じじぃの「科学・地球_124_重力波とは何か・序章・重力」

重力波からの電波を観測

(kajima.co.jp HPより)

サイエンスZERO重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を紹介!マルチメッセンジャー天文学の幕開け!

2020.08.13 
NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。
今回は、2020年3月8日放送の「潜入“KAGRA”望遠鏡 天文学革命はじまる!」をご紹介します!
https://image-create-wizard.com/kagura-1586

重力波で見える宇宙のはじまり―「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る

ピエール・ビネトリュイ【著】
重力――もっとも弱く、謎に包まれていた力が、この宇宙に大きな影響を与えている。
アインシュタイン重力波を予言してから100年。
アインシュタイン最後の宿題”と言われた重力波の観測が成功したことで、「重力波天文学」がついに幕を開けた。
それによって、我々の宇宙観はどのように変わるのだろうか?
インフレーション、ブラックホール、量子真空、ダークエネルギー、量子重力理論……。
宇宙を理解する上で欠かせない問題をやさしく解説しながら、宇宙誕生と進化の謎に迫る。
序章 変貌する宇宙
第1章 重力、この未知なるもの――ガリレイニュートンアインシュタインの見解
第2章 一般相対性理論――重力の理論から宇宙の理論まで
第3章 宇宙を観察する
第4章 2つの無限――両者は共存できるか?
第5章 宇宙誕生の瞬間――インフレーションから最初の光が現れるまで
第6章 ダークエネルギーと量子真空
第7章 闇を学ぶ――ブラックホール
第8章 重力のさざ波――重力波とは何か
第9章 重力波の直接探知に成功――We did it!
第10章 宇宙の未来

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重力波で見える宇宙のはじまり 「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る』

ピエール・ビネトリュイ/著、安東正樹、岡田好惠、安東正樹/訳 ブルーバックス 2017年発行

序章 変貌する宇宙 より

「光」がもたらしたもの

宇宙膨張の証拠をもたらしてくれたのは「光」でした。天文学者たちは、個々の光る天体のなかに存在する物質を調べ、それらが発する光の色を分析しました。光の色は波長と密接に関係しているのです。1920年代には、ジョルジュ・ルメールエドウィン・ハッブルが相次いで論文を発表し、ほとんどすべての銀河の光のスペクトルが、赤のほうへずれている、しかも遠方の銀河ほどずれの幅が大きいと述べました。
目に見える光の色は、波長の短いほうから紫、青、緑、黄、オレンジ、赤となっています。波長が紫より短いのが紫外線、赤より長いものが赤外線ですが、ほとんどすべての銀河の光のスペクトルが波長の長い赤のほうへずれているのです。これを「赤方偏移」と呼びます。つまり、ルメールハッブルも、赤方偏移の原因を、銀河が地球から遠ざかっているため光が赤いほうへずれて観測されるのだと指摘し、これこそ宇宙が膨張している証拠だと説明したのです。
光が秒速約30万kmという、決まった速度を持っていることも、宇宙を知るうえで大きな助けとなっています。光速を用いて、個々の天体から発せられた光が地球に到達する時間が計算できるのです。
たとえば太陽からは8.32分、天の川銀河の果てからは10万年、アンドロイド銀河からは250万年かかります。つまり今、私たちが見ているのは、現在の宇宙ではなく、過去の宇宙の姿なのです。光は私たちに向けて、宇宙の静止画像を連綿と送ってきます。地球から離れているほど、古い画像となるわけです。

アインシュタインが予言した重力波を捕えた!

その中(ダークマターダークエネルギーなどの観測)でもとびっきりの出来事がついに起こりました。重力波の存在については、1916年にアインシュタインが、彼の一般相対性理論で予言していました。重力波とは、電荷を帯びた物体が移動すると電磁波を生じるように、たとえば爆発などによる質量の移動が時空のゆがみを引き起こし、そのゆがみが、池に落ちた石が水面に立てるさざなみのように広がっていくというものです。重力波が観測地点を通り過ぎると、時空のゆがみが物体の間の距離を変化させるように見えます。
重力は微弱で、影響は非常にささやかなものですが、科学技術の進歩で、現在はごく小さな動きも計測可能となっています。重力波アンテナ網は世界中(アメリカ、ヨーロッパ、そしてまもなく日本とインドにも)に張り巡らされ、重力波を観測できるようになっています。そして2016年2月11日、アメリカの重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)がついに重力波を捕えたと発表しました。それは13億年前に2つのブラックホールから放射された重力波です。このことで、探究の100年は終わりを告げました。そして、私たちが開いた幕の向こうには、目もくらやむような重力の宇宙が広がっていたのです。
ESAは、2013年末に、20年後をめどに宇宙からの重力波観測を実現すると発表しました。2015年には、重力波宇宙望遠鏡LISAのテスト衛星LISAパスファンインダーを打ち上げています。これによって、LISAの実現のために必要な技術が実証されています。
私たちは何世紀にもわたって、光を利用した宇宙観測を続け、宇宙への理解を深めてきました。近い将来、重力波による宇宙観測も可能になり、同時に重力が宇宙を動かしていることも証明できるでしょう。
本書が、みなさんの宇宙理解を助ける絶好のチャンスになることを願っております。
2016年は、世界初の重力の理論、一般相対性理論が発表されて100周年です。しかも、この15年でなされた天文学・物理学に関する大発見はすべて、重力の役割に関するものでした。世界的な重力観測計画も始まっています。私たちの宇宙観も根本から変わるかもしれません。今こそ、理論と観測によって宇宙の根本的な謎が解かれようとしています。
私たち人類の未来のためにも、みんなで、真剣に見守ろうではありませんか。
本書は、宇宙や天文学、とりわけ重力波に興味がある、すべての皆さんのために書かれました。専門知識は要りません。一般にはご存じないこともたくさん出てくるでしょうが、安心してお読みください。未知なるものは複雑に見えるものですが、難しいことをわかりやすく説明するのが、学者の役目だと、私は考えています。