じじぃの「科学・地球_126_重力波とは何か・一般相対性理論」

A new way to visualize General Relativity

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wrwgIjBUYVc

General Relativity Equations

General Relativity Equations

This website was launched in late November 2015, which marked the 100th Anniversary of Einstein arriving at his field equations.
https://doctorphys.com/courses/GR/

重力波で見える宇宙のはじまり―「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る

ピエール・ビネトリュイ【著】
重力――もっとも弱く、謎に包まれていた力が、この宇宙に大きな影響を与えている。
アインシュタイン重力波を予言してから100年。
アインシュタイン最後の宿題”と言われた重力波の観測が成功したことで、「重力波天文学」がついに幕を開けた。
それによって、我々の宇宙観はどのように変わるのだろうか?
インフレーション、ブラックホール、量子真空、ダークエネルギー、量子重力理論……。
宇宙を理解する上で欠かせない問題をやさしく解説しながら、宇宙誕生と進化の謎に迫る。
序章 変貌する宇宙
第1章 重力、この未知なるもの――ガリレイニュートンアインシュタインの見解
第2章 一般相対性理論――重力の理論から宇宙の理論まで
第3章 宇宙を観察する
第4章 2つの無限――両者は共存できるか?
第5章 宇宙誕生の瞬間――インフレーションから最初の光が現れるまで
第6章 ダークエネルギーと量子真空
第7章 闇を学ぶ――ブラックホール
第8章 重力のさざ波――重力波とは何か
第9章 重力波の直接探知に成功――We did it!
第10章 宇宙の未来

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重力波で見える宇宙のはじまり 「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る』

ピエール・ビネトリュイ/著、安東正樹、岡田好惠、安東正樹/訳 ブルーバックス 2017年発行

第2章 一般相対性理論――重力の理論から宇宙の理論まで より

アインシュタイン方程式

1915年11月、アインシュタインは「一般相対性理論」の論文を出版し、自説を一連の方程式(アインシュタイン方程式)にまとめました。
一般相対性理論は、質量(より一般的にはエネルギー)が存在すると、まわりの時空がどのくらい曲がるかを定量的に表現したものです。それを用いることで、太陽のような大きな質量の物体近くの時空の構造を定めることができ、光の軌跡を知ることができます。光が最短距離を進もうとするとき、曲がった時空ではその軌跡は曲線になるのです。
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アインシュタイン一般相対性理論の方程式の意味は非常にかんたんです。
要するに、時空のゆがみと、その位置でのエネルギーの関係を示したもの、と理解できます。エネルギーはどのような形をとっていても構いません。たとえば、かの有名な式<E=mc2>によって、質量はエネルギーであると解釈できます。

E=mc2を超えて

ホーキングが著書の中でいろいろな式を書こうとした際、「半数ほどの読者には理解できませんよ」と編集者から忠告されたという伝説があります。そこで彼は、相対性理論を説明する際には象徴的な式である<E=mc2>を書くだけにしておいたといいます。
その真偽はともかく、ここではあえて、アインシュタイン一般相対性理論の方程式を紹介しておきましょう。
下(画像参照)の式の美しさを感じ取ってくださる読者のみなさんは、本章の続きをより楽しんでいただけると思います。

式はちょっと……という方は、この方程式の左側は時空のゆがみ量、右側はエネルギーの量を表している、とだけ理解しておいていただければ大丈夫です。つまり、「ゆがみ=エネルギー」であることを示しています。

この式には2つの基礎的な定数が含まれています。特殊相対性理論で<E=mc2>としても現れる光速cと、ニュートン重力定数Gです。これは、この方程式がたしかに重力を扱っていることを表しています。
さらに巨大な質量によって光線がゆがむ、あるいは曲がる、という例をお話ししていきましょう。

光が曲がるとき

質量を持つ物体がないとき、要するに重力の影響を受けなければ、光線は直進します。つまり時短ルートを通ります。平行な2つの光線は、古代ギリシャの数学者ユークリッド以来、決して交わることはないとされてきました。
しかし一般相対性理論によると、質量がとても大きな星の近くを光が通る際には、光の軌跡は曲がります。場合によっては、平行に進んでいた光が交わることもありえます。私たちは、それを見ることで、少なくともその場所では星によって時空が曲がっている、ということがわかるのです。
身近な例で考えてみましょう。球の表面は曲がっており、その曲率は半径を用いて表すことができます。地球を例にして、赤道上の2点から出発して経線に沿って北極まで進むことを考えます。赤道付近では、その経路は互いに平行です。けれども、北極や南極ではそれらは交わるです。
今度は、前章の自由落下するエレベーターの例を思い出してください。あなたは地球上の1点、たとえばパリのエッフェル塔のエレベーターに、ボールを手に持って乗ったとしましょう。ロープが切れ、エレベーターが自由落下の状態となりました。あなたはとたんに重力が消え、体が空中に浮いたような感じに襲われるでしょう。このときボールを手放すと、ボールも一緒に浮いているように見えるはずです。
ところが外から見ると、エレベーターもあなたも同じ加速度で落下しています。これはすぐ前にお話しした「等価原理(慣性質量=重力質量)」から、すべての物体は同じ加速度で落下するためですね。
自由落下するエレベーターの座標系を、「加速度系」あるいは「自由落下系」と呼びますが、そこではすべての古典物理学の法則が適用されます。もちろん直進する光にも適用されます。
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実際のところ、空間の曲がり方(曲率)は、時空のある点から別の点に移ったとき、紙(座標系)がどのようにずれるかを表現する方法なのです。アインシュタイン方程式は、曲率と質量エネルギーの分布を結びつけるものです。つまり、エネルギーが存在することによって、ある点から別の点に移動したときに、どのように座標系が変わるのかを規定している、とも言えます。
図2-1b(地球の表面は湾曲しているので、微小距離だけ進むと、別の紙が置かれた点に移る)で、時空を座標で表現しましたが、それはつまり、一般相対性理論に基づいて時空を観測するということなのです。本書の第1章で、時間と空間には密接な関係があるとお話ししました。加速座標系では時間が伸び、長さが縮むということも、時間と空間を一組にして考えなければ成り立ちません。

ビッグバン宇宙モデルが示すこと

私たちが今話題にしているのは、「ビッグバン宇宙モデル」と呼ばれる膨張する宇宙のモデルです。このモデルが示す宇宙は、進化をするあいだに、どんどん密度が薄く、温度が低くなっていきます。逆にできたての頃にさかのぼるほど、どんどん密度が濃く、温度は高くなり、無限の密度や温度を持つことになります。この状態のことは特異的なふるまい、もしくは「特異点」と呼ばれます。
それはアインシュタイン相対性理論量子力学だけでは説明がつきません。では、この2つを統合する新たな理論が必要になった、あるいは物理学には根本的な限界がある、ということになるのでしょうか?