じじぃの「科学・地球_132_重力波とは何か・重力のさざ波」

LIGO-Virgo-KAGRA webinar: Gravitational waves from neutron star-black hole coalescences

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=TuROgOGmcNQ

LIGO Scientific Collaboration

The science of LSC research
Could gravitational waves tell us anything about the early universe?
Gravitational waves offer a unique view into the very early universe because they can allow us to see "behind" the Cosmic Microwave Background Radiation (CMBR).You may have seen images of the CMBR which give us an image of the universe about 380,000 years after the beginning of the universe, the 'Big Bang'.
This is because before that time, the universe was filled with hot ionized gas (meaning the electrons and nuclei were separate, just free electrons flying around), so photons of light would be scattered wildly by these free electrons, rather like what happens on a foggy day, so they don't carry much information about their original source. Because the universe had been expanding since the beginning, it was cooling, and at around the 380,000 year mark, the universe became cool enough that the gas stopped being ionized: the free electrons combined with protons to form neutral hydrogen (we call this recombination), which is much less effective at scattering photons -- in other words the fog clears! For us, this marks the beginning of the period when photons actually can free-stream directly towards us from the early universe, with minimal scattering, so they can carry information about their origins.
https://www.ligo.org/science/faq.php

重力波観測とデータ解析

2018-10-31 京都産業大学
・重力=時空のゆがみ
・質点が加速度運動=重力波発生
・大質量の天体が激しく加速度運動=観測できる重力波が発生
http://www.oit.ac.jp/is/shinkai/Viewgraphs/201810_KyotoSangyo.pdf

重力波で見える宇宙のはじまり―「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る

ピエール・ビネトリュイ【著】
重力――もっとも弱く、謎に包まれていた力が、この宇宙に大きな影響を与えている。
アインシュタイン重力波を予言してから100年。
アインシュタイン最後の宿題”と言われた重力波の観測が成功したことで、「重力波天文学」がついに幕を開けた。
それによって、我々の宇宙観はどのように変わるのだろうか?
インフレーション、ブラックホール、量子真空、ダークエネルギー、量子重力理論……。
宇宙を理解する上で欠かせない問題をやさしく解説しながら、宇宙誕生と進化の謎に迫る。
序章 変貌する宇宙
第1章 重力、この未知なるもの――ガリレイニュートンアインシュタインの見解
第2章 一般相対性理論――重力の理論から宇宙の理論まで
第3章 宇宙を観察する
第4章 2つの無限――両者は共存できるか?
第5章 宇宙誕生の瞬間――インフレーションから最初の光が現れるまで
第6章 ダークエネルギーと量子真空
第7章 闇を学ぶ――ブラックホール
第8章 重力のさざ波――重力波とは何か
第9章 重力波の直接探知に成功――We did it!
第10章 宇宙の未来

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重力波で見える宇宙のはじまり 「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る』

ピエール・ビネトリュイ/著、安東正樹、岡田好惠、安東正樹/訳 ブルーバックス 2017年発行

第8章 重力のさざ波――重力波とは何か より

重力に支配された宇宙を観測する

電磁波を利用して、電気と磁気に関するさまざまな現象が発見されるようになりました。電磁波は電荷(たとえばアンテナの中の電子)の運動によって生じます。今日まで私たちが宇宙を観測してこられたのは、まず最初は可視光のおかげであり、次にはあらゆる波長帯の電磁波のおかげでした。これは、液体に者を落としたときにできる波から、その液体の性質や、場合によっては深さの情報を得ることができるのと同じようなものです。
それに対して、重力に関係する波もあります。それは「重力波」です。重力波は、質量の大きな物体が、すばやく動くときに発生します。これまでお話ししてきたように、物質は時空をゆがめます。物質が動いていると、変動するゆがみ(つまり波)が進んでいきます。ちょうど池に小石を投げると、さざ波が立つのと同じようなものです。重力波はまさに”時空のゆがみの波”なのです。
重力波は、観測可能な宇宙の大きさほどの驚異的な長距離を伝わります。重力波は非常に弱い力であるため、重力波は途中にある物質に乱されることはほとんどなく、宇宙全体に届くのです。そのため重力波は、重力に起因する現象、たとえばブラックホール、巨大な質量を持った天体、さらには重力によって支配されているこの宇宙全体を観測する、非常に有効な手段になるのです。
ただし、重力波の観測で期待できる科学的な知見と、その観測の難しさは切り離せない関係にあります。重力は非常に弱い力であるため、その波が乱れることもなく遠くまで伝わることをお話ししました。ところがそれと同じ理由で、重力波を検出することも非常に難しいのです。これが、重力波を直接検出するまでに100年もの年月がかかり、信じられないほど精度の高い検出器が必要になった理由です。
重力波の初観測は、2016年2月11日に発表されました。これは宇宙観測史上、ガリレイガリレイの望遠鏡発明に匹敵する科学的快挙でした。歴史上初めて、私たちは重力によって支配された宇宙と、重力に関係したダイナミックな現象を直接観測したのです。「重力波は存在する」というアインシュタインの予言以来、重力波を発見しようとする人々の100年にわたる苦労が、ついに実を結んだのです。
本章では重力波とは何かについて、また、重力波の発見に至るまでの道のりを、理論とエピソードを交えて、詳しく紹介しましょう。

