルギー密度は場の大きさに依存することになるのです。
これは、空間のエネルギー密度が場の大きさの関数となることを意味します。このような関数は、ポテンシャルエネルギー密度、または単にポテンシャルと呼ばれ、たとえば図4-3(場の大きさと空間のエネルギー密度)のようになります。
一般に、場の大きさは時間とともにポテンシャルエネルギー密度を小さくするように働き、最終的にはそれが最小な状態に落ち着くことになります。これをイメージするには、ポテンシャルを通常の坂とみなし、そこにパチンコ玉のような小さな玉を置いたと考えるとよいでしょう。
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図4-5(画像参照)のようなポテンシャルを考えてみましょう。もし宇宙にこのようなポテンシャルを持つ場が存在したとして、その場の初期値が、図に示すようにポテンシャルの「高台」に対応する値を取っていたとしたら、何が起きるでしょうか?
この場合、場は最初ゆるやかに傾斜した高台をゆっくり転がっていくことになります。この間のポテンシャルの変化は、非常にゆっくりです。つまり、場が高台をゆっくり転がっていく間のポテンシャルエネルギー密度は、正の真空エネルギー密度のように振る舞うのです! これは、宇宙が加速的な膨脹をすることを意味します。そしてこの加速膨脹に伴う膨脹の速度や加速度は、高台による莫大なエネルギー密度を反映して非常に大きいものです。この爆発的加速膨脹が、スローロールインフレーションと呼ばれるものです。
しかしこの加速的な膨張は、場が高台の端に達した時点で終了となります。これ以降の場はポテンシャルの極小点のまわりを振動することになり、その動きはゆるやかではありません。そのため、この振動に付随するポテンシャルエネルギー密度は、その時間変化を無視することができず、真空のエネルギー密度のようには振る舞いません。
その代わり、この振動によるエネルギーは標準模型の粒子を含む他の粒子に、運動エネルギーとして渡されることになります。これは、これら標準模型の粒子等が高温に熱せられるということを意味します。このプロセスは、歴史的な理由から再加熱と呼ばれます(現代的には「再」に深い意味はありません)。そしてこの再加熱こそが、高温高密のビッグバン宇宙の始まりなのです!
ビッグバンとインフレーションの関係
このビッグバン宇宙の始まりの描像によれば、宇宙は高温高密のビッグバンの状態になる前に、インフレーションと呼ばれる指数関数的、加速膨脹の時代を経たことになります。この爆発的加速膨張は、私たちが現在観測できる宇宙をほぼ完全に一様かつ平坦にしてしまいます。
そのため、その後インフレーションを引き起こした場(「インフラトン場」とも呼ばれます)のポテンシャルエネルギーが他の粒子の熱エネルギーに変換されることにより起こったビッグバン宇宙も、一様かつ平坦な状態から始まることになります。これが、現在私たちが見る宇宙がほぼ完全に一様かつ平坦な理由です。
インフレーションはその急激な膨脹により、宇宙にそれ以前にあった物質をほぼ完全に薄めてなくしてしまいます。これは、高温高密のビッグバン宇宙を構成する放射や物質は、全てインフレーションの終わりにインフラトン場のポテンシャルエネルギーが変換されてできたものだということです。
これは、第3章で述べたダークマターやバリオン・反バリオン間の非対称性などの生成が、ビッグバン宇宙の枠内で、もしくはインフラトン場から他の粒子へのエネルギー転換の過程を通じて、説明されなければならないことを意味します。なぜなら、もしこれらが「宇宙の始まり」からの存在したとしても、全てインフレーションにより消し去られてしまうからです。
このことは、ビッグバン宇宙が、第3章で述べたような過程を経ることができる程度の、十分な高温から始まらなければならないことを意味します。そして、これはインフレーション中のインフラトン場のポテンシャルエネルギー密度が、後にそのような高温に転換され得るほど大きかったということを意味します。つまり、インフレーションはまだ宇宙のエネルギー密度が極めて大きかった宇宙の超初期に起こったはずです。主にこれらの考察から、インフレーションが起こった時期は宇宙誕生後10-38秒から10-26秒くらいの間だったと考えらえます。
ここでまた1つ、用語についての解説を加えておきたいと思います。
ここでは、「ビッグバン」という言葉を、宇宙初期の高温高密の状態、もしくはその状態の始まりを指すものとして用いました。この用法によれば、「ビッグバンが始まる前の宇宙は、インフレーションの状態にあった」という記述は、完全に正しい意味となります。そしてこれは、現代の宇宙研究者の標準的な用法でもあります。
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本書におけるビッグバンという用語に関する注意点としては、特にインフレーションは私たちの宇宙が始まった後に起こった現象だということを確認しておきたいと思います。ビッグバン以前に起こったというのは、ただ単に宇宙が高温高密になる前に起こったということを言っているにすぎまえん。というより、宇宙が高温高密になったのは、インフレーションが終わってそのエネルギーが熱エネルギーに変換されたからなのです。以後のページでも、ビッグバンと宇宙の始まりは同義ではないという点にご留意いただければと思います。