じじぃの「科学・地球_534_なぜ宇宙は存在するのか・ダークマター存在の証拠」

銀河の回転速度と銀河の中心からの距離との関係


   

ハローと呼ばれるダークマターの雲


2015年ノーベル物理学賞を予想する③ 宇宙には膨大な秘密がある

2015年09月28日 科学コミュニケーターブログ
ヴェラ・ルービンの観測結果はどのようなものだったのでしょう?
彼女は、「渦巻き銀河の回転は、重力の法則から導かれる予想とは異なっている」、ということを発見しました。この発見のおかげで、私たちの宇宙の理解は大きく変わりました。彼女の発見を説明するには、目では見えない、望遠鏡でも観察できない非常に不思議な物質の存在が必要だと考えられています。さらに、理論天文学者たちの計算では、その物質の量はあまりにも多く、観察できる物質の少なくとも10倍の量があると予想されています。そして、これらは目に見えず光を出さない物質であるため、「暗黒物質ダークマター)」と呼ばれています。

ヴェラ・ルービンと彼女の同僚ケント・フォードは、アンドロメダ銀河の恒星から来る光を分析して、その移動の速度を調べました。(方法については付録で説明します)。すると、銀河の中心からどのくらい離れているかに関係なく、一定の速度で回転していることに気づきました。当時知られていた、速度に影響を与えられるすべての現象(例えば宇宙の膨張)を考慮しても観察の結果は変わりませんでした。そして、それは非常に奇妙な結果だったのです。
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201509282015.html

銀河系

銀河とは宇宙空間に点在する星の大集団のことです。宇宙には大小さまざまな、たくさんの銀河があります。銀河は、恒星の他に星間物質 [ガスやちり、暗黒物質ダークマター)] などからできています。
https://sizenkansatu.com/2015-06-12-taiyoukei/10.html

なぜ宇宙は存在するのか――はじめての現代宇宙論

【目次】

第1章 現在の宇宙

第2章 ビッグバン宇宙1――宇宙開闢約0.1秒後「以降」
第3章 ビッグバン宇宙2――宇宙開闢約0.1秒後「以前」
第4章 インフレーション理論
第5章 私たちの住むこの宇宙が、よくできすぎているのはなぜか
第6章 無数の異なる宇宙たち――「マルチバース

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『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論

野村泰紀/著 ブルーバックス 2022年発行

第1章 現在の宇宙 より

ダークマター存在の証拠

ダークマターの存在は、銀河団の考察以外からも示唆されます。その1つは、銀河の回転速度に関するものです。銀河を構成する恒星やガスは銀河中心のまわりを周回しており、その速度は観測により求めることができます。特にガスは銀河の明るく見える部分よりさらに広く分布しており、その速度はそこから放出される電磁波を分析することにより求められます。
そしてこれは、銀河を構成する物質の回転速度を、明るく光っている部分を超えて解析することを可能にします。

これを、渦巻き銀河であるアンドロメダ銀河に対して行った結果が図1-6(画像参照)です。
この図には回転速度が銀河中心からの距離の関数として示しており、これを見ると恒星やガスの質量から推定される回転速度より、観測された回転速度のほうがはるかに大きいことがわかります。しかも観測された曲線は、推定される曲線と違って渦巻きの円盤部分を超えても銀河の回転速度が落ちないことを示しています。これは、銀河を構成する質量が、見えている円盤部分をはるかに超えて広がっていることを意味します。なぜなら、もし質量が円盤部分にしか存在しないならば、円盤部分を超えた後の回転速度は、回転物体に働く重力が円盤からの距離が大きくなるにつれ弱くなっていくことを反映して、小さくなっていくはずだからです。

このようにして得られた銀河の描像は、図1-7(画像参照)のようになります。銀河を構成する全質量のうち、私たちに見える部分(中央のバルジと呼ばれる部分と、そこから渦巻き状に伸びた腕にによって構成されるディスク)からの寄与は、約1~2割にすぎません。それ以外は、ダークマターからの寄与です。また、ハローと呼ばれるダークマターの雲は、渦巻きの部分をはるかに超えて球状に広がっています。私たちが見ているのは、大きさでも質量でも銀河のごく一部にすぎないのです!

ここで重要なのは、銀河団と銀河の考察から得られたダークマターの証拠は、全く異なるスケールのものだということです。典型的な銀河団のサイズはおよそ1000万年光年(1光年は光が1年かかって進む距離)のオーダーで、質量は太陽の100兆から1000兆倍ほど。一方で、銀河の大きさは10万光年のオーダーで、質量は太陽の1兆倍ほどです。この全く違ったスケールを持つ天体の解析が、どちらもダークマターの存在を示唆しているのです。

現在ではダークマターの証拠はこれ以外にも多岐にわたり、その存在はほぼ疑いのないものですが、そのうち最も印象的なものを挙げておきましょう。それは、銀河団同士の衝突した跡とされる弾丸銀河団(英語ではBullet Cluster)を観測することで得られたものです。鍵となるのは2000年代半ばに、この天体中のガスと質量の分布をそれぞれ独立に求めることができたという事実です。
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以上のような観測や、後に述べる宇宙背景放射や宇宙の大規模構造の形成などからの証拠を総合した結果えられたのが、宇宙に存在する全物質の大部分、およそ6分の5がダークマターからきているという結論です。先にも述べましたが、現在ではダークマター標準模型の粒子である可能性は、様々な考察から否定されています。

すなわち、宇宙を占める物質の大部分は私たちの知らない粒子なのです!