アインシュタイン重力波

宇宙で電磁波と重力波が同時に発生した場合、2つはこの地球に、同時に到達するでしょうか? 必ずしもそうとは限りません。なぜなら、その発生源の周囲にある物質のせいで、光(より一般的には電磁波)の到着が遅れる可能性があるからです。
たとえば発生源が宇宙塵に囲まれていたとすれば、光は宇宙塵から宇宙塵へ、ジグザクに反射しながら動き、直線より長い距離を進んで地球に届くことのなるのです。一方、重力波はほとんど宇宙塵に影響されることなく、直線的に伝わります。したがって、重力波が先に到着するのです。
次に、重力波の波長あるいは周波数についてお話しします。宇宙からやってくる電磁波は電波からガンマ線まで、20桁におよぶ周波数にわたって存在していますが、重力波も約20桁にわたって存在しています(画像参照)。
各波長域の重力波は、それぞれ宇宙のある特定の天体や現象に対応しています。詳しい説明は、本章の最後までお待ちください。
重力波の重要な発声源としては、コンパクト連星――2つの高密度の天体、たとえば中性子星ブラックホールなどの連星系が挙げられます。このようなコンパクト連星はまれなものだと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
私たちが夜空に見ることのできる恒星のうち2つに1つは、少なくとも1つの伴星を持っていると考えられています。たとえば、太陽に一番近い恒星であるケンタウルス座アルファ星は、3つの恒星の連星です。連星系がたくさんあるというのは、宇宙における重力の重要性を示す1つの印でもあります。
2つの星がお互いの周りを回転しているということは、質量が動いているということです。したがって、連星は重力波を放射します。
そして、もし2つの天体の質量が同じなら、放射される重力波の周波数はその系の回転周波数の2倍になります。連星を遠くから見ている観測者にとっては、半回転ごとに同じ質量配置が繰り返されるため、と考えれば理解しやすいでしょう。

干渉計の開発

重力波の検出に干渉計を用いるというアイデアは、1950年代の末に登場しました。1970年代の初めにはマサチューセッツ工科大学(MIT)のライナー・ワイスの主導で、レーザー干渉計による重力波検出法の基礎が確立されました。
それと並行してグラスゴー大学のロナルド・ドレーヴァーが、従来の干渉計に「共振器(キャビティ)」というものを加えることで性能を向上させるというアイデアを提案します。ドレーヴァーは1979年、カリフォルニア工科大学に移り、すでに同大学の教授だったキャプ・ソーンとともに、後のLIGO(ライゴ<Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory>:レーザー干渉計重力波観測所)の基礎となるプロトタイプを建設します。
1983年には、アラン・ブリエもフランス・オルセーで干渉計を開発しました。これが後に、フランスとイタリアの共同開発による重力波検出器VIRGO(ヴィルゴ)となりました。その後、地上に設置する重力波望遠鏡の開発が世界中で熱心に行われ、アメリカの2台のLIGO干渉計、イタリアのピザ付近のVIRGO、ドイツのハノーバー付近のGEO660(ジオ600)、日本の岐阜県・神岡にはKAGRAが建設されました。近い将来、インドにもLIGOの干渉計が設置される予定です。
重力波は常に直接検出を期待されてきましたが、今なぜこれほどまでに、世界的な関心をかきたてているのでしょうか?
それに答える前に、重力波を検出するための干渉計についてもう少し詳しく見てみましよう。その原理は、マイケルソンの干渉計ととてもよく似ています。主な違いは、一部の光を透過する鏡が追加され、共振器が構成されていることです。
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1つの重力波検出器で検出可能な重力波イベントの数を知るためには、イベント頻度を見積もることが必要です。つまりt¥宇宙のある体積内で1年間に起こるイベントの数を見積もるのですが、これにはおよそ10倍から100倍もの不定性があります。第1世代の検出器の感度は、科学技術の枠を結集して達成されたものでしたが、それでも楽観的な発生率を仮定して、ようやく検知の望みがあるという程度でした。
次世代型の検出器では、重力波の検出が期待できるようになりました。感度の向上によって、これまでの1000倍の体積の領域が観測可能となり、悲観的に事象の発生率を見積もっても重力波の検出が可能になったのです。自然が物理学者たちに寛大になりはじめたと考えてもいいのかもしれません。