じじぃの「科学・地球_127_重力波とは何か・宇宙を観察する」

ダークマター暗黒物質】正体不明の物質が宇宙を満たしている

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CDZ3r0_vpP0

渦巻き銀河

暗黒物質とは

東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 (IPMU)
どうやって分かる?(1)渦巻き銀河の回転曲線
http://abikoscience.web.fc2.com/49th/49DarkMatter.pdf

重力波で見える宇宙のはじまり―「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る

ピエール・ビネトリュイ【著】
重力――もっとも弱く、謎に包まれていた力が、この宇宙に大きな影響を与えている。
アインシュタイン重力波を予言してから100年。
アインシュタイン最後の宿題”と言われた重力波の観測が成功したことで、「重力波天文学」がついに幕を開けた。
それによって、我々の宇宙観はどのように変わるのだろうか?
インフレーション、ブラックホール、量子真空、ダークエネルギー、量子重力理論……。
宇宙を理解する上で欠かせない問題をやさしく解説しながら、宇宙誕生と進化の謎に迫る。
序章 変貌する宇宙
第1章 重力、この未知なるもの――ガリレイニュートンアインシュタインの見解
第2章 一般相対性理論――重力の理論から宇宙の理論まで
第3章 宇宙を観察する
第4章 2つの無限――両者は共存できるか?
第5章 宇宙誕生の瞬間――インフレーションから最初の光が現れるまで
第6章 ダークエネルギーと量子真空
第7章 闇を学ぶ――ブラックホール
第8章 重力のさざ波――重力波とは何か
第9章 重力波の直接探知に成功――We did it!
第10章 宇宙の未来

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重力波で見える宇宙のはじまり 「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る』

ピエール・ビネトリュイ/著、安東正樹、岡田好惠、安東正樹/訳 ブルーバックス 2017年発行

第3章 宇宙を観察する より

宇宙の「距離」の測り方

科学技術の目覚ましい進歩によって、現在、宇宙の歴史をより正確に把握できるようになっています。肉眼や望遠鏡などを使って遠くの天体を見るほど、過去をさかのぼることになるのです。今では私たちは、宇宙誕生まで、正確にはビッグバンの39万年後までさかのぼって見られるようになりました。
さて、私たちから遠ざかり続ける天体が、宇宙のどの辺にあるのかを知るには、2つの方法があります。
1つは、「光年」で測る方法、地球からの距離が何光年かがわかれば、その物体から放射された光が、どれほどの距離を越えて私たちに届いたかがわかります。たとえばアンドロイド銀河が私たちから250万光年の位置にあるとすれば、私たちは250万年前のアンドロイド銀河の状態を見ているというわけです。
もう1つは、「赤方偏移(レッドシフト)」を利用して算出する方法です。前章でざっとお話ししましたが、天体が地球から遠ざかっていることで光のドップラー効果が起こり、可視光やすべての波長の電磁波を含む光の波長が伸びて、可視光でいうと赤寄りにずれます。これが赤方偏移で、ずれの値をで表わします。

銀河の形成

銀河が形成されたばかりの初期には、銀河の形はとくに定まっていませんでした。私たちが知っている渦巻銀河や楕円銀河といった大きな銀河は、銀河同士の衝突・合体によって形成されたと考えられています。
大きな銀河がごく最近になって形成されたと考えるのは、そのような理由からです。銀河の合体という考えは、別々の段階にある何十億個もの連星銀河を調べるうちに得られました。
これらの初期の銀河からは1年に何百あるいは何千個という数の星が生まれました。私たちの天の川銀河系で新しい星が生まれる確率が年間1個程度であることを考えれば、これは驚異的な数字です。

銀河、銀河団ダークマター

宇宙には、私たちがまだ解明できていない銀河の活動を続く鍵となる要素が存在します。それは「ダークマター暗黒物質)」と呼ばれる物質です。”暗黒”といえば、たとえばまず、光を飲み込む真っ黒なブラックホールや、黒体などを連想しますので、個人的には”闇物質(謎めいた物質)”と呼びたいところですが、本書では「ダークマター」でいきましよう。
ダークマターの存在は1933年、アメリカで活躍したスイス人の物理学者フリッツ・ツビッキー(1898-1974年)によって初めて提唱されました。ツビッキーは、地球から3.2億光年のかなたにある巨大な「かみのけ銀河団」を観測中、奇妙なことに気づいたのです。
彼はこの銀河団の中に1000個以上の銀河を発見し、そのうち7つの銀河が持つ質量の分布を、ニュートン万有引力の法則によって推測しました。その結果、観測対象となったどの銀河も、それぞれが発する光から推測される質量の400倍以上もの質量があるとわかったのです。
銀河の質量と明るさの比率は、標準的には太陽の2~10倍です。
つまり、観測対象となった銀河内あるいは銀河間には、正体不明の光らない物質が存在すると解釈せざるをえない、というのがツビッキーの主張でした。
この主張は長年無視されていましたが、やがて1960~1970年代になると、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービン(1928-2016年)らによって体系的に研究され、証明されました。
ルービンたちの観測は、銀河内の恒星の公転運動に基づいて行われました。こうした星々は、(たとえば私たちの太陽系のように)基本的には平たい円盤型の構造内に集まり、銀河の中心の回りを回転運動しています。
ニュートン万有引力を用いれば、(相対性理論をもちだすまでもなく)単純計算で、それらの星々の回転スピードは、円盤の中心までの距離に依存することになります。つまり中心から遠ざかるほどスピードは上がり、円盤の端で1番大きくなります、
ところがルービンが多数の銀河を観測した結果、円盤の中心から端までは、たしかに回転速度が上がり続けますが、円盤の端を越えた場所にあるいくつかの星は、回転速度が上がらず一定に留まることがわかったのです。
この回転速度の変化(回転曲線)を解釈すれば、銀河の内部と、銀河の中心から非常に遠い場所に、正体不明の光らない物質があるとしか考えられませんでした。現在では、その正体不明の光らない物質は、「ダークマター」と呼ばれるもので、球形に近い「ハロー」と呼ばれる領域に存在していると考えられています。そしてダークマターは、銀河団ばかりか宇宙全体に存在することがわかりました。
ダークマターとは何か? 素粒子物理学ではいくつもの候補が上がっていますが、現在、その性質は未知のままです。