じじぃの「第二次世界大戦・元銀行強盗がユダヤ人を匿い続けた理由!ソハの地下水道」

IN DARKNESS | Trailer deutsch german [HD]

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In Darkness

『映画になった奇跡の実話 これが美談の真相だ』

鉄人ノンフィクション編集部 鉄人文庫 2021年発行

元銀行強盗の下水道労働者レオポルド・ソハが戦時下でユダヤ人を匿い続けた理由

第二次世界大戦下、我が身の危険を顧みずユダヤ人をホロコーストから救った人物といえば、映画「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラーや、日本人杉原千畝がよく知られているが、2011年の映画「ソハの地下水道」で取り上げられたレオポルド・ソハもその1人。
本作は、ナチスの迫害から逃れ生き延びようと地下水道へ身を潜めたユダヤ人グループのため、わずかな見返りで食糧を運び、命がけで彼らを守り続けた実在の下水道労働者ソハの姿を描いた傑作である。
1909年、ソハは映画の舞台となったポーランドのルヴフ(現在のウクライナ・ルヴィフ)という町で生まれた。家庭は貧しく、幼年期から路上暮らしを余儀なくされ、10歳を迎える頃にはすでに盗みで食いつなぐ日々。成長するにつれ悪事はエスカレートし、銀行強盗で新聞に顔と名前が載ったこともあったという。
やがてマグダレナという女性と結婚し女の子の父親になると、下水道労働者としてルヴフの町の下に広がる下水道の定期的な整備点検の仕事に就く。
ナチス・ドイツポーランドに侵攻した1939年以降、町の外へ通じるこの下水道はユダヤ人にとって貴重な脱出路の役割を担っていた。が、出口にたどり着いたところで待ち構えていたドイツ兵にことごとく撃ち殺されてしまう。そこで、一部のユダヤ人たちは下水道を「逃げ場」ではなく「隠れ場所」と考えた。地上にもはやナチスの監視から逃れられる場所は残っていなかった。
1943年、ソハはパトロール中、下水道でユダヤ人たちに出くわす。アパートの一室から縦穴を掘り地下へと降りてきた人々だった。彼らをドイツ軍に売れば金になるが、狡猾なソハは地下に匿ってやる代わりに、より多くの金を得ようと考える。
ソハと主だって交渉したのは、イグナツィ・チジェ(劇中ではヒゲル)という元資産家だった。前金を差し出し、家族とここにいるごく少数の仲間が生き延びるために力を貸してほしいと懇願。ソハは妻マグダレナにも協力を仰ぎ、毎日受け取る金の中から食糧を調達し、地下に届ける。
しかし、噂を聞きつけた他のユダヤ人が押しかけ、最初に避難場所として見繕(みつくろ)った所はたちまち100人以上に。そこで、もともと約束していたメンバーと、彼らに選ばれたメンバーとを合わせた21人が、ソハの支援を受ける代わりに別の場所に移動することとなる。
人数を絞っても、極限状態での生活は変わらない。しだいに彼らの間で不協和音が響き、地上へ逃げ出そうとする者が出始めた。が、その大半は川の流れに巻き込まれるか、ドイツ兵に捕えられて銃殺。地下に安全な場所を確保した時点でユダヤ人は10人余りになっていた。
ドイツ軍の目を欺(あざむ)き、ユダヤ人を匿うのは並大抵のことではなかった。見つかれば処刑は間違いなし。ソハは極度の精神的な重圧に押しつぶされそうになりながら、それでも彼らを支え続ける。
真冬にストーブを使った熱でそこだけ地表の温度が上がった際には、訝(いぶか)しむ町の人々に対し地下のガス管のせいだと嘘をつき、ユダヤ人たちの資金が底をつけば、自らのわずかな蓄えから食糧を用意した。
ソハは自分でも気づかぬうち、ユダヤ人たちを守り抜くことに己の使命を見出していたようだ。犯罪に染まった過去を恥じ、彼らを救うことができれば自分の過ちも許されるのではないか。それは己の命を賭しても変わらない強固な信念になっていた。
下水道での生活は14ヵ月続き、1944年7月、ソビエト軍がドイツ軍を退けると、ようやくユダヤ人たちが地上に上がるときが訪れる。生き延びたのはわずか10人だった。
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ソビエトの影響下にあるウクライナ領となったルヴフでは、ポーランド人にとっても生きづらく、ソハは西の国境付近まで逃げるように引っ越した。生き残ったユダヤ人たちも、それぞれの家族がバラバラに安全な地域を目指して西に向かった。
劇中、地下生活が数ヵ月に及び、鬱状態になった女の子に、ソハがマンホールを開け地上の景色を見せてやるシーン(画像参照)があるが、彼女はソハの庇護によって生き延びたチジェ一家の長女クリスティーナで、戦後、家族とともにルヴフを離れ名前を変えて生活し、1956年にイスラエルへ亡命。その後、歯科医となり別のユダヤ人男性生存者と結婚し、両親、弟とともにアメリカに移住。2008年、回想録『緑のセーターの少女:ホロコーストの影の生活』を出版した。
そして、物語の主人公ソハは1946年5月、暴走するソビエト軍のトラックから愛娘を守り36歳の若さで死亡。その葬儀には多くのユダヤ人が駆けつけたという。
1978年、ヤド・ヴァシェム(ホロコーストの犠牲者たちを追悼するためのイスラエルの国立記念館)は、ナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅政策から自らの生命の危険まで冒してまでユダヤ人を守った非ユダヤ人の人々を表彰する「諸国民の中の正義の人」の称号を、ソハと妻のマグダレナに贈っている。

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